92話 こちら側からすればこういう悩みもあるのです
「信用出来る?」
「分かりません」
質問にミノリははっきりと答えた。
「ですが、仕事はしっかりやっています。
私の事も、邪険にするといった事もありません。
思惑はあるかもしれませんが、誠実であろうとしてるように見えます」
「なら大丈夫かしら?」
「モンスター退治については。
あくまでその部分でしか意見は言えませんが」
「それだけで十分よ」
カナエは笑みを浮かべる。
「それ以上は期待できないし。
されても困るでしょうから」
「そういうものでしょうか?」
「さあ?
でも、冒険者ですもの。
仕事以上の事は求められないでしょう。
彼等は彼等の領分以上の事はしないものだし」
「はあ……」
「あなたのような武家の者とは違うわ」
割り切った考えを示しつつ、カナエは自分に言い聞かせた。
「所詮は仕事でしか動いてくれない人達よ。
善意にすがるのは虫が良すぎるわ」
「今の彼等は、職分を超えて働いてると思いますが」
「彼等の利益にもなるもの。
励むのは当然よ。
でも、危険が自分達の手に終えない程になったらどうかしら」
「それ以上は無理だという事ですか」
「ええ、そうよ。
彼等にそれ以上を要求できないわ。
あくまで彼等は仕事としてモンスターを倒してるのだから。
あなたのように、忠誠を求めるわけにはいかない」
そこが武家と呼ばれる者達と冒険者の違いである。
王家や貴族に使える戦闘集団である武家。
彼等は統治者達から禄を与えられる代わりに武力を持って奉仕する。
生まれついての職業軍人であり、命令には従う事が求められる。
例え死ぬと分かってる作戦であっても、それには従わねばならない。
無論、そうそう死を求めらるような任務など与えられないが、それだけの覚悟が求められる。
だからこそ、戦乱のない平時であっても禄を与えられて養われている。
一方で冒険者は生活の手段としてモンスター退治を行ってる。
自発的にそれを行ってる場合は、彼等に命令する事は出来ない。
雇ってる間は多少は無理強いも出来るが、それも武家ほど絶対的なものではない。
無謀な事を要求されれば反発もされる。
極端な話、契約不履行による違約金を支払ってでも拒否する事が出来る。
それだけに冒険者に仕事を依頼する事は難しい。
無理や無謀な事は絶対に引き受けないのが基本なのだ。
時と場合によっては例外も発生するが、それが常態という事は絶対にない。
そこに武家との違いがある。
だからこそ、使う側としても無理は出来なかった。
「今回の事も、どこまで請け負ってくれるか分からないし」
「やはり難しいでしょうか」
「そうそう無茶は出来ないわね。
それ程無理を言うつもりもないけど」
カナエとしても出来る範囲でのお願いに止めるつもりではある。
だが、現状ではそうそう無茶も出来ない。
今のところカナエ達が提供してるのは寝床と食事くらいである。
それだけで無茶な指示を出すわけにはいかない。
モンスター退治は確かに行われてるが、それは冒険者が稼ぎを得る為に自主的にやってるようなものである。
もちろん寝床や食事の提供も、モンスター退治をするのを前提にしたものではある。
だが、その主導権は冒険者にある。
どこの方面に向かい、どの程度のモンスターを倒してくるかは冒険者の意志によって決められていく。
村からの要望として、村の近辺の防衛もお願いはしてるが、せいぜいそれくらいしか要求は出来ない。
この先、危険な作業に従事してもらうならば、相応の報酬を用意するしかない。
そこまでの余裕は無い。
税収は格段に上がってきているが、それでもまともに依頼を出すとしたら全然足りない。
「どうにかして、あの方々の利益と一致する所を探さないとね」
なるべく費用をかけず、なおかつ冒険者にも仕事をしてもらう。
そんな虫の良いことを考えていく。
成功率は低いと思うが、無理だとは思っていなかった。
今の条件でも冒険者はこの村に逗留し続けている。
モンスターを倒して稼ぎが得られるからだ。
(そのあたりを上手く組み合わせる事が出来れば……)
カナエはそのあたりに道がないかと思っていた。
それほど間違ってもいない。
実際、この後にヨシフミやハルオミにかけあった所、ほぼ無報酬で彼等は作業中の護衛などを受けおう事になる。
カナエはあまりの事に拍子抜けし、そして呆気にとられた。
本当にそれで良いのかと思って。
だが、さすがにそれだけという事もなかった。
「代わりに、完成した場所を利用させてくれ。
モンスター退治の拠点にしたい」
それが条件だった。
なるほどと思った。
「分かりました。
モンスター退治に利用するなら、施設を解放出来るよう家に掛け合います」
カナエもそう条件をつけた。
モンスター退治をするならばと。
それが以外での利用は認めないという事を。
また、確実に承諾するとも言っていない。
あくまでカナエは、領主である父などに掛け合うとだけ言っている。
実際にどうなるかは分からない。
これはカナエに決定権がないから仕方が無い事でもある。
「しょうがねえな。
決まったら手伝うよ」
ハルオミもそう言って応じた。
決まるまで何もしないと。
当面はそれで十分である。
すぐに何もかも決まるわけがないのだから。
それまでは、いつも通りにモンスター退治に邁進していく事になった。
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「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
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