30.どうも、ご都合主義です
前回のあらすじ
人形出来たよ。上手く使えそうだよ。
おわり!
お昼休憩が終わったので再開だ。午後は座学なのだそうで、興味がない俺は、一人広場に残り素振りと、必殺技を実現するための魔法の構築をしている。
午後の座学って、すっごい眠くならない? 大丈夫かな。
あまり適当に振っても素振りの意味がないので、だいたい素振りしかしてなかったけどな。
俺が必殺技を使おうとする前に、変な癖が付くから基本ができるまでは余計なことはするな、と釘を刺されてしまっている。
一週間くらい頑張ればいいかな? レベル上げとかはすぐに飽きるタイプなんだ。ゲームは90%PSでいいと思う。難しいのはできないけど。
ゲームか……どことなく空しい響きだ。
そんなことを考えつつも、しっかりと今日言われたこと――真っ直ぐに振れとしか言われてない――を守って、素振りを続けた。
「あれ? また知らない人がいる!」
ガキが複数現れた。金髪碧眼なルールとその他が5人いる。耳の様子から、全員少なくとも血の半分はエルフだ。
なぜまた現れたし。ここが遊び場なのか、そうか、当然だよな。
午前中は使えないことを知っていたのだろう。だからルールだけが見学に来てたと考えられる。
ルールの先制攻撃。
「もしかして、にーちゃんも精霊なのか?」
「も」ってなんだよ
そう思っていると、何やらガキどもの方がガヤガヤする中、ルールの声が聞こえた。
「――午前中はローっていうねーちゃんがいたんだ。かーちゃんが言うには、そのねーちゃんは精霊様だっていうんだよ。――」
お母さんの入れ知恵か。
幼女姿なら問題はなかった。ひどくても多少ちやほやされるくらいだろう。
しかし、今は別な男の子になっている。改めて話さなくてはならないだけでなく、剣の練習までしてしまっている。
マズいぞ。
練習人形君一号を作り直すのはいい。実際は別物になってしまうので練習人形君一号ではなく、練習人形君二号だ。
問題はそこではない。この体は教育式なのだ。作り直した場合、二号の経験値は0だ。つまり、また歩く練習をする必要がある。そんなことはしたくない。
考えている間に追撃が飛んでくる。
「精霊様ってホント? ルールに見せた魔法もできる? ぴかぴかって光るって」
ロリっ娘がかわいい。そんなに手を広げて、キラキラした目で見つめてもやってやらんぞ。
いや、待てよ。消えるのは無理だが、全力でこの辺りから離れれば何とか逃げられるのではなかろうか。
そうと決まれば今度はさらに盛大に行ってやる。
盾と剣をほどいて消す。そして両手を横に突き出す。
「なんだなんだ」「今度は何をするんだ?」「これが……!」「すごいのがきそう」「……」「ごくりんこ」
6人のガキはそれぞれ別な反応を示す。
青い魔方陣を前回より大きく、広場の三分の一を埋め尽くすぐらいの大きさで展開する。
その間も、ガキどもはガヤガヤしている。
いくぜ、俺の究極こけおどし。光の粒が辺りを満たすのは一緒だ。そこに大量の水蒸気を発生させる。それは、ぶわぁっと煙のように広がり、辺りを埋め尽くす。魔方陣に七色の光を放たせて、目くらましを強くする。
俺は逃げ出した。
……うまく逃げ切れたようだ。
もう少しでミリアの家だ。ここで、一つの問題に気付いた。
練習人形君一号ってほっといて腐ったりしないかな。
俺がアクセスしている間は魔力が循環しているから問題ない。しかし、生ものだから、半日ほっといたらさすがに腐り始めてしまう。だからと言って、つなぎっぱなしは嫌だが、作り直すのはもっと嫌だ。
誰か、一号の頭の中をバックアップ取れないですか?
……ハッ!?
自立駆動させればいいんじゃないか? いや、そんなことが可能なのか? できたら俺は生命を作る神に等しき存在となってしまう。
い、いや。あくまでこれは人形、またはロボットだ。あくまで腐らないように管理をさせるだけだ。そもそも血なんて通ってないから、生命とは言えないと思う。
あ、もっと簡単な方法思いついた。何故気が付かなかったのか分からない。腐らないように、ひたすら浄化をしておけば良いだけだ。一定時間ごとに浄化をかける、一晩の間消えない魔法ならいいのだ。こっちの方がまだいける気がする。
持続する魔法なら、魔方陣について簡単に学ぶ必要があるな。それについて今知っているのは、人間が魔法を行使するためのもう一つの方法であると言うことと。定期的なメンテナンスによって半永久的に作動できるということだ。
トイレの魔法を例に挙げると、あれは起動の際に使用者から魔力を受け取って、それによって発動するものだ。スイッチ以外は見えるとことにはなかったが、恐らくいくつもの普段は何もしない魔法陣で形成されているのだろう。これをとりあえず不活性型魔法陣と呼ぼう。
あとは、この村を囲む壁に装飾された魔法陣だ。これはトイレとは違い、常に発動している必要がある。つまりは活性型魔法陣ということだ。あらかじめ大量の魔力を注いでいるのか、電池のようなものがあるのかは分からない。
今回は常に浄化し続けていると魔力がもったいないので、この二種類の魔法陣を組み合わせて作つ事にしよう。
あとは、当てずっぽうでチャレンジしてみるか、誰かに師事して作るかのどちらかだ。
答えは決まっている。
適当にやってやるぜコンチキショウ。
とりあえずミリアの家の木の陰でやろう。
……やればできるもんだな。
練習人形君一号の背中を見ながらそう思った。その背中には、白と水色の円型の魔法陣が重なっており、白い方には時計のような水色の針が、水色の方には放射状に線が描かれているが、露骨に一か所だけ抜けており、重なったら発動するんだろうなと誰でもわかるような作りだ。
この案を思いついて、最初にトイレで見たものを意識して、浄化の魔法陣から考えたのだが、意外と簡単に完成してしまう。ただ、ミリアから聞いた浄化の詠唱を魔方陣に書き込んだだけだったのにだ。書いてすぐに魔力切れまで周囲を浄化する効果が発動し続けてしまったのだが、今回は好都合だ。むしろ、時計を作るほうに時間がかかった。
少しづつ描いてあるものの位置をずらす魔法の詠唱なんて知らないから、どうしていいかさっぱりわからなかった。だから、基本に立ち返って、昔教えてもらった時計の仕組みを思い出してみることにした。詳しくは省くが、背中の二次元的な面上で時計を作るのは不可能だ。彫り込めば不可能では無いが、皮膚がとんでもないことになってしまうのでダメだった。
その代わりに、魔方陣の円周上に魔力を走らせることにした。これはもはや魔法陣の効果ではなく、俺の魔法なのだが、今回は仕方がない。円周を走る魔力は、同じく魔力でできた針にぶつかり、その針を進めさせる。この時の干渉は物理的に起こるのではなく、俺の魔法の一部として起こるものだ。針は初めの一周は、40分掛かる。そのうち減速していって、いづれはぶつかり続けて魔力を失い止まってしまうが、一晩は持つはずだ。
もう、夕方になってしまったので、今回はひとまずここまでにしておく。
魔方陣の作り方を学ぶのは急務だな。
誰か魔法の使い方を教えてください(錯乱)




