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精霊生活に安息を  作者: 鮭ライス
プロローグ 東の森林
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2.東の森林

 

 森への侵入者を撃退し、エストイア(様)に報告した後、俺は南側へと戻っていた……できるだけゆっくりと。


 この森は、人間やほかの精霊たちから「東の森林」と呼ばれていて、端から端までの最も長い距離で、100キロメートルほどだ。大きいように感じても、意外とそうでもなく、このくらいの規模の森はこの世界でなくても割とよくある。だったら何故、東の森林なんて呼ばれているかというと、単純に神木があるからというだけだ。神木には大地に沈んだ魔力を引き上げる役割があり、この大陸にあるのはこの東の神木のみである。だからこそ、この森林は世界的に見ても、かなり重要なものとなっている。

 ちなみに、神木でなくとも植物は地面にある魔力を引き上げる役割がある。しかし、ただの植物ではすぐ近くの地表から吸い上げた魔力を体内に運ぶのみであり、神木は眷属の森の地下十数キロメートルから吸い上げて、空気中にまで拡散させるという違いがある。


 森の周辺は草原、人間の農地、海、山に囲まれている。大雑把に説明すると、北西が草原、西から南西が農地、南が海、東から北が山という感じだ。だから、この森をより大きくするには北西の草原地帯に拡張するしかない。ただ、北西方面も草原が途中から砂漠になっているので、そこが限界だろう。

 森林の拡張は木の精霊の仕事なので、そのうち俺もやらされるらしい。


 メンドイな。


 まあ今から先のことまで面倒臭がってても仕方がない。ここは少しやる気先生に頑張ってもらおう。


 うーむ、さて何かしようか。

 今は移動中だしあと二分もすれば持ち場に戻れる。そうなったらまた、働かなくてはならない。パトロールには周辺警戒用に感覚強化の魔法を常に使うから、だいぶメンドイ。そもそも、精神体である精霊は魔法以外での移動方法が存在しないから、今も移動するのに空気中に魔力の風を起こし、それに乗るイメージで移動している。流石にこの世界に来て一月もたったので、慣れたから無意識でできるけど。

 何か面白いことは……ってこの世界魔法あるんだった。魔法でゲームとかの必殺技とか再現してみるか。

 なぜ思いつかなかったのか。


 忙しくてそれどころじゃなかったってことでオナシャス。


 森で移動するって言ったらあれだな。

 魔力で糸を作る。長さは……20メートルもあればいいかな? 片側の先は任意にくっ付けたり離したりできるように粘着質にしておく、そして作った糸をホースみたいにぐるぐると巻いておく。もう一個同じのを作ったら体の横にセットして完成だ。ものの数秒でここまで出来てしまって、正直驚いている。

 ふむ、どうせなら見た目もカッコよくしたいけど。まあいいか。

 今の状態だと。精霊が見えない存在からしたら空気中に2対の糸の塊がふよふよと浮かんで見えることだろう。


 さて、何を作ったかわかるかな? アレだよアレ、立体機動的なアレ。駆逐しそうなアレ。

 魔法じゃなくて悪かったな。


 早速、目の前の左右の木に向かって発射だ。重力なんぞ精霊にはほとんどかからないから射出先は水平方向に向ける。

 スルスルと飛んでいく糸。左右ともに、ほぼ同時に着弾する。


 巻くぞおお!


 シィィィと音を立てながら意図を巻き込んでいく。後は、タイミングよく糸の先を木から離すだけだ。


 今だ!


 ……あれ?

 音もなくすっと止まる俺の体。

 失敗してもちょっとくらい進んでも良くない?

 今更だけど、慣性仕事してなくない?


 ちょっと、慣性さんや。俺でも仕事してるのに、なんであなたが休んどるんですか?


 初の試みは失敗に終わったのだった。






 働くならせめて冒険してみたい。男の子だもん。

 この森から出ることもさせてもらえず、ただひたすらに命令道理の仕事をこなす。さすがに疲れた。肉体がないから疲れないはずでも疲れた。精神的にも疲れはないはずだけど疲れた。

 この森にも時々魔物が出現する。この世界では有り余る魔力が体に流れ込んだ時に肉体が崩れて魔物へと変貌する。だから魔力のあふれるこの森では比較的よく魔物が出現する。出現した魔物が悪さをしない限りは、神木も無視する。ただ、木々を傷つけたり、食べきれない、蓄えられないほどの他の動物を殺したりしていると、力のある精霊に対して、討伐するように命令が下される。


 何が言いたいかって、魔物がいるんだよ。つまり、冒険者とかダンジョンとか魔王とかいてもおかしくないじゃん。ロマンにあふれてるはず。

 なのにぃ。

 なんだよこれ。日本で社会の歯車やってるほうがまだマシだよ。あれからさらに一週間が経ったのに神木の近くで魔物騒ぎが起きた以外何もしてないよ。ずっと南のパトロールだよ。近くは海だから一番なんもないんだよ。暇なのに忙しいってなんだよ。意味わかんねぇよ。

 まーだ40日くらいしかたってないけど、もう考えるのをやめてもいいころだと思うの。死にたくても死ねないし(笑)。


 そういえば、この世界の一日は地球とほぼ同じ24時間程度だ。宇宙も在るんだろうか? でも、一年は360日らしい。なんでも180日ごとに太陽が近づいたり離れたりしてるらしい。公転軌道がよりつぶれた楕円になってるってことかな? 地軸がずれてないとしたらの話だけど。その場合は、赤道のあたりは一年中灼熱の地ってことになるんかなあ? だけどそもそも、この世界も惑星であるとは限らないし。

 うーん。考えても無駄かぁ。証拠が足りない。そのうち天体観測でもしてれば分かるかな。やらないけど。


 はっ。大分話がそれてたな。まあ気分だけでも冒険気分を出すために、BGMでも流すか。……流すといっても口ずさむだけだが。


「たたたたーん、たたたーん、たたたーん、たたたん、たんた、たたたたーん、たたたたーん……」






 なぜか僕の好きなゲームのBGMが聞こえてくる。

 僕の名前は堀田陽人(ほったはると)、16歳だ。今は、ある事情で僕は、大陸の東端にある町に行くために東の森林を抜けようと歩いていた。森を抜けた先の山脈を迂回するため、南側の一応使われていなくもない街道を通っていた。半分以上森に囲まれていて、馬は通れても馬車には狭すぎる気がする。

 つい一か月と少し前まで普通の高校生だった。学校からの帰り道で片側にしか歩道がない、あまり大きくない道路で反対側を歩いてる人がいたんだ。僕が歩道のある道路の右側にいるから、その人も一応右側だったけど、普通の人なら歩道を歩くと思う。何故なら、反対側は白線の外はすぐガードレールと川があるような、少し危ない場所だからだ。その人はたぶん変わってたんじゃないかな。

 そしたら、僕の進行方向からからふらふらと走ってくるトラックが見えたんだ。飲酒運転だろうか? 僕がナンバーを覚えて警察に連絡しようか迷っていると、そのトラックは僕の横を抜けて走り去ってしまった。すると、うしろから「ゴンッ」と鈍い音がした。咄嗟に振り返ると、さっきの人が仰向けに倒れていて、その更に後方では、さっきのトラックが逆走していた。


 轢き逃げだ。


 そう思った。さっきの人の周りには血が広がっている。何か応急処置が出来ないかとその人のそばまで走って近づいた。けど、それをする前に目の前が真っ白に光ったと思うと、なんやかんやあってこの世界に呼ばれたのだ。


 元の世界には帰れないと聞いていた。しかし今、元の世界の…日本への手がかりとなりそうなことが起こっている。なんとしてでも音源を見つけなくては。僕は覚えたばかりの感覚強化を使い、音源を探すことにした。

早くもネタ切れ感がある。気にしたら負け。

計算すればわかるけど、ローの最高移動速度は音速超えてる。

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