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精霊生活に安息を  作者: 鮭ライス
ハーフエルフの村
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閑話3.海岸の町オストル

前回(閑話2)のあらすじ

 オストルの付近で大量発生している魔物を討伐するために、依頼によって多くの冒険者達が集まった。

終わり!


 僕たち冒険者と屈強な漁師で構成された討伐隊は、ぞろぞろとオストルを出て北西に見える森へと向かう。

 見た感じでも、気配は沢山あっても魔物が溢れている様子はなく、まだ余裕があった事を窺わせている。


 今回の作戦は大分大雑把なものだった。


 まず、隊は大きく分けて二つの班に分かれる。陽動班と遊撃班だ。本隊がないのに遊撃とは、と不思議に思ったが、自由に行動する冒険者達は下手に編成するよりも、それぞれの仲間内で行動したほうが成果を上げられると言うことだろう。そもそも、陽動班が本隊みたいなものだ。

 作戦の概要は、まず陽動班が森の中には入らずに外から魔法を放つ。それで出てきた魔物を遊撃班が叩くというものらしい。

 大分雑だが、僕も戦略には詳しくないので、孫氏のような戦略家が存在しなければ、こんなものなのかもしれないなと思う。

 しかし、これで十分だと言える自信もあるのだ。今朝集まったとき、森の中を正式な依頼を受けて偵察してきたと言う冒険者がいた。その報告によると、あまり脅威度の高い魔物はおらず、それより強いものがいるとしても、十分対処可能な範囲なのだそうだ。それと同時に、およそ殆どの動物が魔物になっているとあって、不要な動物の始末をしてしまうことはないと言っていた。

 その報告通りだと、魔物の数は200どころではない気がするが、この森のすべての魔物を今倒すわけでは無いだろうから、多いと言っても……どのくらいだろうか?


 正直、その報告はゲームなどによくあるフラグじゃないかとひやひやしている。


 僕は遊撃班だ。陽動班は魔法の得意な人と、それを守護する人たちで構成されているからだ。魔法は得意なはずだが、それを守ってくれる人もいないので、初めから打って出た方が早い。


 一応、遊撃班の打ち漏らしは、陽動班が随時対応することになってはいるが、万が一の為に、町では衛兵が多めに待機しているらしい。




 森の500メートルほど先に見える辺りに到着し、救護所が設置される。使われないことが望ましいが、念には念を入れるのだろう。それならもう少し戦術を練ったら(以下略)。


 テントの設置が終わると、隊長である冒険者組合の支部長の指示で、陽動班がテントの十メートルほど前方に展開し、遊撃班である僕たちもその周囲に集まる。僕は何となく陽動班の左の辺りに陣取った。


「陽動班、攻撃開始!」


 その声を合図に、陽動班の魔法担当が一斉に詠唱を始める。皆思い思いの魔法を使うので、ただの怪しい集団にしか見えない。


 それから数瞬の後、森の中で破裂音がしたのを皮切りに、礫が飛んで行ったり、木が倒れたりしていく。森に放つ魔法なので、炎を使うことは禁止されていた。


 山火事は中々止めようがなく、恐ろしいものだ。近所の林が燃えたことがあるのだが、消防車が集まるもなすすべもなく、結局森が全焼するまで見ているしかなかった。

 この森が燃えだしたら、もしかしたら精霊様たちが済む森まで燃えてしまうかもしれない。それは困るのだ。そうなりそうなら、僕は全力で消防に回ろう。そう心に決めたのだった。


 そんなことを考えながら森を見つめていると、最初に飛び出してきたのは猪のようだ。全長2メートルはありそうな巨体で、鬱蒼とした森の中をよく抜け出せたものだと感心していると、近くにいた遊撃班の男性が、迎撃しようと猪に向かって駆け出す。


 距離があるのだから、魔法に任せたらいいのに、そこまでして手柄が欲しいのだろう。人が近づいて行ったので、ほかの人たちも魔法が打てずに困惑している。

 しかし、その男もなかなかやるようで、正面からやってくる猪を目の前にとらえ、その横をすり抜けるようにして、腰から抜いた猪の巨体に対して細すぎる剣を振りぬく。すると、そのたった一太刀で、イノシシは真っ二つに切れ、その場に倒れこむ。


 この世界の人たちの力は別格だと思う。僕の自力では到底及ばないほどに強い。そう思った。

 不本意ながら、僕はこの世界で英雄に成らなくてはならないらしい。その為、ララストルの町ではあれくらいの魔物はしょっちゅう倒していたので、あの男に後れを取っているわけでは無い。しかし、それでもこの世界を救う必要があるかについては懐疑的である。


 ……そういえば、英雄に成れとは言われたが、世界を救えとは言われていないな。なら救う必要はないのか。それならなおさら、僕が英雄に成る意味などあるのだろうか?

 魔王がどうとか言っていたが、それを倒す英雄に成れと言うことだろう。


 うん? よく分からなくなってきた。こういう時、頭がいい人がうらやましい。いつもだったら、こういうことは友達に丸投げしていたのに。あいつは今どうしているだろうか? 僕がいなくなって、悲しんでいるだろうか? 家族にも別れを告げられていない。出来ないとは言われたけど、目標を達成したら、しっかりと元の世界に返してくれるだろうか?

 不思議なことに、この世界に来て初めてのホームシックだ。ちょっと前まで何も考えていなかったのが丸分かりである。


 さて、目標への一歩として、まずは目の前の敵を倒そう。悲しむのはそれからだ。


 そう考えて、次々と現れ始めた魔物へ向かい、僕は一歩を踏み出した。




 暫くの間、討伐は平和に進んだ。戦闘がある時点で平和などではないが、人類の圧倒的優位で戦局は進んでいた。


 しかし、僕の懸念は当たってしまったようだ。


 そいつは僕の持っていた常識に当てはまらない存在だ。なんせ、人の形をした高さ5メートルはありそうな巨大な骨の集まりが、歩いているのだから。


 魔物とは、本来動物の変異した姿なのだ。どんなに恐ろしい見た目だとしても、それは生物としての体裁を保っているのだ。

 だが、目の前にいつこいつは、ただの骨の集まりでしかないはずなのだ。それなのに、当然のように関節を支点にして手を足を動かす。


 ゲームでは見慣れた存在だ。ただ、周りの人たちが驚き慌てふためいていることからわかるように、この世界にもアンデッドなどと言うものは存在しないはずなのだ。

 骨に糸を通してマリオネットのように操ることはできるだろう。また、その他の魔法的手段によってもそれは可能だ。

 しかし、その場合操主が必要になる。少なくとも、この手の存在が無いと言うなれば、魔物が操ることはあり得ない。であれば、人間が魔法で操っているはずだが、討伐隊だけでもこれだけ多くの人間を敵に回してまで戦おうとする意味が分からない。


 ただ、シンプルな解釈がある。あいつがこの魔物の大量発生の原因、すなわち、ボスであるってことだ。そうなれば、僕がやることは一つ。


 あいつを倒すことだ。


 多くの人が、骸骨の異様に押され、足踏みしている。

 明らかに、英雄に成るには格好の場所だ。不本意ではあるものの、元の世界に帰るための生贄になってもらおうじゃないか。


 そこまで考えた僕は、既に骸骨の足元にいた。僕の身長ではこいつの太ももまでしかない。まずは、すれ違いざまに左の膝裏に一発蹴りをぶち込む。

 それで骸骨は左に体を傾ける。大きいがゆえに鈍重だ。慣れてさえいれば、後れを取るような敵ではないだろう。

 魔法を詠唱しつつ、よろめいた骸骨の太ももの二本の骨の間に、剣を差し込む。


「”砕激”」


 衝撃波と共にそれに吹き飛ばされた物を塵に変える(あい)属性魔法だ。基本的に魔法抵抗を高めた相手には効かないが、骨程度ならば問題ないはずだ。

 左足の方へ振りつつあった剣を中心に衝撃波が起こる。それは、思ったとおりに左足の骨を吹き飛ばし塵に変える。


 突如として片足を失った骸骨はただでさえ崩していたバランスを保てなくなり倒れる。


 ガランガランと無駄に大きな音を立てて倒れたそれに、すかさず詠唱しておいた魔法を叩き込む。


「”破砕”」


 これまた、振れたものを粉々に砕くだけの魔法だ。

 穢れた存在であるはずのアンデットだが、穢属性魔法はすこぶる相性がいい。

 倒れた骸骨を難なく砕き、砂の山へと姿を変えた。


 野太い歓声が聞こえてくる。魔物に応戦していて見ていない者もいたが、おおよそすべての人間が、僕の戦闘を見ていたようだ。


 しかし、魔物の討伐が終わったわけでは無い。歓声を上げていた人たちも、負けじと魔物に食って掛かっていくのだった。




 昼前には作戦は終了になる。午前中だけで、少なくとも僕は骸骨を含め10体の魔物を倒した。そこまで多いわけでは無い。それでも、一人でやった事と、誰もが物怖じしていた骸骨をあっさりと倒していた手腕からか、多くの人が僕の元へ話を聞こうとやってきた。


 残った魔物が出てこないかと、何人かは森の方へと目を向けていたが、杞憂に終わったようだ。僕もそのうち一人ではあったが、撤退まで魔物は出てくることはなく、ホッとすることが出来た。

 本当は英雄の感覚で、この半径一キロ程度に魔物の気配がないことは分かっていた。それでも心配なものは心配だったのだ。


途中だけど、息抜き的なものだしいいよね。

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