12.ミリア、死す
メインタイトル変えました。
「精霊生活に安息はない」→「精霊生活に安息を」
今回は、ちょっと(サブタイとは別の意味で)刺激の強い内容かと思います。
用心してお読みいただければ、問題ない程度ですので、ご注意を。
夜になった。
出発したのがお昼過ぎだから、四時間くらい歩いた。
寄り道はしてないけど、何度も立ち止まったりしてるし、そもそも森の中っだから歩きにくいしで、まだ半分も進んでいない。
ミリアも、ハルトが持っていたのと同じテントを持っていた。だけど、ハルトと違って大分荷物を圧迫していて可哀そうに思えた。あいつはホントにチートだな。
ミリアに、アイテムボックスについて尋ねてみたのだが、
「あいてむぼっくすですか? うーん、名前的に多分、なんか強い鉄槌です」
そもそもミリアは、あんまりものを知らないので聞いた俺が馬鹿だったかもしれない。ってあれ? 名前は《収納》だっけか? まあ何でもいいか。
「なんか強いってなんだよ」
「こう、叩いた相手をなんか良い感じに痛めつけてくれる、っていう感じ」
「一度で二度叩ける感じかな?」
「大体そうです」
何とも言えない性能だな。さしずめ、ハヤブサの槌ですかね。
とまあ、こんな感じで、ミリアは知らないようだ。《収納》は、広く知られているものではないと言えなくもないだろう。……やっぱり、ミリアの知識は当てにならないから、町に着いたら誰かに聞いてみたい。
ハルトの時と同様に、木の実を取って戻ってきてみたら、ミリアがすごいものを食べようとしていた。
美しき丸みを帯びた直方体のボディを持つそれは、カロリイメイトそっくりだった。
「なあ、ミリア。その四角の奴は何だ?」
ミリアは、カロリイメイト(仮称)を持って、
「これですか? これはパンですよ」
「……乾パンってことか?」
「カンパンじゃなくてパンですよ」
……パン、らしい。カロリイメイト(仮称)ではなく、パンなのである。
「……いや、パンはさすがにもう少し柔らかい見た目をしている」
「んー? そういえば、街で見かけたパンはみんな丸い形をしてましたね」
そう言って、パン(?)をガリッと齧る。
そのガリッという音は、カロリイメイトなんてもんじゃなく、分厚いせんべいかよってほどの音だ。
そのままバリバリと咀嚼して、飲み込む。案外、一周回っておいしいのかもしれない。ハルトのパンはまずそうだった。そして、ミリアはとても満足そうな、幸せそうな顔をしている。つまりはそういうことか。
一本食べ終えるまでの間、茫然と見てしまった。
はっ!? いけない、木の実持って来たんだった。ハルトに毒見させた奴だ。
ハルトはグミがどうのと言っていたが、これはもぎもぎフルーts(略)ではない。しいて言うなれば、見た目的にサクランボだ。
「これ取ってきたんだが、食べるか?」
「おー、いただきます。これってどんな味ですか?」
「食べたことはないから知らないな」
それもそうですね、と言って無警戒に口に運ぶ。毒見してあるから大丈夫ではあるけど。
「おお! あまい!」
そう言って、次のパンを食べる前に、持って来た分を一気に食べつくした。早い。
ハルトは特に何も言ってなかったけど、甘い果物なようだな。
「……ちょっと食べてみたくなってきた」
おっと、つい声に出てしまった。
「顕現すれば食べられるんじゃないですか?」
ミリアがそう言った。
「顕現?」
ミリアは俺の声を聴いて少し驚いて、すぐにハッとしてにやにやした顔になる。
「ローは赤ちゃんだから何も知らないんですね」
今のは少しイラッと来た。我慢するけど。
顕現の意味くらい知っとるわい。そんな方法に思い至っていなかっただけだ。
「できるのか? やったことないけど」
「そんなの私にはわかりませんよ。自分のことなんですから聞かないでくださいよ」
ミリアはまだニヤニヤしている。
要するに、食べることができる体を作ればいいんでしょ。簡単……なわけない。糸はすぐに作れるけど、それだと味が分からないし、第一に葉っぱカッターだってできるようになるまで、これでも半日くらい練習してたんだぞ。葉っぱはうまく作り出せなかったし。体を作るのは、今の俺だと最低でも一月はかかるだろう。
そうやって悩んでいる俺に気づいているのかいないのか、ミリアが言う。
「実はですねー。一つだけ方法がないこともないんですよー?」
ニヤニヤしたまま、やれやれと言いだしそうな口調でそう言う。
ぐっ、執拗に煽ってきやがる。だがここで断ったところで、後々体が欲しくなることが有るかもしれない。ここは苦渋を飲むしかない。
「教えてください」
途端に勝ち誇ったような表情になるミリア。こうなることはわかっていた。だがムカつく。
「しょーがないですねぇ。簡単なことですよ。私が精霊召喚をするだけのことです」
徐にそういうミリア。
言ってる感じだと、確かに簡単そうだ。だが、ミリアは精霊召喚をしたことが有るようには思えない。加えて、あのミリアであるから、成功する気がしない。
それでも、わざわざ頭を下げたのだ。ここで引き下がるのはもったいない。失敗したときは盛大に笑ってやろう。
「お、お願いします」
「んー、それが人にものを頼む態度ですか? 下げる頭はないにしても、せめて地面に這いつくばるくらいのことはしてくださいよ」
こいつはドSか。なんでこんな知識があるんだよ。天然のSなのか? そうなのか?
だが、ここまで言うんだ。よほど自信があるに違いない。まさか失敗するわけがない。もし失敗したら、縛り上げて二度とそんな口がきけないようにいたぶってやる。……くすぐりで。r-15だから、妥協しても仕方がない。
俺はゆっくりと地面まで下りて、
「精霊召喚をお願いします。ミリア様」
それを聞いたミリアは、とても満足そうな顔で、さらにその顔を紅潮させている。
うん、確実にSですね。先に言っておくが、俺はMではない。ノーマルだ。異論は認めない。
突然、ミリアが顔に右手を持って行く。そして、
「ぷっ、アハハハハハハ」
そう大声で笑いだす。その声は、俺への嘲りが多分に含まれている。
「フフッ、精霊使いに今日なったばかりの私が、練習してもいないのに、精霊召喚なんてできるわけがないでしょう。アッハハハ」
おーう、カチンと来ちゃいましたよ。これはもうお仕置きするしかないよねぇ。そうだよねぇ。
一気に大量の糸を生成する。そして、強度が増すように何本かをまとめてねじっていく。
それを見たミリアは驚愕に目が見開かれて顔は真っ青になっており、さっきまでの俺への嘲笑はどこにもない。きっと、彼女の目には、いくつもの糸が邪悪なオーラのように立ち上って見えるであろう。
「ちょっと、待って! 待った待った! 嘘だから! 召喚できるから! やめて! それをしまって、ね?」
慌ててそんなことを言っているが、知ったことではない。俺をここまで怒らせておいて、助かるだなんて思っていたようだが、甘い。ここ数年は怒った記憶がない俺を怒らせたのだ。その恐怖、たっぷりと味合わせてあげよう。
「だから、召喚できるんだって。ちょっとした悪ふざけなんだってば。やめっ――」
できた糸を、一斉にミリアに向け、捕獲する。まず腕を、足を縛り無理やり立たせて木に縛り付ける。捕縛や緊縛の仕方なんて知らないから、逃げられないようにただしっかりと縛ってある。正しく縛ると、痛くなく、かつ抜け出しにくくなると聴いたことが有る。それをしていないので、
「痛い! ごめんなさい! 私が悪かったから。ホントに痛いの。ゆるして、お願い」
その顔は既に泣きそうである。いや、頬には一筋の滴の跡がある。
そんなことお構いなしに、俺はラリの時に作った糸筆を再び作る。
多少動く首をぶんぶんと横に振って、謝り続けるミリア。
その夜。少女の絶叫が、東の森林にこだましていた。
表現の修正をした




