6.腐ったあいつと、羽のある小さいあいつ。
半分寝ながら書いたから、だいぶ意味わかんない。
ハルトがこの森を抜けてから、一週間ほどたったある夜のこと、そいつはパトロールしている俺の前に悠然と歩いてきた。
右足を引きずり、左手はあらぬ方向に曲がり、歯は抜け落ち、右目はなく、肌は土気色をしている。
そう、そいつはまごうことなきゾンビ。奴はゆっくりと、ただひたすらに、まっすぐ突き進む。森の中なので、当然木にぶつかる。それでも怯まずまっすぐ突き進む。その様子はまさに、狂気。意思がないので狂気も糞もないな。
マジでなんだこいつは。いや、ゾンビなのはわかっている。どこから来たんだ。
こいつの進行方向から後ろには崖、その下は海。どうやったってそっちからは来れないはず。何かがいる時が付いてから駆け付けたので、あらわれた瞬間は一切見ていない。
とりあえず報告でぃ。
『エストイア(様)。なんかゾンビがいます』
『わかった。討伐して構わん』
アイアイサー。ゾンビで通じるんだな……。まあ、そんなことはどうでもいい。
こないだ実践したらできた新技を見せてやる。
辺りの木の葉っぱを10枚ほど拝借。それを高速で回転させる。
いくぜ、フシ○ダネ!
「葉っぱカッター!」
無駄に掛け声を上げて葉っぱを飛ばす。体のあちこちに傷を付けたが、そこまで効いていないようだ。
よし、今度はゼニ○メ! 君に決めた。
「みずでっぽう!」
叫ぶワードが絶妙にダサい。技名なのに叫ぶとダサいとはこれいかに。威力は言わずもがな、まったく効いていない。
ここで炎なタイプの技を使うわけにはいかない。ゾンビは多分、普通のタイプだ。なれば、
ルカ○オ!
「きあいだま!」
魔力を圧縮し、打ち出す。どっちかと言うとエスパー技っぽいけど、気にしたらいけない。
奴の土手っ腹に、風穴を開けてやったぜ。
しかし、その程度では全く怯まぬゾンビ。奴は、頭と胴体を分けてやらなきゃ死なないタイプのようだ。
仕方がない、あれを使うしかない。菜っ葉でも避けられなければヤバかったあれだ。頭上に魔力を圧縮し円盤状にする。後は高速回転させて、
「気円斬!」
一気に前方に飛ばす、木を切ったらエストイア(様)に怒られるので、避けながらゾンビの首へまっしぐら。スパンッと音はならなかったが、ゴトッと首は落ちた。これで流石に死んだだろう。近付いてみても、動く気配はない。
最後だけなんか違うけど、気にしたら負ける。
『ゾンビ討伐、完了いたしました』
『何を遊びながら倒しておるのだ。もっとさっさとやれ』
怒られちった。でも、技再現シリーズはなかなかの出来だ。ポケ○ンで統一すれば怒られなかった気もするが、そんなことない気もする。
ゾンビには効かなかったけど、一つ以外は戦闘で難なく使えるだろう。みずでっぽうはリアル重視を止めるしかないな。前向きに検討しておこう。
にしても、あのゾンビはいったい何だったんだろうな。試し切りに丁度良かったからいいけど。
あ、なんか飛んでくる。視界の中に、蝶の羽を持つ人型の何かが写っている。
「ちょっとあんた! 人のゾンビ勝手に倒さないでくれる!」
そうか、お前のゾンビだったか。
見たところ、白いワンピースを着た少女に羽が生えたような外見だが、大きさは15センチほどだ。
「人んちに勝手に入ってきて何を言うか」
どっちも人って言ってるけど、相手も俺も人じゃない。あいつは多分妖精とかそんなんでしょ。
「人んちって何よ。ここは森でしょ、別にあんたの家だなんてどこにも書いてないじゃないの」
これに答えたら、何か小学生の喧嘩みたいになりそうだからやめておこう。俺はオトナだからな。
「ぐうの音も出ないようね。精霊風情が、いきがるんじゃないわよ」
顔がないから、沈黙をいいように解釈された。面倒臭いやつだな。とりあえず報告しておこう。
『なんか、ゾンビの所有者を名乗る変な奴が現れました。コロコロしますか?』
『ふむ、応援をよこすから足止めしといてくれ』
足止めかぁ。足止めねぇ。で、何すりゃいいんだ? 物理的に止めておけばいいかな。
妖精はまだ何か言ってるけど、気にせず以前と同じような糸を作り、魔力で動かして、足と木の枝を一瞬で縛り付ける。
「……これに懲りたら、二度と同じようなことをしな――ちょ、何よこれ! ほどきなさい!」
服が捲れて半裸の少女が中釣りになってるー。犯罪臭がするな。羽が生えてるから多分セーフ。我がことながら倫理観がひどいな。
妖精が、叫びながら抜け出そうと羽や手足をじたばたさせる。ここは生ぬるい目で見守ってやろう。
「この下種野郎! ほどけってんだよ」
流石に危ない絵面なので、応援が来る前に別な体勢にしておこう。脚を枝に縛り付けて無理やり座らせた状態にしておいた。
「むがー! うごけないい」
こいつ魔法とか使えないのかな? すぐ逃げられると思ったから、あえて放置してたのに。
「何なのよこの糸、魔力が吸われて魔法が使えないじゃないの」
だそうです。そんな機能まであったとは、魔法ってとっても不思議。
そんなこんなで応援にルーがやってきた。久しぶりにやってきたおいらの兄弟のルーだよ。
「あいつがゾンビを率いていた変な奴か」
「ああ、そうだ」
「誰が変な奴よ。二匹に増えやがって! アタシに何をするつもりよ!」
俺にも分からん。足止めしろとしか命令されてないからな。とか思ってたら、クイもやってきた。
「げ、やっぱりいかれ妖精のラリだ」
「誰がいかれ妖精よ!」
クイはやってきて早々に、そんなことを言う。ルーが俺の疑問を代弁してくれた。
「いかれ妖精? 前にもここに来たのか?」
「うん、前はでっかい毛虫を連れてきたね」
「無視してんじゃないわよ!」
でっかい毛虫って、想像するだけで鳥肌立ちそう。
クイが言う、
「さて、今回の目的をじっくり聞かせてもらわないとね」
どうやら尋問が始まるようです。