90話 やはりそれなりの事情があるようで
「それがそうもいかないんです」
会合が終わったあとにあらためて呼び出されたヨシフミが聞いた言葉である。
「以前であればこれで良かったのでしょうが。
もう、そんな余裕もありません」
「なんで?」
「十数年前、砦が一つ陥落しました。
その事はご存じで?」
「この山の向こうにあったってやつか?」
「はい。
その砦が崩壊したために、モンスターの流入量が上昇しました。
幸い、冒険者の方々が多数集まった事で、それらにも一定の歯止めがかかっていますが」
「大手が大量に参入してるってあれか。
でも、それってこっち方面じゃないんじゃ」
「ええ。
モンスターが進んで行く直接の侵攻経路ではありません。
もっと通りやすい平野の方を通ってきています」
「それがどう関係してくるんだ?」
「崩壊した砦の先から、こちらに向かってくる経路もあるのです。
ほとんど使われてませんが、少しずつ数は増大しています」
「…………」
ヨシフミは絶句した。
「じゃあ、この先モンスターがこっちに増えてくるって事か?」
「はい。
確実にそうなるとは言えませんが、傾向としてはそうなっています。
この調子でいけば、遠からずこちらの方面もモンスターであふれかえる事になるでしょう」
「いつ分かったんだ?」
「ここ最近です。
モンスターとの遭遇が多くなってるという報告があがっていたので。
各方面に問い合わせ、実際に調査団も派遣しました。
その結果です」
「だから、急いでモンスターを防ぐ拠点を作ると?」
「ええ。
いつモンスターの動きが活発になるか分かりません。
出来るだけ急がないと」
言葉と表情に決意を浮かばせる。
そんなカナエを見て、ヨシフミは絶望的な気分になっていった。
言ってる事の重大さを考えて。
(やるしかねえよなあ)
先々の事を考えれば避けては通れない。
モンスターが押し寄せれば自分達の居場所もなくなる。
安全な場所に逃げれば、というのは通用しない。
そうやって後退を重ねて来たのが人類である。
この数百年、版図は縮小していく一方であり、回復はほとんどなされていない。
もしここでモンスターの突破を許したらどうなるのか。
この地域一帯に今まで以上の数のモンスターが出てくる事になる。
そうなったら稼ぎが幾らだとか言う事も出来なくなる。
生きるか死ぬかのどちらかだ。
生存と滅亡と言った方がより正解に近い。
しかも、そうなるまでそれ程時間もかからないようだ。
かなり切迫してきている。
命は惜しいが逃げるわけにはいかない。
(やるしかないか)
幸い、レベルは上がってきている。
その分、危険は今までより減っている。
作業を進める間にもレベルは上がるだろうから、手間は更に減るだろう。
これからが厳しくなるのは確かだが、こなせる力はついていく。
捕らぬ狸の皮算用であるが、期待出来る将来の姿を考えればどうにかなりそうではあった。
(あとはあいつらにも説明しないと)
仲間に何も言わない、というわけにはいかない。
すぐに行われるわけではないが、いずれ実施される事である。
事前に話せる事は話しておきたかった。
カナエもできるだけ仲間に話しておいて欲しいと言われている。
直前になって話しても動揺するだけだろうとの事だった。
本格的に物事が始まるまでに、なるべく多くの者の意思を統一しておいてもらいたいのだろう。
考えがバラバラでは行動もまとまらない。
そうならないように事前に調整しておけという事だと考えられる。
面倒だがやるしかない。
おそらく拒否はしないだろうからそれほど手間でもないのが救いだ。
(さて、どう切り出すか)
考えながら宿舎に帰っていく。
ちょっと考えてる事を活動報告に書いてます。
こちらの話もよろしく
「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
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「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
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