27.どっきり、びっくり
前回のあらすじ
あと三年暇なんだけど、これからどうしようか?
おわり!
結論、何かいい方はないかって考えて、すぐ出てくるやつはすごい。
……話がそれてるな。
十分ほどベッドの上でゴロゴロしながら考えていたのだが、ミリアとランはとっくに部屋からいなくなっていた。
考えていてもいい案が出てこないので、ここはすっぱりと諦めてその場しのぎでいいかな、と思う。
その時、さっき学校の話をしていたからか、大学受験の時を思い出した。
なんか、前世と変わらないな。
今回はどんな決断をしても、最終的に死ぬことはないから切羽詰まっていない。ゆえに、もっと適当でもいいと思う。
そう楽観して、俺は部屋を出ることにした。
ダイニングキッチン……めんどいので食堂でいいや。食堂に入ると、一家は、すでに朝食を食べ始めていた。
ムルアが食堂に入った俺に気が付いた。
「あら、おはようローちゃん。朝ご飯食べる?」
聞いてもいないのに、朝食を勧めてくる。気持ちは有り難いのだが、まだどうするか決めていないので、食べてしまうのもなぁと考えていた。そのはずなのだが、いつの間にか席に着かされて、目の前には朝食が用意されてしまっていた。ダメ人間製造工場かな?
朝食は堅いパン、野菜スープと目玉焼きだ。目玉焼きは鶏がいたのでその卵だと信じよう。
食べる前に顔を上げると、ルーマルがいないことい今更気が付いた。今日は朝番なのだろうか?
おっさん、ことミリアの父であるランベルトが話しかけてきた。
「おはよう。昨日はすまんな。なんか気に障るようなことをしちまったようで」
ランベルトは今、流石に鎧は来ておらず、この世界でよく見る白いシャツとよく分からないズボンだ。
何か勘違いをしているようだ。ミリアに散歩に言ってくるって言ったのだが、伝えてくれなかったのかな。
そう思っていると、ミリアが口を開く。
「昨日のことは、ローが外の探索をしてなかったからって、散歩しに行っただけだよ」
俺に対して、微妙に配慮された答えだな。……い、いや、配慮なんてないよ。全部真実だよ。
ミリアも、パジャマではなくいつもの白シャツに短パンだ。この格好も、ボーイッシュで嫌いではないが、やっぱりミリアには可愛い服を着せたい。
「そうか、ならいいんだがな」
意外とそういう気配りのできるおっさんに少し感心した。
ふと、ガリルが黙々とスープを口に運んでいるのが見える。割と物静かな人だよな。こうして見ても、上品なおばさまって感じで、様になっている。この人の母親はエルフのはずだから、恐らく、厳しくしつけられて育ったんだろう。エルフってそういうストイックなイメージだし。
この人の夫が見えないあたり、普通の人間と結婚したのだろうか。未亡人ってやつだな。勝手な予想なので、ランベルトみたいに突然やってくるかもしれないけどな。
さて、いい加減朝食をいただこう。手を合わせて、「いただきます」と挨拶をする。
実食だ。とはいっても、特別そうなのは野菜スープだけだ。それからまず手に取る。香りはコンソメのようだ。鶏(略)ので、おそらく、普通にコンソメを作ったのではないだろうか。そう考えると、かなり期待できる。スプーンで一口すくって飲む、するとピリッとした辛みと濃厚な旨味が感じられる。畑をちらっと見ただけではわからなかったが、香辛料を作っているところもあったのだろう。
目玉焼きと堅いパンは特に言うことはないと思っていたのだが、焼き加減が何故か俺の好きな加減に調整されていて、とてもおいしく頂くことができた。
この世界の飯は十分にうまい……元の姿を考えなければ。そのせいですっかり忘れていたのだが、ハルトがとても不味そうな食事を食べていたことを思い出した。
よほど貧乏だったのだろうか? あんな凄いスキルを持っていて金を稼ぐ手段なんていくらでもありそうだが、だとすると、何かのために貯蓄していたか、よほどストイックな生活をしていたかのどちらかだろう。実は聖職者なのかもな。
食事を終えると、他の皆も食べ終わっていて、食器を片付けている。ランベルトのおっさんもだ。あのでっかい体で食器を運ぶ姿は中々に面白い。その視線に気が付いて、ランベルトはこっちを見てニコッと笑い……微笑み?手を振ってきた。おっさんなのに、良い微笑顔だ。違和感がハンパない。
現在、ミリアの家を出て、近くにある多目的広場的な公園のようなそんな場所に来た。ランベルトとミリア、俺の三人でだ。ランベルトの冒険譚をミリアが聞きながら、後ろから俺が付いて行く感じに歩いてきたのだ。
ランは置いてきた。……今気が付いたが、このランって名前、ランベルトから取ったのだろうか? 黒いから、鎧を着てるおっさんと似てるしな。
広場には、一人の男が待っていた。この人もハーフエルフだろう。しかし、その顔はかなりの年季を帯びていて、人間で言えば60~70くらいだろう。多分だが、ガリルよりも年上だ。
髪は薄い金色で、目は黒く、肌はミリアたちと違って薄く黄色がかっている。身長は160ちょっとでやはり小さい。
その人がランベルトたちに話しかけた。
「やあ、ランベルト、生きててよかったよ。いくら俺たちより寿命が短いとはいえ、あんまり早すぎたんで驚いてしまったじゃないか」
「いや、わりぃな。いろいろあったんだ。でも、俺はまだ死ぬつもりはねぇから安心してくれ」
そう言って笑いあう二人。かなり仲がいいみたいだな。
ミリアが口をはさむ。
「ランポさん、今日からまた、改めてよろしくお願いします」
それに対し、ランポはまるで孫に話しかけるように言う。
「こちらこそよろしく、ミリアちゃん。そして、そのお嬢さんはミリアちゃんとの契約精霊様かな?」
なぜ一目で分かるのだろうか? そろそろ聞いてみようかな。
どう聞こうか悩んでいる間に、ミリアが答えた。
「はい、精霊のローです。ローは見学したいようだったので連れてきました」
当然だが、俺は一言もそんなことは言っていない。考えてはいたけども、エスパーミリアには関係のないことだ。
俺は定番となった「ローです」という挨拶だけをして、口を閉ざす。初めての人はどうしても緊張する。
そんな俺に、ニコッと笑いかけて、
「こんにちは、ロー様。私ランポと申します。以後お見知りおきください」
そう名乗った。
正面で見ると圧倒的紳士感を放っている。かっけぇ。
新たなタイプの人に興奮を隠せない。
そんな俺を三人は微笑ましく見つめていた。
何見とんねん。俺、いったいどんな顔してたんだか。
なんか恥ずかしくて居心地が悪いので、少し離れると、近くにベンチが有ったので、さらっと浄化して座る。
改めて三人の方を見たが、さすがにこっちではなく、向かい合って、今日の計画を立てていた。律儀なことですな。
暫くすると、ミリアは長い方の剣を抜き、素振りを始めた。横なぎにしたり、縦に振ったり、斜めに切りかかったり。見てて面白い。某緑の剣士のゲームを見ている気分だ。
俺はそんなミリアを見つめながら、在ることを思いついた。
剣にエフェクトを付けてみよう。
見た目は大事。振りの速さで色が白から黄色、そして赤に変わるようにした魔法を作る。試しに落ちている枝で試したが、うまくいきそうだ。
ミリアにその魔法をかける。
魔法をかけられたことに気が付いてか、ミリアがこちらを一瞬見たが、すぐに素振りを再開した。しかし、すぐに顔は驚きに変わった。
どっきり大成功!
薄い黄色のエフェクトが出た。速さは中の下って感じだな。腕を組んで頷いていると、
「なにあれ! すごい!」
隣から突然声がした。少し舌足らずな声だった。
声のした方を見ると、ベンチの後ろから身を乗り出してミリアの方を見つめる、一人の男の子がいたのだった。
ランポさんの容姿を後付け




