43.シリアス超特急の異変
前回のあらすじ
ローはr-15指定
お日様の香り
の二本でした。
おわり!
それは、俺がこの村に来て三週間ほどたった時のことだった。
「ロー、起きてください」
俺はいつも通りに、ミリアに起こされていた。
しかし、この村はいつも通りとはいかないようだった。
「大変ですよ。手負いのエルフの二人組が助けを求めて里からやって来たみたいです」
確かに、いつもとは違う出来事である。だけど、それがどうかしたのだろうか?
「あ。状況が分かってないようですね」
起きて早々、ミリアの呆れ顔を拝むことになるとは思わなかった。ただ、その顔にはどこか陰りもある。
不穏さを感じる中、寝っ転がって話すのもあれなので、とりあえず体を起こす。
「エルフは普段自分たちの住んでいるところから、大きく離れることはしないです」
どっかの妖精もそうらしいな。まあ、エルフが妖精として書かれていることもあるし、似たようなものか。
「そして、エルフは自尊心が強いので、あまり他所に助けを求めたりしないです」
これもよく聞く話だよな。というか、こういう話をハーフエルフであるミリアから聞くと皮肉っぽいな。
そんな余計なことを考えていると、
「……理解する気がないのはよく分かりました」
そう言って、また呆れられてしまった。
確かに面倒ごとは嫌だって顔に出てたかもしれないが、理解していないとは不本意なので弁明する。
「いや、分かってるから。内向的で普段助けを求めないような人たちが、助けを求めるほどの一大事が起きたってことだろ?」
「内向的とはちょっと違う気がしますけど、要するにそういうことです」
うーん。内向的って意味違ったっけ? 辞書がないから確かめようがない。
難しい言葉を言おうとして失敗したかもしれない。ちょい恥ずかし。
「そんで、ミリアも助けに行くって話か?」
問題なのはそこだ。ハーフエルフはともかく、この危険生ものも蔓延る世界で、知らない種族がどうなろうと関係はない。俺は昔からその主義の下に行動している。
「私は……行きたいです。でも、エルフの里単位でどうにもならないことに、私が行って首を突っ込んでも仕方がないのです……」
ミリアが助けたいと思う人……もしかして――、
「ひい祖母ちゃんがいる里なのか?」
黙ってこくりと頷くミリア。その顔は、目が潤んでいて、泣くのを堪えているようだ。
エルフの里と聞いて最初に思い出しても良いものだが、薄情なことに、俺は先に保身に走っていた。もはや死ぬことも無さそうな体で、何に脅える必要があるのだろうか。
ミリアのそんな顔を見て放っておけるわけがない。
しかし、だからと言って無責任に、行くと良いなんて言えない。俺自身にミリアを守ってやれる自信が無い。
自信の一端となるようにと祈って、ミリアに質問する。
「敵の正体は分かっているのか?」
「敵? 何を言っているのですか?」
え?
ミリアは少し考えて、何かに気づいてしゃべりだす。
「手負いって言ったから勘違いしたんですね。エルフの二人は近くに出た魔物にやられただけですよ」
え? 紛らわしいな、おい。てっきり、エルフの里にとんでもない化け物が出たのかと思ったじゃないか。
「そもそも、さっき泣きそうになってなかったか?」
「あくびが出ただけですよ。何を言っているんですか」
あからさまに不機嫌な顔になるミリア。昔は泣き虫だったのだろうか?
……今もか。マグロ丼事件の時、それはそれはいい泣き顔でした。
「それはおいといて」
そう言いながら、箱を持つように両手を平行にして、それを横にずらすジェスチャーをする。
「結局、何を助けてほしくてやって来たんだ?」
「まあ、敵と言うのもあながち間違いではないのです。何やら不可解な魔物が大量発生しているらしいですよ。液体でできたうねうねした魔物や、ひよこに貝殻が付いたような節のある触手がある魔物だったりして、気味が悪いらしいです」
液体でできたうねうねした魔物って、スライムだよな。
この世界にスライムがいないのは何となく分かっていた。雑魚モンスターの代表のようなそれは、少なくとも森で一度も見なかった。理由はそれだけでなく、そもそもこの世界の魔物は動物が大きな魔力を得てしまったときに変異して生まれるものである。この地球と似たような動物が暮らす世界で、スライムの元になりそうな動物なんぞアメーバくらいなもんだろう。そんなに小さいと、魔物になっていても気が付くわけがない。
しかし、発見されていないだけで存在したようだ。
「それだけか? 確かに、気持ち悪いのがいっぱいいるのは嫌だけど、そのくらいで自尊心を捨ててしまうのか?」
「そういえば、木や地面や動物がとても綺麗な断面でえぐり取られている場所がいくつかあった、とも言ってましたね」
んん? つまり……どういうことだってばよ。
「説明できない謎の現象が起きたってことです」
俺の疑問をくみ取ってくれたのはいいが、長年生きているエルフでも理解できない事っていったい……。
「既存の魔法でできないような現象だったってことだな?」
「そういう事でしょう」
ふむ、やはりスタ○ド使い同士は引かれ合うという事か。じゃなくて、同郷の輩が腕試しでも始めたか? この世界で知られていない魔法を使いだすやつとか、天才(災)か異世界人のどちらかだろう。
……冗談のつもりが、割とそうかもしれない気がしてきた。
「そのくらいなら行きたければ行ったら良いじゃないか。人に危害がないなら、今のところは大丈夫だろう」
少しばかり心配ではあるが、俺が行きたいというのが本心だ。無敵であるが故の余裕である。
「そうですか。ローがそう言うなら、お父さんたちに相談してみますね」
そう言って嬉しそうな顔をしつつ、そそくさと部屋を出ていくミリア。
あいつもひい祖母ちゃんに会いたいだけなのではなかろうか。どうもそんな気がする。
そう思って眺めた窓の外ではもう高くまで日が昇っていて、昼近いことを示している。エルフの二人に話を聞いていて、俺を起こすのを忘れていたのだろう。
やれやれと首を振って、今日は休みにしようと決めて、再び布団に体を預ける。
話が付いたらまたここに来るだろう。
そう期待して、俺は再び眠りに就くのだった。
シリアスは素通りするもの
※(異世界人はい)ないです。




