40.精霊魔法
前回のあらすじ
半獣人ハーフエルフ半人間のメオは稽古を決意した。
おわり!
メオの属性のいい呼び方がわからない。
メオは稽古しようかと呟いたその日、休憩になったランポさんの方へ歩いて行って、稽古をお願いしたところ、まずは親に話を聞いてきなさいと諭され、家に帰って行った。
そして、昼前に戻って来たと思ったら、親のオーケーが出たと報告に来た。午後から早速ミリアと勉強を始めるようだ。
有言実行できるってすごいよな。
一号がいなくなっったので、俺は魔方陣の勉強などする気はなく、魔法修練場を借りて、ダラダラと必殺技の開発を進めることにした。もちろん、ミリアとの戦いで使った魔法ほど弱くない死なない程度に痛い魔法の開発である。
世の中強けりゃいいってもんじゃない。別に負けず嫌いではないが、ミリアに負けたままではいられない。
数日間、家と修練場を行き来していると、暇な子供たちが壁から頭を出して見に来るようになった。
広めたのはルールだ。こいつからは、森で俺のサボりを散々チクってくれたあいつと同じ匂いがする。あいつのように性根まで曲がらなければいいけどな。
俺が、魔法で生成した土の壁に向かって火の玉を放つと、
「ねーちゃんすげー!」
と聞こえてくる。
ルールは何をやっても「スゲー」「スゲー」と喜ぶので、最初はうざかったが、もはや俺の魔法のSEの一つのようなものだ。
基本的に魔法を使う時間よりも考えてる時間の方が長いので、見てるのも暇じゃないかと思うのだが。
そしてさらに数日経って、俺がこの村に来てから二週間ほどが過ぎた。
日が暮れ始めて家に戻ると、何故かミリアが出迎えれくれた。
「おかえり」
「ただいま……?」
いつもは俺よりも後に帰ってくるので、どうかしたのだろうか?
「明日は精霊魔法を練習をするってランポさんに言われました。ローはいつも通り修練場に行って待っててください。私とランポさんも後から行きます。
精霊魔法って何なんだろうな? ミリアはいつも俺に頼らず魔法を使ってたし。何が違うのだろうか。
「明日になればわかりますよ」
また心を読まれた……。
と言うわけで翌日、先に修練場に着いてここ最近の修業によって作れるようになった、俺が寝転がれる程度のカーペットと座布団を用意してゴロゴロしながら待つ。
カーペットも座布団もただの真っ白だ。100%俺の出した糸でできている。編み方は適当だ。だが、地面に寝るよりはマシである。
初めは色を付けようと苦労した。よく考えてみたら、今まで出していた糸は無色である。しかし、細すぎて光の反射で白色に見えていただけである。結局、自分の服もカラーで生成されるのだし、着色できなくはなかったのだが、メンドイので真っ白である。
むしろ、体を作れて他に作れないものなど、ほとんどない気がする。コツを掴む必要はあるけどね。
ゴロゴロしていると、子供たちが普段やってくるより少し早い時間に二人はやってきた。
ミリアは俺を見るなりいつもの呆れ顔である。ランポさんですら苦笑している。
「外でその状態で待ってる意味が分かりません」
楽だからだろ? 多分。
「問題ありませんよ。一先ず、もう一度私がお手本を見せます」
すぐに気を取り直したランポさんは早速稽古を始める。俺も、座布団の上で正座待機……は足が痛いので適当に崩して座り直す。
ランポさんは祈るように胸の前で手を組み、呟く。
「我と契約せし精霊よ。我が声に応えてその力を授け給え。”火旋風”」
すると、ランポさんの前方10メートルのあたりに爆炎が巻き起こる。それは高さは3メートル程であるものの、竜巻のように渦巻き周囲の地面を焼き焦がしていく。
五秒ほどで蝋燭に息を吹きかけたようにフッと消えたが、その跡はすさまじく、地面を目で見てわかるほどに半径1メートル程をクレーター状に抉り取っている。完全に人に使っていい魔法ではない。
「やっぱり、精霊魔法は威力が桁違いです」
ミリアも感動したのか、言葉を意図せずこぼしている。
俺が見ていた感じだと、ランポさんは2,3センチの火をつける程度の魔力を使っただけだ。それが発火点で突然膨れ上がり、さっきの爆炎を生み出していた。
我、説明要求ス。
ミリアははっとした表情でこちらに振り向き、説明してくれた。途中途中にランポさんの解説を挟みつつ聞いた話によると、こんな感じだそうだ。
曰く、精霊魔法は契約した精霊に魔法の行使を代替してもらうことで、通常の詠唱魔法の詠唱を省略し、威力を増幅させるものなのだそうだ。さっきの”火旋風”で言えば、ミリアが最大威力で使っても、半分の大きさのものすら出せないものだそうだ。
この際、魔法の強さは契約精霊との絆によって大きく変わる。俺の立場からすれば当たり前なことだ。契約しているとは言え、ほとんど何の見返りもなしに力を貸すのだ。そんな大きな魔力を唐突に与えられるわけがない。
そして、詠唱の代わりに唱えるのが、契約文言である。近くにいれば必要ないかもしれないが、いくらつながりがあるからと言って、遠距離で魔法を使うのだから、そのパスを一時的に作つ必要がある。それを行っているのが契約文言なのだそうだ。
「それだと、精霊をする意味が無い気がするんだけど」
思ったことをそのまま口にする。
すると、ミリアは少し不安そうな顔をする。
「それを精霊様に言われてしまうとこちらの立場がないのです。以前私と契約してくださったお方に話を聞いたところ、気に入った人間に力を貸し与えることで、自分が普段離れられない外の知識を得ることが見返りだとおっしゃっていましたね」
ランポさんが答えてくれた。
……俺は、エストイア様に任務を解かれたので、それはメリットになりえないな。俺がイレギュラー過ぎるのだろうか。
その人と契約したくなければしなければいいと言うことだろう。
まあ、俺もミリアに死んで欲しいわけではないので、いざと言うときに力を貸すのはやぶさかではない。
ミリアの顔は、俺の内心を悟り、ホッとしたようなやさしい笑顔に変わる。
「それではミリアちゃんもやってみましょうか」
「はい!」
ミリアは少し悩んでから呟く。
「我と契約せし精霊よ。我が声に応えて力を授け給え、”点火”」
ミリアが少し呟くごとに、心の中でその言葉がはっきりと聞こえてくる。それと共に、ミリアが何をしたいのかが鮮明に伝わってきて、俺はその通りに魔法を発生させようとする。しかし、発生させようとしただけで俺が魔法を形作らずとも勝手に魔力が抜けていき、ミリアの目の前に高さ30センチほどの炎が発生し、すぐに消える。
ほう、こんな感じなのか。
恐らくだが、俺がミリアの呼び声を無視すれば、魔法は発動しないのだろう。




