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精霊生活に安息を  作者: 鮭ライス
ミリア現る
28/80

26.美少女に朝起こされるっていいよね

今日はとても過ごしやすい天気だったので、本日二話目です。注意されたし。


前回のあらすじ

 ミリアたち家族が父親のランベルトと感動の再会を果たし、その間暇なローは逃げ出した。そこで己が食べた肉の生前の姿を見てしまったのだった。

おわり!



 森の方に辿り着き、壁の上に昇る。小さな森だとは言っていたが、ここからでは端っこはすべて地平線に沈んでいる。生えている木は、東の森林とほとんど変わらず、特に面白いところはない。

 しかし、東の森林ほどではないが、草原なんかよりは濃い魔力で満たされていて、少し気持ちがいい。魔力はほとんどない状態でも、しばらくなら大丈夫そうだが、あって損することはない。

 深呼吸ってわけじゃないが、体内の魔力の入れ替えをしてみた。思っていた通り何も変わらないが、すっきりした気がしないでもない。


 それから、どのくらい広いのか確かめようと空高く昇ってみる。ある程度昇ってていくと、あっさりと端が見えた。そして、そこには大きな川が流れているのが見える。

 地平線までの距離は、高さが分かれば大体わかるんじゃなかったっけと思って、高さを調べようとしたんだが、この星の半径が分からない。無理そうなのであきらめた。

 重力との比率からおよその数値を、とかも思ったけど、やっても大して得はないので、この世界の学者さんに任せましょう。

 もしかしたら、実際に一周回ってみたほうが早く計測できるかもな。って、だからもうこの話はええねん!

 自分の思考に突っ込みを入れてもしょうがないな。帰りましょい。




 ……なんか、割と迷った。ちゃんとミリアの家がどれか見てなかったからな。入ったときは寝てたし、どうしようもない。仕方がないので、例のクリオネもどきのところまで行って、そこから逆算して考えながら、何とか戻ってこれた。


 今は10時くらいだろうか? 何も考えず動き回ってたので正確なところは分からない。ただ、夜に起きてまですることはないのか、ミリアの家には明かりが灯っていなかった。

 俺もまた人間になって寝るか、と考えながら家の中に入った。

 しかし、黒犬のランは起きていた。犬って夜行性だっけ? 少し前までオオカミだったのだから普通かもしれない。でも、昼に襲われたんだよね。


 ちょっとランと遊ぼうかなって思って。再び顕現する。そういえば、「顕現」はやることの割には魔力の消費が少ないんだよな。同じ質量の糸を作ろうと思ったら、多分3~5倍の魔力を消費する。俺の魔法に無駄が多いということだろうか?

 今度はきちんと服を着ている。さっきまでと同じ、ドレスみたいな服だ。正直、ジャージみたいのを作れないかなと思ったが、うまくいかなさそうだと思った瞬間に諦めた。ミリアにイメージしてもらって召喚してもらえば、簡単にできるようになると思う。それを当てにしよう。

 ランを撫でて思い出したが、結局、ミリアはどっちのパンをランに食べさせたのだろうか。ランに聞いてみたが、当然返事はなかった。言うことは素直に聞くのにな。


 撫でまくって満足した俺は、とりあえず俺が寝かされていた部屋に向かった。ランもついてきている。もしかしてだが、俺が帰って来たのに気が付いて、玄関近くにいたのだろうか? だとしたら、中々に良いやつだ。忠犬の称号を与えよう。

 部屋のドアを開けてみたが、誰も居なかった。ここは来客用の部屋だったと勝手に理解しておこう。

 サンダルを脱いでベッドに上がると、ランも勝手に床で丸まった。「おやすみ」と声をかけて俺は目を閉じた。




 ……。


「ロー、起きて!」


 なんかデジャブ。ああ、昨日の夕方か。……もうひと眠りしよ。


「あー、もう。一回起こしたんだから、寝ないでください。勝手に人の家で寝てるくせに、ずうずうしいですよ」


 またもやデジャブって言おうとしたのに、同じ言い方してくれないんだから。と、謎の八つ当たりをしながら起き上がる。


「おはよ、ミリア。ランもおはよ」


 声を一人と一匹にかけた。昨日と同じようにミリアが横に立って、その隣にランがお座りしている。昨日と違うのは、ミリアが赤と白のチェック柄のパジャマを着ているってことだ。

 眼福なり。

 今は、こんな模様の服もあるのに、なぜ町の人の恰好は地味なのか、とかはどうでもいい。パジャマの文化を作った偉い人を手を合わせて拝む。


「いきなり意味が分からないことをしないでください」


 偏見はよくないぞミリア。こういう宗教の人かもしれないじゃないか。戦争になるぞ。……って、これも偏見だな。


「これは寝起きで頭がすっきりしない時にやるおまじないだ」


 適当なことを言っておいた。だが、


「おまじないって何ですか? やっぱり、意味がわからないですよ」


 ミリアは呆れた顔をしている。もはやお馴染みの顔である。

 魔法があるのでおまじないはないそうです。自己暗示について一から説明しろって感じですかね?

 つい癖で頭を掻いた。髪はサラッサラだった。幼女なの地味に忘れてたぜ。


「まあ、何でもいいよ。それより、結局どうすることにしたんだ? 冒険者になるのか?」


 お父さんが帰って来たので、冒険者になると決めた根本的な理由がない。だから、この後どうするか気になったのだ。

 ミリアは少し恥ずかしそうに答える。


「それなんですけどね、急いで冒険者になる必要もないので、18までこの村で修業しようと思います。お父さんもいるので、教わることもできますし」


 伏し目がちに、そして最後だけ上目遣いでこっちを見つめる。


「そっか」


 俺はそれだけ言って黙る。

 ここで居候してていいのか聞きたいが、仕事はしたくない。でも食べるものは食べたい。夜は寝たい。そんな欲望にまみれているせいで、俺の方が進路に悩むくらいだ。


「ローはどうしますか?」


 先に言われた。

 ミリアは、三年の間、俺が何をするのかこちらを窺っている。


 ……一つ思いついた。


「町に学校ってあるか?」


 遊んで暮らせる身分と言ったら学生だろ。適当に話を聞いていれば生きていける。有り難い世界だ。


「え? 学校ですか? 話は聞いたことありますけど、ハーフエルフが行くような場所じゃないって聞いているので、あんまり詳しくはないですけど。ローは学者にでもなりたいのですか?」


 そんなつもりは無い。ただ楽がしたかっただけだ。話の節々から香る、面倒臭さ。行ってもしょうがないな。ここは誤魔化しておく。


「いや、ふと疑問に思っただけだ。気にしないで」


 ミリアはそんな俺をいぶかしげに見つめる。嘘が顔に出てたのかもしれない。そもそも、そうじゃなくてもエスパーだから誤魔化しが利かない。諦めて白状する。


「学校って楽そうなイメージがあったからさ。あはは」


 ミリアは一応納得したようだ。可哀そうな人を見る目だった。

 心が痛い。

 ミリアは、


「まあ、決まったら言ってください。お母さんも、ローのことは気に言ってくれてるみたいですから、食べ物をくれないってことはないでしょう」


 やっぱり全部バレてる感じだ。エスパーミリア怖い。


 さて、何かいい案はないだろうか。腕を組んで考える。しかし、胸は邪魔だった。


誤字と表現修正したす。残ってたら嘆く。

……残ってた、サブタイトルが27になってた。

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