28.人形遣いか錬金術師か死霊術師か
前回のあらすじ
進路を投げて、とりあえずミリアの修業を観てたら、ガキが現れた。
おわり!
誰だこのガキ。
多分ハーフエルフはである。特徴的な耳と金髪碧眼……ハーフじゃないのかもしれない。
「なぁ、そこのねーちゃんも見たろ! 剣を振るたびにぴかって光るんだぜ!」
おう、そうだな。分かったから、肩をたたくのと、無駄にでかいジェスチャーで教えてくれなくてもいいから。俺がやったんだから知っとるわい。
どうしたものかと思って、再びミリアの方を向くと、もう当然のようにエフェクトをまき散らしながら素振りをしている。ランポとランベルトも苦笑してそれを見守っている。こっちに気づいているのか、あえて無視しているのか、どっちだろうね。
「ねーちゃん、聞いてるのか?」
正直言うと聞いてない。肩を揺すられて鬱陶しい。
仕方なく口を開く。
「……お前はだれだ」
質問を間違えた。知りたかったので問題は無いが、ちっこいガキが答えられるとも思わない。
「おれはルール。ねーちゃんの名前はなんだ?」
は? あ、ルールが名前か、びっくりしたよ。この見た目で中二病なのかと。
「ロー」
「ローねーちゃんか、短いのに呼びにくいな」
子供って辛辣。そんなすぐディスらなくてもええやん。
俺がルームとかシャンブ○ズとか使えれば、名前に箔が付くってもんだけどな。魔力でそれを再現って、かなりきつい。できて遠隔で切断するくらいだよ……血は出るけど。
ルールはいつの間にか俺の隣に座っている。図々しいやつだ。
「おれも練習すればあのくらいできるかなー」
練習してもできません。魔法語を突き詰めたらいけるかもしれないけど。
ふと、さっき魔法をかけた枝を思い出した。
「こいつを使えばしばらくの間光が出るようになるぞ」
そう言って、枝を拾い直して渡す。
「ほんとーに? おお、すげー! すんごいひかる」
振るたびに光る枝を楽しそうに振り回すルール。短いせいで、ペンライトにしか見えない。
暫く振り回していると、次第に光が弱くなり、ついには普通の枝になった。
「あーおわっちゃった。ねーちゃん、これ光んなくなった」
あーうんそーだねー。マジでどうでもいい。
ちなみに、ミリアの方はとっくに光らなくなっている。
「なー、ねーちゃんはどこから来たんだ?」
無視しているはずなのだが、ルールは執拗に話しかけてくる。
観念して答えることにした。
「町の方だよ」
するとルールは目を輝かせて、
「やっぱりそうか! 見たことないねーちゃんだと思ったんだ! それでっ、街ってどんななんだ?」
え、やっぱ面倒くさい。誰かこの子に教えてあげて。
俺は逃げるから。
突然体を消すのも面白くないので、せっかくだから本気を出してやろう。
いでよ! まほーじん!
一度立って、足元に青色の以前作った魔法陣を展開する。目いっぱい光の粒子を飛ばして、目くらましをする。
ルールは突然光だした俺を「おおっ!」っと驚きながら、眩しくて目を細めている。
あとはただ前と同じく、消えるのみだ。
何やら、ミリアたちの方から視線が飛んできているが、そんなことはどうでもいい。
「さらばだ、ルール」
一応声をかけておく。
次の瞬間には何もない空間の出来上がりだ。
「うおおお! すげーっ!」
ルールも大興奮だ。
大成功だな。後はその辺の木の上から、ミリアの修業を観察していよう。
ミリアはいつものように呆れた顔をしているが、ランベルトとランポはあっけにとられている。どちらも、こちらがいる場所を把握しているようで、しっかりと目で追ってはいる。流石だ。それでも、しばらくは開いた口がふさがらなかった。
興奮して何やら叫んでいるルールを除くと、ランポが最初に言葉を発した。
「ロー様はいつもあのような感じなのですか?」
「慣れればどうってことないですよ」
いつもってほど、こんな盛大な魔法は使っていないがな。ミリアの中ではそうなっているらしい。
ルールはひとしきりはしゃいだ後、ミリアたちの邪魔をすることなく去っていった。なら俺の妨害をするなよと思ったが、よく考えてみると、俺が断ってなかったからかもしれない。割と素直な子供のようだったし。
顕現しなおすのも面倒なので、そのまま観察を続ける。ミリアはいまだに素振りをしているが、今度は型のような動きをしている。人間相手でなくとも通じるのか甚だ疑問ではあるが、あの二人が意味のないことを教えるとは思えないので、重要なことなのだろう。
……そろそろ必殺技の練習とかしないかな……。
魔神○とか、アバンストラ○シュとかさ。無理なのかなぁ。あれもこの世界だと魔法の一種か。だとすれば、俺がやるか物凄い魔導士がやるかしかないよな。
今はランポたちに稽古をつけてもらっているので、無理言って必殺技なんぞの練習をするわけにはいかない。
正直見飽きた。俺も剣の稽古してもらおうかな。でもメンドイよな。あーでも剣で魔物倒すってなんか憧れるよな。
俺が稽古する必要はない。……そうだ、人形を作ろう。
顕現と、この前少しだけ作った糸だけの服を参考にすれば行ける気がする。
まずはエネルギー。これはもちろん俺の魔力だ。糸で使役する際に送ることにすれば多分問題はない。
次に動力。これも糸で作るしかない。筋肉のように伸縮させる機能を付けるか、その他によって引っ張るか。
そして、ボディ。これも糸だ。中身はすっからかんでいい。ひたすらに巻いて隙間がないように作るのです。蚕の繭のように。
時折感じる視線をスルーしながら、にっちゃにっちゃばっさばっさと人形を作る。にっちゃは糸同士を接着する音、ばっさは分投げてほどく音だ。
どうせなら可愛いのが作りたい。メ○ちゃん的方向性ではなく、愛玩する的な意味で。……同じじゃん。
あ、しまった。可動部がないぃ! 腕が、腕が曲がらないぞお!
せっかく人工筋肉(糸)ができたのに。
糸で可動部はどうやって作ればいいんだ。人形の可動部と言うと正しい名前は知らないが、球体関節か、はめ込み式か、ねじで止める感じの方式かの三つしか俺は知らない。一番優れているのは球体関節だが、あれがどうなってくっ付いているかを俺は知らない。
詰んだか。
いや、なにも糸だけで作る必要はない。というか、人形である必要がない。腕と剣があればいいのだ。あれ、流石にそれだと意味ないか。
そんな葛藤を経てついに完成した。練習人形君一号だ。葉っぱで作った原始人みたいな服を着ているが、一号なのであえてそうしたと言いたい。だが、うまく作れなかったというのが本音。体は結局肉のある普通の体だ。切ると良い手ごたえがあるだろう。……人体錬成?
見た目は、俺の元の体を作るつもりで、身長を120ほど、顔は人形としてデフォルメした。つまり、黒髪黒目の男の子である。
今は、体を動かす要素がないので、死体のように動かない。それを動かすのだから、やることはどう考えてもネクロマンサーだな。
完全に肉人形である。なにせ、いろいろ問題を解決しつつもう少しで完成かもと思ったら、何か俺の理解が及ばず、原因が分からない問題に当たってしまったのだ。アア、コンナトコロニモバグガ……。
一度、人間体を作って比較しながら調べようとしたんだけど、それならそれを人形にしちゃった方が早いじゃんってなって。
うん、仕方がなかったんだよ。
……気が向いたら普通の人形作ります。
盛大にやらかしたので大分書き直した。




