46.唐突に今(更)明かされる真実
前回のあらすじ
エルフの里に着いて寝ていると、太ももにに乗っていたぬるぬるした液体生物(仮称)にローは大層ビビった。
おわり!
スライム的な奴は、ランベルトが火で葬った。液体のわりに簡単に燃えていたので、ローション的な何かなのかもしれない。
というか、ランベルトもそれで燃えるとは思っていなかったようで、少し驚いた顔をしている。
俺は昔からカエルとか、ミミズとかのようなぬるぬるした奴が嫌いなんだよな。あの時、ミリアの助言がなかったら、錯乱して何をしてたか分からんな。今こうして冷静でいられるのも精神体になっているおかげだ。いろいろと便利な体で良かったよ。
糸の方も便利なもんで、カーペットに引火することはないようだ。防火性能付きとはすごいな。これを売って商売ができるんじゃなかろうか。めんどいからやらないけど。
せっかく降りてきたエルフはスライム的な奴が死んだのを見届けると、さっさと戻って行ってしまった。薄情な。俺に人のこと言えた義理はないけど。
「ローの悲鳴、初めて聞きました」
そんなんニヤニヤしながら言われても困るんだけど。
「精霊にも怖がるものがあるんですね」
メオもそんな興味深そうにするんじゃない。元が人間だからしゃーないやんけ。
「……」
おっさんも、なんか言いたそうにするの止めて。むしろ、さっさと言って。
「ま、まあ、新種の魔物とは言っても、大したことないんだな」
取り繕う様に俺は発言する。
ミリアは俺に憐みの目を向けてくる。口元は嬉しそうに歪んでいるのがまた腹立つポイントだ。
しまった。大したことない奴にビビったアホになってしまった。くそぅ、次見かけたら確実にころころしてやるから覚悟してろよ、スライムもどきめ。
俺はそれを密かに心に決めた。
それから、再び稽古を始めた三人をよそに再び寝たかったが、こんなところでは眠れない。仕方なく精神体のまま、安全に寝る方法を模索するとしよう。
うーん、ハンモックなら良いかもしれない。でもあのスライムもどきがどうやって侵入してきたか分からないし、安全とは言い切れないか。
ベッドを空中に浮かせながら寝れたらいけそう。いやいや、侵入を阻むという点に特化するなら、四方を壁で囲ってしまえばいいのだ。あーでもなんか寝苦しそう。人間体だと一応呼吸してるんだし、密閉するのはよくないか。かと言って、通気口なんて作ったら絶対に入ってくるだろあいつら。
なら、トラップを仕掛けるか。いや、それだと魔方陣がないと作れなさそう。作り方は結局誰にも教わらなかったしなぁ。敵がやってくることで発動して、かつ、半永久的に発動可能な魔法があれば、魔方陣なんていらないんだけど、俺にはやり方が分からん。なんか適当にエイって言って魔法が作れたら楽だったのに。
別にベッド自体に迎撃機能が付いてる必要はないか。見張りがいればいいんだけど……ランベルトのおっさんに頼むか? それもどうかなぁ。
いっそのこと、スライムもどきが来たのはほんの偶然だったということにして、開き直って寝るか。……無理か、無理だな。
あ、テントがあるじゃん。あれに魔除け機能付いてるじゃん。いやー、なんで気付かなかったのか。不思議だ。
剣を振るミリアの元へ向かう。何というか、飽きないってすごいよね。
「ミリア、テント借りていいか?」
ミリアはいったん手を止めて、額の汗をぬぐって言う。
「そこまでして寝たいですか。荷物の中にあるので勝手に持って行ってください」
「ありがとな」
返事をせずに、再び稽古に戻るミリア。
んじゃ、借りていきますか。
チャチャっと顕現してテントの部品を開けた場所に持ってい行く。
組み立て方は簡単だ。何度か見てたからわかる。骨を布にさしていくだけで、最後に布の部分をひもで張って完成。なんか見た目が違う気がするけど気にしない。
中に入って、魔方陣を”作動”させたら終わり。おやすみー。
ミリアは視界の端で組み立てられていくテントを見つめた。
ローは楽しそうにテントを立てているが、明らかに形が崩れていて、使い方が間違っているのが分かる。しかし、なぜか崩れることはなく、しっかりと立っている。
精霊の不思議な力なのかな、などと考えていることに気が付き、集中できないからと一度手を止める。
ふと、テントが視界から消え、正確に魔除けが作動したことが分かる。
これなら大丈夫だろうと安心して、ミリアは深く息を吐き、心を静めて一回一回集中して剣を振る。
ミリアと引き分けてから、ローは魔法の練習をしていた。あの時よりも強くなっているだろう。それでも、ああして居眠りをしている間にもっと強くなる。そう決めていたのだ。
実際にはローは中威力魔法の練習をしていただけで、攻撃性は高くなっていないのだが、ミリアよりも強いのは確かであった。
父は返ってきた。だから、今のミリアに明確な目標はない。だから、今はローの強さを超えて、頼るしかできない存在ではないと証明する。それが楽しみだった。
その横で同じく素振りをしている少女がいる。獣人とエルフの血を両方引いている少女、メオだ。見た目は肌が黄色みがかったエルフであり、獣人の特徴は残っていない。しかし、その高い嗅覚と聴覚、バランス感覚を生まれながらに持ち、それでいてエルフの高い魔力をも持ち合わせていた。潜在能力は他を圧倒するものがある。
だが、メオはミリアに勝つことが出来なかった。メオはその強さにあこがれ、ミリアと同時期に、両親に頼んで稽古を始めた。
なお、彼女たちが住む村では豊かな生活が維持されているために、自営団を目指す者以外は戦闘訓練をすることはない。自営団を目指す者でも、稽古を始めるのは18になって精霊と契約してからだ。戦いの主体である精霊魔法もなしに出来る練習などほとんどないからだ。その為、本来契約に行くときは護衛と一緒に行く。ミリアは本当に特殊ケースである。
メオは現在自分の着ている服が不満で仕方がなかった。今着ているのは森を歩くために防御性を重視した厚手のコートに普通のシャツと皮のズボンだ。
メオは可愛いものが好きだ。女の子は大抵そうであるのが普通であるが、ことエルフに限っては当然な事ではない。その為、それに関してハーフエルフは人間の親の性質によるところが大きい。半獣人であるメオの母は、可愛い娘好きをこじらせてハーフエルフの村に住み着いたような人である。メオの場合はそれに大きく影響されているのだ。
実は、以前着ていた青いロリータ服やミリアの持っている赤いパジャマはメオの両親が作ったものだ。彼らは人間の上流階級が来ている服を可愛くアレンジして作るのが趣味なのだった。
説明回です。……です。
昨日の分は間に合えば今日中に投稿しやす。




