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精霊生活に安息を  作者: 鮭ライス
エルフの里
55/80

50.役得とはよく言ったものだ。全く嬉しくない。

前回のあらすじ

 疲れたので雑談してました。

おわり!


 気が付くと、ミリアがブーツを脱いでベッドに横にり、目を閉じていた。毎日トレーニングをしているとは言え、知らない場所ばかり歩いていたから、疲れが溜まっていたのだろうか。


 うーん、ブーツを脱ぐ瞬間を見逃した。いっつも一緒にいるのに一度も見れてないぞ。おかしいな。


 見たいと思ったのも初めてだけどな。


「ミリア生きてるかー?」


 無言で手のひらを振って無事を伝えてきた。

 ダメっぽいな。


 そういえば、メオは大丈夫だろうか。ミリアでさえ疲れているんだ、メオは本当に死んでいるかもしれない。


 ボフッと幼女に変身して、行ってきま――、


「ちょっと待つ!」


 ミリアがガバッと起き上がった。


「メオのところへ行くなら私も行きます。ロー一人で行かれたら、私がへばってると思われるじゃないですか」


 事実だけどな。


「それでもです」


 ミリアにもプライドってやつがあったんだな。急いで靴を履いて追いかけてくる。ブーツではなく、普段履いている普通の革靴だ。


 俺はコンコンとノックをして――、


「メオ、大丈夫ですか? 遊びに来ましたよ」


 と言う。……ミリアが。

 ……ミリアは遊びに来たんだね。


「はーい」


 大分間の抜けた声が聞こえてきた。やはり疲れているのだな。

 しまった。手土産がない。遊びに行く友達もないのに、母から「友達の家に行くときはお菓子くらい持って行きな」って言われたのを思い出した。悲しい。


 とはいえ、ちょっと様子が見たかっただけなので問題ない。すでにミリアが入り込んでいる。俺もそれに倣って部屋に入り、ドアを閉める。

 メオはベッドに腰かけてミリアに手を振っていた。靴は脱いでいる。

 俺が入って来たのに気が付くと、


「あ、ロー様だ。こっちおいで」


 そう言って、手でこちらに来いとジェスチャーする。

 特に何も考えずに近寄ると、メオは突然立ち上がりながら飛びついてきた。


「あぁあ、癒されるぅー」


 駄目な人の声だ。頬っぺたすりすりしながら、逃げないようにがっちりホールドしてくる。地味に痛い。


 ずっとお嬢様みたいなキャラだったから、最初に出会ったときのことを忘れていた。メオはこういうやつだった。


「痛い痛い。放して」


「だめです。折角会ったんですから、私を癒しきるまではこのままです」


 ミリアに助けを求める視線を送る。


「……」


 微笑とサムズアップが返ってきた。

 そんなもんはいらん。なんでサムズアップが有んねんて聞きたいけど今は関係ない。


 最終手段。強制離脱。


 体を消して瞬時再生の流れ。魔法練習の合間にやってたので、今ではほとんど瞬間移動である。二メートルくらいしか動けないという欠点から目をそらせば、かなり有能だ。


 逃げた俺を恨めしそうに見てくるメオ。


「癒しが足りません。癒しがぁ」


 もうなんか亡者みたいになってんぞ。怖いんだけど。

 俺が後ずさりをしていると、突然俺の頭に何かがおかれる。


「え?」


 メオは目の前にいるから、犯人はミリアだ。


「ちょ、ミリア今は止め「”睡眠”」」


 急に視界が真っ白になる。そして、それと同時に急激に意識が落ちて行った。




 ……苦しい。何かに締め付けられている感じがする。


 目を開けると、見えたのは木の壁だった。木目が美しい。

 って、そうじゃない。

 辺りを見渡そうとしたが、首が動かない。目の動く範囲で見てみると、何かに掴まれていることだけは分かった。

 そこでようやく思い出す。


 そうか、ミリアに”睡眠”って魔法をかけられたんだ。つまり今、メオに抱き枕にされて寝ているということか。


 この状況を楽しむにも、動くのは足ぐらいだ。これ以上このままでいても痛いだけで得は無いので、さっさと強制離脱を行う。

 どさっとメオの腕が落ちる音がした。寝てるから痛くないよね?


 少なくとも起きることは無いので、問題はないようだ。耳はぴくっと動いたけどな。

 昨日と服装は変わっていないので、浄化しただけでそのまま寝たのだろう。この世界だと普通だからみんな気にしないけど、服を数日着まわしてるって美少女だからいいけど、おっさんは臭そう。匂いもとれるから臭いわけないんだけどね。


 ミリアの部屋へ行くと、ミリアは既に起きていた。


「起きましたかロー。今起こしに行こうと思ってたところです。今日は早起きなんですね」


 ミリアはそう言って、途中まで片付けていた荷物をしまっている。服を着替えてあるから、出したものを整理してたのだろう。

 ちゃっかり皮肉を混ぜるんじゃない。


「ミリアのせいで変に寝させられたから起きたんだよ」


 実際はまあ、抱きつきが痛かったからだけど。


「そうですか。それは災難でしたね」


 しらを切ってやがる。しかし、別に怒るようなことでもないので、スルーする。


「ローは”睡眠”に抵抗無いんですね」


 自分から言い出しやがった。隠すなら隠せよ。

 睡眠に関しては抗う必要がないからなぁ。だけど、ミリアがそれを弱点と見て頻発されたら勝ち目がなくなるので、今後の課題なのかもしれない。


「今度模擬戦をしたら私の圧勝ですね」


 うっ、もう好きに言ってろ。



 ミリアは荷物を片付け終えると、


「じゃあ、メオを起こしに行きますよ」


 そう言って俺の手を掴んで、連れて行く。まだ行くとは言っていない。

 ……行くけど。


 今回はノックなしで入る。

 ガチャっとドアノブをひねって入る。

 布団の前まで引っ張られて、ミリアは俺を離してメオを起こしにかかる。俺は、奇襲を警戒して、いつでも強制離脱できるようにしておく。


「メオ、朝ですよ。起きてください」


 毎日のように俺を起こしに来てるだけあって、起こし方が手馴れている。ぱっと見では、体を揺すっているだけだが。


「んん。なにぃミリア」


「朝ですよ。起きてください」


「あ、朝。おはよう、ミリア」


「おはよう」


 そう言って微笑みあう二人。メオの顔はとろんとしていて可愛い。


「あ、ロー様もいる―。おはよー」


「おはよう、メオ」


 凄くふにゃふにゃしてる。昨日といい、この様子だとメオは朝に弱いようだ。おかげで、警戒していて損したよ。




 次はランベルトだ。寝起きバズーカしたい。


「お父さんはもう起きてると思いますよ。冒険者は早朝すぐに起きて動けるようにするのが普通ですから」


 寝起きバズーカは見送りになった。残念だ。


筆が乗る……手がよく動く?のに中身がない。

悲しい現象だ。

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