47.妖精さんになる
前回のあらすじ
気を取り直してテントで寝なおした。+説明回。
おわり!
本日二話目です
「ロー、起きてください。調査に行くそうなので、精霊に戻っててください」
起こされて早々に、注文が来た。目を開けて見ると、四つん這いになったミリアが、テントに頭を突っ込んで俺の幼女ボディを揺すっている。
良い眺めだ。
そういえば、別に幼女ボディでなくてもいいのだが、何となくこればっかりである。いろんな意味で便利なので気にする必要はないが、小学生の頃に女性キャラでゲームをしていた時と同じ気分だ。……背徳的である。
そもそも、元の姿は今に比べておっさんでしかない。誰が好き好んでおっさんになるというんだ。
「お昼休憩は?」
「その間もずっと寝てました」
いつの間にか、お昼すら終わっていた。俺が飯をもらえるわけでは無いので問題はないのだが。一時間ちょいくらいは寝れたようなので良しとしよう。
「森のさらに奥に行くのか?」
「聞いてはいませんけど、そうでしょうね。魔物の方は一匹見ましたが、抉られた木や地面は見てないですからね」
そういえばそんな怪奇現象も起こったとか言ってたな。そっちに関しては新種の魔法ってことでいいんじゃないですかね? ランポさんも気軽に新しい魔法とやらを使ってたし。ああいうアーティスティックな魔法は凄くかっこいいよな。
案内役のエルフさんが変わったので、Cさんと呼称しよう。村からやってきた五人を合わせて、計六人パーティである。
スライムもどきに出会ってさえいなければ、俺は観光気分だったであろう。
しかし、今となっては薄暗い森の雰囲気も相まって、ちょっとした肝試しのようでもある。
東の森林とは違って、鳥が森の中にはほとんどいない。そのせいか、虫がたくさんいて、尚のこと散策は楽しいものではない。
ふと、机の中のお道具箱に詰められた、大量のミミズやカミキリムシやショウリョウバッタを思い出した。トラウマががが……。
そっとミリアの肩から離れ、隙間から荷物の中に入って虫を見ないように引きこもることにした。辛い感情は感じないが、トラウマは心の傷なんだぜ。体がないって程度で治るもんじゃない。
「どうしました?」
バッグの外から、ミリアのくぐもった声が聞こえる。
「ちょっと一人にしてください」
「何だかわかりませんが、休憩になったら出てきてください」
りょーかい、とテレパシー的なので伝える。エスパーミリアならわかってくれるさ。
……そうだ、妖精体を作ろう。体を超絶小さく作るだけだから、できるだろう(?)。
羽って必要かなぁ。んー何もこの世界の妖精に引っ張られる必要はないよね。要は、寝られる小さい体を作ればいいんだから。
というわけで完成した体を見てみよう。魔法で鏡を作る。
赤いサンタみたいな帽子、緑色の服、黄色いズボンと、あえて派手めな服装だ。その体は丸っこくて、身長は10センチほど。まあ、つまりは新人類たる妖精さんの方だ。人類は繁栄してるけどな。
お菓子と楽しい事は別段嫌いではないので問題はない。幼女体と消費魔力が変わらないのは問題だが。
「わたくしふっかついたしました、です」
似てないけど気にしない。むしろ、にてるともんだい?
しかしながら、ねたのきょうゆうができないのがざんねんです。一々面倒だし、普通に話していいか。
んじゃ揺れているけど、とりあえず寝よう。再び夢の世界へ行くのだ。
岩に押しつぶされる夢を見たのだが、目を覚ますとミリアに胴体を鷲掴みにされていた。
「ミリアさん、痛いです」
「おおっ!? 急にしゃべらないでください」
俺も後悔した。ミリアが驚いた瞬間にすっごい締め付けられた。
ああ、踏みつぶされる虫ってこんな気持ちなんだな。すっごい痛い。
あ、でも虫は痛覚ないんだっけかな。
「いや、ごめんよ。寝てるって分かってると思ったからさ」
「私はローが作った人形なのかと思ってました」
そう来たか。ミリアには一言言っておけば良かったな。
「で、今はなんの時間だ?」
「今は抉り取られた木や地面がある場所に来てます。周りを見ればわかりますよ」
ミリアはそう言うと、俺を地面に降ろしてくれた。
辺りは明るく、まず目に入ったのは、目の前の抉れた地面だ。今小さくなっているせいか、なだらかな坂の上にいるような気分だ。実際は深さで一メートルくらいある。
それで、顔を上げると根元を丸く抉られたように上の部分しかない木が3本倒れている。明るいのは、どうやら抉られた地面に生えていた木が無くなったからのようだ。
周囲を見てみると、辺りの木も無傷ではなく、ところどころ抉られている。
これらを総合して考えると、半径3メートルの空間に有ったものが丸ごと消えているようだ。
抉られてるって聞いて、削り取るって感じなのかと思ってたら、飲み込まれたって方がしっくりくるな。
辺りに他の五人は見当たらないので、近くにも同じような場所が有るのだろう。この体だと、小さすぎて周りが見えない。やってくる虫が全部でかく見えるのが怖い。
そんなわけで、とりあえず幼女サイズに変更する。
「凄いですよね、ローでも同じことできますか?」
ミリアはこの現象に圧倒されたように言って、尋ねてきた。
ううむ……。
爆破するには、綺麗な断面は作れない。かまいたちのように切り刻んでも、その塵すら無い。飲み込まれた様だと言っても、スタ○ド使いならって話であって、実際にやるってのは無理だ。
そもそも、魔法は超能力ではなく、この世界のもう一つの法則みたいなものである。俺もそこまで理解してないが、少なくとも俺はこんな使い方ができない。
俺が消せるのは、自分の体を含めて魔法で作った物だけだ。
「無理だな」
「……そうですか」
ミリアはゆっくりと、そう返事をした。
……俺が考えたことを咀嚼するように。
流石に全部聞こえてるわけじゃないだろうけど、心読むのホント止めてほしい。でも、体を一部だけ消してみてとか言われなかっただけマシかもしれない。
「それいいですね」
「やらないよ!?」
「ねぇミリア。いったいどこまで考えてることを読んでるんだ?」
「秘密です」
唇に人差し指を当てて微笑みながら言われました。可愛いです。あっ。
みりあ、かわいい。みりあ、かわいい。みりあ、かわいい。みりあ、かわい――
ゴッ!!
顔を真っ赤にしてぶん殴られた。
これは、大分読まれてるな。……痛い。
「読まなきゃいいだけだろ。何故殴る」
「殴りたかったからです」
これはひどい。
軽く読み直したらいちゃいちゃしててムカついた。
だが、百合はキーワードに入れない。(謎の意思)




