26.美少女に朝起こされるっていいよね
今日はとても過ごしやすい天気だったので、本日二話目です。注意されたし。
前回のあらすじ
ミリアたち家族が父親のランベルトと感動の再会を果たし、その間暇なローは逃げ出した。そこで己が食べた肉の生前の姿を見てしまったのだった。
おわり!
森の方に辿り着き、壁の上に昇る。小さな森だとは言っていたが、ここからでは端っこはすべて地平線に沈んでいる。生えている木は、東の森林とほとんど変わらず、特に面白いところはない。
しかし、東の森林ほどではないが、草原なんかよりは濃い魔力で満たされていて、少し気持ちがいい。魔力はほとんどない状態でも、しばらくなら大丈夫そうだが、あって損することはない。
深呼吸ってわけじゃないが、体内の魔力の入れ替えをしてみた。思っていた通り何も変わらないが、すっきりした気がしないでもない。
それから、どのくらい広いのか確かめようと空高く昇ってみる。ある程度昇ってていくと、あっさりと端が見えた。そして、そこには大きな川が流れているのが見える。
地平線までの距離は、高さが分かれば大体わかるんじゃなかったっけと思って、高さを調べようとしたんだが、この星の半径が分からない。無理そうなのであきらめた。
重力との比率からおよその数値を、とかも思ったけど、やっても大して得はないので、この世界の学者さんに任せましょう。
もしかしたら、実際に一周回ってみたほうが早く計測できるかもな。って、だからもうこの話はええねん!
自分の思考に突っ込みを入れてもしょうがないな。帰りましょい。
……なんか、割と迷った。ちゃんとミリアの家がどれか見てなかったからな。入ったときは寝てたし、どうしようもない。仕方がないので、例のクリオネもどきのところまで行って、そこから逆算して考えながら、何とか戻ってこれた。
今は10時くらいだろうか? 何も考えず動き回ってたので正確なところは分からない。ただ、夜に起きてまですることはないのか、ミリアの家には明かりが灯っていなかった。
俺もまた人間になって寝るか、と考えながら家の中に入った。
しかし、黒犬のランは起きていた。犬って夜行性だっけ? 少し前までオオカミだったのだから普通かもしれない。でも、昼に襲われたんだよね。
ちょっとランと遊ぼうかなって思って。再び顕現する。そういえば、「顕現」はやることの割には魔力の消費が少ないんだよな。同じ質量の糸を作ろうと思ったら、多分3~5倍の魔力を消費する。俺の魔法に無駄が多いということだろうか?
今度はきちんと服を着ている。さっきまでと同じ、ドレスみたいな服だ。正直、ジャージみたいのを作れないかなと思ったが、うまくいかなさそうだと思った瞬間に諦めた。ミリアにイメージしてもらって召喚してもらえば、簡単にできるようになると思う。それを当てにしよう。
ランを撫でて思い出したが、結局、ミリアはどっちのパンをランに食べさせたのだろうか。ランに聞いてみたが、当然返事はなかった。言うことは素直に聞くのにな。
撫でまくって満足した俺は、とりあえず俺が寝かされていた部屋に向かった。ランもついてきている。もしかしてだが、俺が帰って来たのに気が付いて、玄関近くにいたのだろうか? だとしたら、中々に良いやつだ。忠犬の称号を与えよう。
部屋のドアを開けてみたが、誰も居なかった。ここは来客用の部屋だったと勝手に理解しておこう。
サンダルを脱いでベッドに上がると、ランも勝手に床で丸まった。「おやすみ」と声をかけて俺は目を閉じた。
……。
「ロー、起きて!」
なんかデジャブ。ああ、昨日の夕方か。……もうひと眠りしよ。
「あー、もう。一回起こしたんだから、寝ないでください。勝手に人の家で寝てるくせに、ずうずうしいですよ」
またもやデジャブって言おうとしたのに、同じ言い方してくれないんだから。と、謎の八つ当たりをしながら起き上がる。
「おはよ、ミリア。ランもおはよ」
声を一人と一匹にかけた。昨日と同じようにミリアが横に立って、その隣にランがお座りしている。昨日と違うのは、ミリアが赤と白のチェック柄のパジャマを着ているってことだ。
眼福なり。
今は、こんな模様の服もあるのに、なぜ町の人の恰好は地味なのか、とかはどうでもいい。パジャマの文化を作った偉い人を手を合わせて拝む。
「いきなり意味が分からないことをしないでください」
偏見はよくないぞミリア。こういう宗教の人かもしれないじゃないか。戦争になるぞ。……って、これも偏見だな。
「これは寝起きで頭がすっきりしない時にやるおまじないだ」
適当なことを言っておいた。だが、
「おまじないって何ですか? やっぱり、意味がわからないですよ」
ミリアは呆れた顔をしている。もはやお馴染みの顔である。
魔法があるのでおまじないはないそうです。自己暗示について一から説明しろって感じですかね?
つい癖で頭を掻いた。髪はサラッサラだった。幼女なの地味に忘れてたぜ。
「まあ、何でもいいよ。それより、結局どうすることにしたんだ? 冒険者になるのか?」
お父さんが帰って来たので、冒険者になると決めた根本的な理由がない。だから、この後どうするか気になったのだ。
ミリアは少し恥ずかしそうに答える。
「それなんですけどね、急いで冒険者になる必要もないので、18までこの村で修業しようと思います。お父さんもいるので、教わることもできますし」
伏し目がちに、そして最後だけ上目遣いでこっちを見つめる。
「そっか」
俺はそれだけ言って黙る。
ここで居候してていいのか聞きたいが、仕事はしたくない。でも食べるものは食べたい。夜は寝たい。そんな欲望にまみれているせいで、俺の方が進路に悩むくらいだ。
「ローはどうしますか?」
先に言われた。
ミリアは、三年の間、俺が何をするのかこちらを窺っている。
……一つ思いついた。
「町に学校ってあるか?」
遊んで暮らせる身分と言ったら学生だろ。適当に話を聞いていれば生きていける。有り難い世界だ。
「え? 学校ですか? 話は聞いたことありますけど、ハーフエルフが行くような場所じゃないって聞いているので、あんまり詳しくはないですけど。ローは学者にでもなりたいのですか?」
そんなつもりは無い。ただ楽がしたかっただけだ。話の節々から香る、面倒臭さ。行ってもしょうがないな。ここは誤魔化しておく。
「いや、ふと疑問に思っただけだ。気にしないで」
ミリアはそんな俺をいぶかしげに見つめる。嘘が顔に出てたのかもしれない。そもそも、そうじゃなくてもエスパーだから誤魔化しが利かない。諦めて白状する。
「学校って楽そうなイメージがあったからさ。あはは」
ミリアは一応納得したようだ。可哀そうな人を見る目だった。
心が痛い。
ミリアは、
「まあ、決まったら言ってください。お母さんも、ローのことは気に言ってくれてるみたいですから、食べ物をくれないってことはないでしょう」
やっぱり全部バレてる感じだ。エスパーミリア怖い。
さて、何かいい案はないだろうか。腕を組んで考える。しかし、胸は邪魔だった。
誤字と表現修正したす。残ってたら嘆く。
……残ってた、サブタイトルが27になってた。




