49.部屋、恋愛、お茶
前回のあらすじ
エイリアンは微生物だった。そして、変えてってきた一行は宿となるログハウスに案内された。
おわり!
部屋はトイレやキッチン、リビングなどの他に八つあった。一階に二つと二階に六つだ。
とても文明的で、便利な家だ。
いろいろと不思議な点はあるが、とりあえず気にしないでおこう。
「広いな」
「そうですね」
俺のつぶやきに、ミリアは同意した。
ミリアの家は、平屋な分だけ敷地は広いが、この家は一部屋一部屋も大きく二階まである。どことなく、殺人事件でも起こりそうな感じだ。
いや、あんまり平和だったから忘れてたけど、この世界で殺人てよくあることなんじゃないか。エルフやハーフエルフの集落は安全過ぎるだろ。
まあ、人間の集落にいたのは実質一日程度なので、何とも言えないんだよな。
案内してくれたABCさんではないエルフが、一通り説明した後に、
「部屋は自由にお使いください。それでは、ごゆっくりお過ごしください」
そう言って、丁寧にお辞儀をして去って行った。
……まだエルフ女性を一人も見ていない。ハーフエルフは野蛮人みたいに思われてるんじゃないの?
まあ、似たようなものか、わざわざ住む場所を違えているのだから、何かしらの確執があるのだろう。そもそも、ハーフエルフは人間などの他種族がエルフと子供を作ってしまったから生まれたのだし、そういう人が祖先にいる集団とも言える。流石に野蛮人は言い過ぎだが。
さっきのエルフをとりあえずDさんとすると、エルフA~Dさん全員陶器みたいに真っ白な肌だった。人形っぽくて、少なくとも、俺のストライクゾーンからは外れている。つまり、幽霊みたいで恋愛対象になるとは思えないんだよな。
美人なら何でもいい人ならエルフでも構わないのだろう。そういう人がエルフとの間に作った子供は、エルフが恋愛対象にならないわけもないよな。
その点、ハーフエルフは可愛いし、エロいし、色々と小さいという点を除けば申し分ないな。別に俺がロリコンだからとかそういう事じゃない。違うったら違う。
エルフは恋愛対象になり難いとは言ったが、実際に見てどう思うかは分からないけどな。
「なんか、変なこと考えてませんか?」
「そんなことないよ」
迂闊だった。エスパーに磨きがかかっているミリアの近くでこんなことを考えるなんて。しかし、どうやら精霊形態だと、俺が情報を絞っている間は雰囲気しか分からないようだ。良いことが分かって、不幸中の幸いだろう。
俺が考え事をしている間、五人は部屋割りを決めていた。
その結果、ハーフ男女は一階の二部屋を使って、少女×2+おっさんは二階の三部屋を使うことになったらしい。妥当かな。
修学旅行とかは男女別階層になってたのを思い出した。女子が全員上の階で、上から聞こえる音が夜中までずっとうるさかった。修学旅行とか、今考えると一種の拷問だな。あの頃の心の耐久力凄い。
二階に上がる階段は一つで北部屋と南部屋に分かれていた。普通に全員、南部屋だ。階段の方からランベルト、メオ、ミリアだ。空いてるんだし、俺も一部屋欲しい。
部屋に入って荷物を下ろしているミリアに尋ねる。
「勝手に部屋使ったらまずいかな?」
「大丈夫だとは思いますけど、ローが自分でみんなに相談してきてください」
とんでもない無理難題を押し付けられた。
「諦めます」
「それでよろしい」
ミリアひどい。分かってて俺の苦手なところを突いてきた。
にしても、この体はホントに疲れ知らずだ。自分で飛んでなかったとはいえ、ちょっと寝たらひたすら起きてても全く気怠さを感じない。それでも三週間もの間、好きに寝て起きてしていた最近の恵まれた環境に感謝をしておいた。
ふとミリアの方を注視すると、ベッドに腰かけてふ―っと息をついている。ずっと歩き詰めだったし、さしものミリアもさぞ疲れたことだろう。
ここはひとつ労いの言葉でもかけてやろう。
「お疲れさま」
それしか思い浮かばなかった。……まあいいか。
ミリアはきょとんとした顔をしている。
間。
え、何?
「もしかして、そのままの意味ですか?」
「……そのつもりだけど」
なんだろう、裏を勘繰られていたのだろうか?
前にお礼を言ったときも驚かれたけど、この反応は少し傷つく。一般的な感覚で傷つくと俺はふさぎこむ自信があるので、そんな俺がかすり傷で済む程度だけど。
「あ、ありがとうございます……」
照れくさそうにはにかんで言うミリアが、なんだかとても愛おしく見える。
……今なら全てを赦せる気がする。尊い。
「どうせならお茶くらい持ってきて欲しかったですけど」
いつもの三割くらいの呆れ顔でそう言う。
……前言撤回した。
「何も荷物なんて持ってないだろ」
「知ってますよ」
そう言って、フフッと笑うミリア。
赦した。手のひらくるーで手首が痛い。
お茶か。そういえばこっちの世界では一度も飲んでないな。
「ちなみに何のお茶だ?」
「……お茶はお茶ですよ」
まーたそうやってすぐ呆れた顔をするんだから。お湯で成分を抽出して飲むものはお茶だろ。テレビでいっぱい見た。
そんなことを言ってもミリアに伝わるわけもないので、どう聞いたらいいのか分からん。
日本風の料理が多いから、普通にお茶と言ったら緑茶である可能性が高い。しかし、西洋では紅茶が基本のお茶である。
ミリアの言った感じからするに、この世界、もしくはミリアの知る限りではお茶は一種類だ。すなわち、紅茶だ、緑茶だと言っても伝わらないだろう。
そして何よりも、前述の通りお茶の幅は広い。どんなものでもお茶になるのに、茶葉だけでも相当な種類があるし、飲み方もいくつもある。
実際に入れてもらう他は、確かめる術が無いのではなかろうか。
それでも、何とか聞き出そうと試みる。
「まだお茶って見たことないんだよね」
「そうですか? 確かに、家で飲むときはいつも寝てるからローは居ませんでしたね」
寝てる時に飲んでたのか。お茶は嗜好品なのだろうか?
「作り方は知ってるか?」
「お茶の粉を入れてお湯で溶くだけですよ。ああでも、粉になる前は知らないです」
謎の粉……。
その後も聞いた話をまとめよう。
まず、色は茶色。子供の頃に茶色が緑じゃないって話をしたのを思い出した。
そして、味はちょっと甘苦くて、失敗すると渋くなる。完全に緑茶だ。
最後に、飲んだ後は体がポカポカして少し元気が出るのだそう。生姜湯?
結論。よく分からんけど、普通においしそう。
話は戻るのだが、そういえばお茶に限らず飲み物をほとんど見ていないのだが。ジュースとかお酒とか醸造酒とか蒸留酒とか。
精霊なんだし、誰かお供えしてくればいいのにな。と思ったけど、そもそもお供えの習慣が無いとか、宗派が違うってことか。
思い出したら飲みたくなってきた。以前泊まった宿でも、ビールのようなものを飲んでる人がいたな。無いわけではないようだから、そのうち誰かに頼んで飲んでみるか。
推理物にしようかと一晩悩んだとか言えない。
人物紹介書いたし、それが昨日の分だったってことにするかもしれない。
書き終わってから潔癖ネタを忘れていることに気が付いたので、次話から唐突に入るかも。




