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【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その1

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9話 何をどうすれば良いのか教えていく事も主のつとめ……なのだろう、たぶん

「でも、本当にこの子を連れていくのか?」

 オッサンは心配そうに尋ねてくる。

 気持ちは分かるが、「しょうがないだろ」とこたえるしかない。

「他に人手がいりゃあ俺も考えるけどさ。

 今はこいつしかいねえ」

 そう言うとオッサンは言葉を控えた。



 言いたい事はありそうだったが、さすがに口を挟む筋合いでない事は理解していた。

 ただ、ヨシフミを引き留めはしないが別の方面からの提案はしてくる。

「だったらさ、一緒にいく奴をみつくろってやろうか?

 すぐには出てこないだろうが」

「そうしてくれると助かるよ。

 人手は多い方が助かるし」

 期待はしないが、そうしてくれるならありがたかった。

 そんな簡単に見つかるとは思ってなかったが。

 何せ、一緒にいく奴が見つからなかったから奴隷を買ってでも、という事になったのだ。

 今更オッサンが頑張ったところで、簡単に同行者が見つかるとは思えなかった。



「ま、レベルはともかく、信用出来る奴を連れてきてくれ。

 でないと、こっちも安心できねえ」

「分かった、何とか見つけてみるよ」

 心許ない言葉だった。

 それでも、嘘や誇張がないだけ良い。

 出来ない事は出来ないとはっきり言ってもらった方が、変に期待をかけるよりは良い。



「で、他に要望はあるか?」

「特にないかな。

 この際、新人でもいいよ。

 一緒にいく気力があればね。

 モンスター相手にびびらなければ最高だ」

 本当に最低限の要望である。

 だが、それくらいハードルを下げないといけない程、ヨシフミの方も切羽詰まってる。

 あと一人、戦闘が出来る奴がいればそれだけでも助かるのだ。

 腕前は、この際問うことは出来なかった。

 口にしないそのあたりの事情も理解してるオッサンは、

「分かった」

と短くこたえた。



「それよりも、武器とか防具を揃えてくれ。

 こいつに持たせなくちゃならないから」

「そうだな」

 言われてオッサンはアヤの方を見る。

「少々大きめになるが、幾つか見合いそうなのがある。

 それを持ってくる」

「おう」



 仕事柄、周旋屋には様々な中古品がある。

 武器や防具もその一つだ。

 新しい物を手に入れて使わなくなった古い物などが大半である。

 希に遺品もあったりするが、それを気にするような者はまずいない。

 験を担ぐ者も中にはいるが、使えるなら何でも使うという者の方が多い。

 そんなわけで玉石混合な中古品であるが、希にそれなりに良品も残っていたりする。

 こればかりは運になる。

 オッサンが持ってきたものは、そういう意味では割と良品であった。



「どうだ」

「へえ……」

 渡された短剣を鞘から抜いてみる。

 使い込まれた感はあるが、だからといって不良品というわけではなさそうだ。

 古くなった柄を交換し、刃に油を塗ればまだ使えそうである。

 多少錆は浮かんでいるが、使っていれば付着する程度のものだ。

 研ぎに出せばどうとでもなる。



 防具の方もそこそこだった。

 革製のベストに兜型の革帽子。

 そして、革の籠手と脚甲。

 戦闘をするには心許ないが、ちょっとした怪我などから身を守るには十分である。

 彼女が共に戦闘をする事は無いだろうし、させるつもりもない。

 だが、モンスターがこちらの事情を斟酌するわけもない。

 最低限の防備と武器は必要だった。

 それらをとりあえず身につけさせて具合を確かめる。



「動きにくいか?」

「大丈夫……だと思います」

 とはいえ、本当に大丈夫なのかは分からない。

 実際にやってみないと分からない事はある。

 そんな事態になったら、もう終わってると言えるが。



「まあ、上手く着れれば何とかなるだろ。

 明日、実際にやってみて確かめてみよう」

「明日?」

「ああ。

 町の周りでネズミ狩りだ。

 最低限の事をそこで身につけてくれ」

 実地訓練である。

 本格的に町の外に出る前に、少しばかり練習をこなす事になる。

 さすがに練習もしないで連れていくわけにはいかない。



「今日はある程度の身のこなしと、その練習。

 明日はそれを試しにいく。

 いいな?」

 もう少し猶予を与えてあげたかったが、財政事情からしてそうはいかない。

 本当なら明日にでもモンスター退治に出向きたいくらいである。

 だが、あえて数日を練習に費やす事で今後の危険を下げておきたかった。

 少しでもアヤの生存率を上げる為に。

 ひいてはヨシフミの仕事の成功率を上昇させるために。

 ここで少し損をしてでもやり方を教えておく事は、そこに繋がるはずだった。

 何も知らないで事におよぶのと、多少なりとも知識があるのとでは大きな差になる。



 アヤも、「はい」とこたえる。

 彼女の場合、逆らう事が出来るわけもないのだから当然ではあるが。

 それでも、やらねばならない事は彼女にも理解出来ている。

 頷いた理由の半分は奴隷としての刻印による強制力もあろう。

 しかし、もう半分はやらねばならない仕事のための義務感でもある。

 これから自分が食っていくには、こういう仕事をするしかないという事を朧気ながら悟っているのだ。



 妥当と思える装備一式を決めて金を払う。

 中古という事で値段は安いが、修繕にそれなりに金がかかる。

 自分でやった方が時間はかかるが安くつくのだが、それをあえて金を出して頼んでおく。

 今は時間を優先したかった。

 しめて銀貨八枚。

 新品で揃えたらこの二倍はするだろう。

 修繕費込みでこれなら、まずまずといったところか。

 それでも、残りの財産が更に心細くなってしまう。



(あと七枚か)

 銀貨で、である。

 宿泊費と食事代とモンスター退治に出るための費用を考えるとギリギリになる。

 下手すると、更に分が悪くなる。

(こりゃ、練習で少し稼がなくちゃならないかもなあ……)

 ほんの少しでも費用を補填する為にも、それも考えねばならない。



「それでだ」

 購入と修繕を決めて費用を支払ったところでオッサンが新たに口を開く。

「そちらの嬢ちゃんだが、正規の作業員として登録は出来ない。

 あくまでお前の所有物だからな。

 それはいいな」

「そうなるのか?」

「ああ。

 だから、その嬢ちゃんに仕事を回すわけにはいかん。

 やるとしたら、お前さんの承諾があった場合になる」

「なるほど」

 奴隷の所有権を考えればそうなるだろう。

 まずは主の意向があってから、という事だ。



「まあ、お前さんが仕事をさせたいってんなら話は別だがな。

 ただ、お前さんが承諾して仕事をさせれば、当然報酬は発生する。

 それも全部お前さんに支払う形になるが」

「なんとまあ」

 そうなると、奴隷を大量に買い込んで仕事をさせれば丸儲けではないかと思ってしまう。

 少なくとも自分が働く必要性は減る。

「でもまあ、奴隷の管理も必要だから手間もかかるけどな」

「楽して儲けるってわけにはいかないってこと?」

「そうそう簡単にはいかん。

 奴隷のレベルにもよるしな」

 まあ、やはりそれなりに使える人間を揃えなければ駄目なのだろう。

 それに、奴隷の衣食住を考えれば、管理の手間がかかる。



「それに、儲けを出して働かずに済まそうと思ったら、何十人と使う事になるぞ。

 そんなに面倒見られるのか?」

「無理だな」

 そこで奴隷の大量投入という事は諦めた。

 自分にはそこまで人を見渡す能力は無いと思ったからだ。

「ま、そういうわけで、登録はしてもこの嬢ちゃんに仕事を回すって事は無い。

 まずはお前さんに話がいくから、そこはしっかりやれよ」

「はいはい」

 これもまた奴隷の所有者としての仕事なのだろう。

 人を使えて楽が出来ると思ったが、存外そうでもない。



「ま、登録は登録だから印章は出るぞ」

 そう言ってオッサンは奥の部屋へと促す。

 ヨシフミもかつて同じように通された。

 そこで登録の証しである印章制作の手続きをする。

 頷いたヨシフミは、アヤを促して奥へと向かう。

 そんなヨシフミにオッサンは重ねて問う。

「もう一度聞いておくが、人員の募集はしてもかまわんな?

 さっきの条件でやっておくが」

「ああ、頼むよ」

 さして期待はしなかったが、申し出をありがたく受ける事にした。

 結果の方がどうなるかは分からないが。



 だが、どうしようも無いのが来たら断ればいい、という気楽さもある。

 それで文句を言われたり今後不利になるような事も無い。

 少なくとも周旋屋から文句を言わる事は無い。

 それも仕方ないと彼らも割り切っている。

 わざわざやってきた人間の方はどう出るか分からないが。

 それでも、これを根に持って逆恨みすれば、界隈での評判を落とす。

 断られて不平不満があっても、それで逆上するような奴を迎え入れようなんて者はいない。

 圧倒的大多数に放逐されて、行き場を失うのが落ちである。



「ま、そんな変な事はしないから」

となだめながら奥へと向かう。

 見知らぬ場所という事でアヤは少しばかり怖じ気づいている。

 そんな彼女を安心させようと、この先で何が起こるかを説明していく。

「あ、でも。

 少しだけ血をとるか」

 その言葉に、アヤは背をふるわせた。

 注射を怖がる子供のように見えた。

「大丈夫だって」

 そこまで驚くとは思っていなかったヨシフミは、苦笑しながらアヤの手をとる。

「行こう」

 引っ張った手は、小さくて細く、柔らかかった。

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