34.ミリアはまだ子供
前回のあらすじ
世界には未だ誰も知らない真実にあふれている。……。
おわり!
多分大体これであってる。
更に本をめくっていくと、徐々に頂点の数の多い図形が増えていく。やはり、円が最強なのだろう。
いくつか、直線で構成されてはいるものの名前のある綺麗な図形でない魔法陣もある。闇雲に円形ばかりを使わず、魔力の効率を良くさせる工夫だろうと思う。事実、試しに描いてみると、自分の魔法でやるよりも遥かに少ない魔力で同等の効果を得られたのであった。勉強にはなるのだが、これは、人間工学のように便利なものをさらに使いやすくする技術であり、あまり俺の得意でない分野だった。
本をすべて捲り終わった結果、分かったのは頂点の数の関係くらいで、それ以外はあまり分からない。すべての魔法陣を試していけばある程度分かるだろうけど、いくら俺でも、そんなことをするくらいなら誰かに教えてもらう。
と言うわけで強のところは終わりにしよう。
本を戻してきて、魔方陣を試し書きした紙は持って帰るのも面倒臭いので机の端に揃えて置く。
部屋を出ると、言われた通り「最初の曲がり角を右に曲がった突き当り」に行くとしよう。
廊下を二回左に曲がり、突き当りの部屋に入る。
そこでは家庭教師のようにランポさんがミリアに何やら教えている。ランベルトは見当たらない。
ミリアは集中していて気づかないが、ランポさんはこちらに気が付いて歩いてくる。
ミリアが一体何をそんなに集中して勉強しているのか気になるが、とりあえず、今はいいや。
ランポさんが目の前で言う。
「何かお困りですか?」
「今日は帰ります」
ランポさんはとっつきやすい人ではあるが、それでもまだ緊張する。
「畏まりました。ミリアちゃんには伝えておきますね」
一を聞いて十を知る、すごい人だ。凄く助かる。
俺はそれにお辞儀で返して部屋を出た。
屋敷を出て、家に戻ると、何だか今日もどっと疲れた気がして忘れずに一号の魔法陣を作動させてから、顕現してベッドに横たわる。
温かくて気持ちいい……。
「ロー、起きてください」
ミリアの声がする。ミリアに朝起こされるのはこれで三回目だな。幸せを感じる。
「今日は稽古がないので、私の友達を紹介しますね」
今日稽古がないのは、ランポさんは用事があるからだ。それは、昨日の午前中に聞いていた。
にしても、ミリアが少し気恥しそうにしているのが可愛い。本物だろうか?
ああ、これは夢だな。ミリアがこんなに可愛いわけがない。寝よ……。
「どうして二度寝するんですか。困ったちゃんは止めてください」
そう言いながら体を無理やり引き起こさせられる。
「まくらぁ」
「枕はダメです。ちゃんと起きてください」
うう、寝起きであんまり力が入らない。枕まで取り上げられてしまった。
「稽古がないなら、もっと寝てていいじゃん」
元々俺は関係ないしな。
「ダメですよ。ローは居候なんですから、ある程度は働いてください」
くっ、そこを言われるとつらい。
ミリアのけちぃ。
ベチッ
唐突にデコピンが入った。地味に痛い。
「さっさと起きてください。起きないならもう一発差し上げますよ」
スッとベッドを下りて立つ。裸足なことに気が付いてサンダルを突っかける。この間三秒くらい。
ミリアはいつの間にか俺の頭に手を当て、
「よくできました。えらいえらい」
そう言って撫でられる。……これが飴と鞭ってやつか。
って、いつまでも撫でるんじゃない。そう思ってミリアの手を払う。
ミリアは反抗されたのになぜか嬉しそうな顔をしている。子供の成長を見た、的な。
当然のように俺の朝食はなかった。昨日と同様で、朝食後に起こされたのだ。
ミリアがずっと付いていたので、ムルアからこっそりもらう隙もなかった。
まあ、あんまり食べてしまうのも申し訳ないからいいけど。別に悔しくないし。
玄関まで来ておいて、一号を今日は使わないことに気が付き魔法陣を作動させ直しに部屋に戻る。ミリアも何故か一緒だ。
一号の背中を出して魔法陣を作動させていると、
「その魔法陣っていったい何なんですか?」
とミリアが聞いてきた。
「これは人形が腐らないように浄化し続ける魔法陣だよ」
無駄に真面目に答える。
しかし、聞こえてきたミリアの反応は問題だった。
「残念です。人形を操れるわけじゃなかったんですね。作動させても何も起こらなかったので」
勝手に作動させただと?
「いったいいつの間に……」
「確かおとといですね、ローが寝ていたので気になってしまいまして」
こっちは少し怒っているのに、ミリアは無駄に素直に話す。……嘘ついてないよな?
おととい、おとといねぇ……あっ! もしかして昨日の朝魔法陣が作動してたのはミリアのおかげか? だとすると、ミリアがそれに気が付く前に話をそらさねば。
ミリアの方を見ると、何かに気が付いた様子だ。
ヤバい。遅かったか。
「あの時、魔法陣は作動してなかったんですよね」
「へ、へー。そうなんだー」
「今その人形があるのは私のおかげってことですよね?」
「ん、んー? そうなのかなー?」
くそぅ。ミリアのくせに妙に良い勘を働かせてくれる。エスパー様だから仕方がないと諦めよう。
「これは貸しにしておきます。後で何かお願いしますね」
いったい何をさせるだぁーっ! 不安である。
いつもの広場にやってきた。今はまだミリアと俺、ランしかいない。
今は暇だからランをわしゃわしゃしている。
ミリアはそんな俺を微笑ましく見ている。
やはり、あまり子供っぽい行動は止めるべきか……。
暫くすると、ミリアと同じくらいの背の子供たちが一斉にやってきた。なぜかルール達ガキッズも混ざっている。
ミリアが立ち上がって言う。
「この子が、私の精霊のローだよ」
その声は家族に対するものよりかはやや取り繕った口調ではあるが、いつもと比べるとやはり子供っぽい言い方だ。
というか、子って止めろよ。それに、契約はしていてもミリアの精霊ではない。
おおっと騒めく子供たち。ルールもなぜか同調している。
子供とは言え大勢いると圧迫感がある。そもそも俺の方が小さいから余計だ。
友達を紹介するって言われた気がするのだが、明らかに紹介されているのは俺である。
……もうやだ、帰っていい?




