88話 それはさすがに難しいかと思います
それからのモンスター退治もほぼ順調に進んでいった。
レベルが上がっていく事でより簡単にモンスター退治も進めていけるようになった。
村の施設も充実していき、生活に利便性も増した。
それに伴い鋼鉄支隊は更に増員を決定。
新たにやってくる冒険者の確保につとめていく。
同時に、村の事が伝わっていった事で他の冒険者もやってくるようになった。
おかげで村は手狭になってしまっている。
しかし賑わいも大きくなり、以前とは様相は変わってきていた。
特産品も何も無い、辺鄙な村はモンスターをもって発展・繁盛していった。
異様な事であるが、これはこれで問題は無いだろう。
それを踏まえて領主代理のカナエも次の展開を考えていく。
モンスターのおびき寄せが一定の効果をあげ、想像以上の収穫ももたらしている。
冒険者も増え、村に回せる警備も増えた。
活動範囲も広まり、今まで以上の活動を期待も出来る。
(となれば)
次の段階に移る事を考えていく。
今までやろうとして出来なかった事に。
(納得してくれるといいけど)
それだけが気がかりだった。
さすがに全員が納得するとは思えない。
やろうとしてる事の難しさを考えれば当然である。
だが、なんとしてもやり遂げたいとも思う。
(モンスターの移動経路の遮断。
何とかして成し遂げたいけど……)
出来れば苦労しない。
必要になる労力と、超えねばならない課題が大きすぎる。
しかし、やらねばモンスターからの被害が今のままになってしまう。
だからこそ改善したいと常々思っていた。
その度に「では、どうやって?」という疑問にぶつかってしまう。
(けど、今は……)
突破口が見えてきた。
上手くいくかどうかは分からないが、可能性はある。
それを少しでも押し広げていきたい。
その為に何が出来るか、どうしていくかを考える事が出来ている。
「どうでしょうか?」
「どうって言われてもな」
仕事が終わってから呼びつけられたヨシフミは、質問にどう答えるべきか考えてしまった。
「確かにやれるとは思うけど、すぐには無理だろ。
それに、賛同する奴がいるとも思えないし」
「駄目ですか?」
「基本的に人手が足りない。
やろうと思っても無理だろ。
そんな事しようと思ったら、何百人いても足りないぞ」
何せモンスターの中に突入しようとしてるのだ。
今の人数だけでどうにかなる事ではなかった。
「それに、拠点も作らなくちゃならないし。
そもそも、そこまでどうやって移動するんだ?」
「それは……」
言われてカナエも口ごもる。
そこまで考えていなかったのだ。
だが、言われれば理解出来るだけの頭はある。
伊達に貴族をやってるわけではないので、相応の教養はある。
それらが言われた事の意味を瞬時に考えさせていった。
「では、やはり無理なのでしょうか?」
「それをそのままやるならな」
ため息が漏れた。
やろうとしてる事の大きさと、それに必要な事を考えて。
「急ぎたいのかもしれないけど、もう少し現状を考えた方がいいぞ。
どう考えても無理がある」
「…………」
「無理とは言わないけど。
けどな、そこまで結構な距離があるんだろ?
移動の途中で襲われたらどうする」
「それは……」
「一日で行く事が出来ても、そこでどうやって過ごす?
何もない所で」
「…………」
「そのあたりを解決しないと駄目だろ」
「…………」
「そういう場所を作るにしても、材料が必要だし。
出来上がるまでに時間もかかる。
そう簡単にはいかないって」
言われてカナエも理解した。
確かにその通りである。
「やるなら、小刻みにやっていけ」
そう言ってヨシフミは自分の考えを提示していく。
目的地を何処にするのかにもよるが、まずは中継地点を構築する所から始めた方が無難であろう。
となれば、モンスターの移動経路になってる部分に直接向かう前に作業が必要になる。
中間となる地点に、寝泊まり出来る拠点が欲しい所だった。
安全に過ごす事が出来て、物資を蓄えておく事が出来る場所が。
それを作って少しずつ前進していくしかない。
でなければ、資材も人も途中で壊滅する恐れがある。
やるならそこからとなる。
モンスターの出没状況を考えれば、そうでもしないとどうしようもない。
そして、こういった施設があれば何か合った場合に逃げ込む先にもなる。
安全性を考慮したら、こういった所からやっていかねばならない。
「当面は、もっとモンスターを倒せる場所への進出とでもしておけばいい」
村の防衛を考えてもそれが妥当に思えた。
モンスターのおびき寄せにしても、なるべく村から遠い方が良い。
そうであるなら、村から離れた場所に拠点を作った方が便利になる。
手間も時間もかかるが、いきなり目的地に向かうよりは確実で安全である。
「俺はそう思うけど」
言い終えたヨシフミに、カナエは頷いた。
「確かにその通りですね」
「ああ。
たぶん、その方がいいと思う。
この方法でも金と時間がかかるけど、失敗の可能性が低い。
逃げ込む場所があるのと無いのじゃ全然違うから」
「なるほど」
「俺からはこんなところだ」
そう言ってヨシフミはその場から離れていく。
「ただ、やるなら相当な人手が必要だから。
それの調達も考えておいてくれ」
「分かりました」
それでこの場における話は終わった。
「あ、一つ聞いていいか?」
立ち去り際に尋ねる。
「なんで俺に聞くんだ?
他の人でもいいんじゃ」
この手の話なら、村長なりハルオミなりに聞いたほうが良いと思えた。
村にいるものでなくても、領主のほうに話を持っていくべきだろうとも思う。
なのになぜヨシフミなのか?
「そうですね……」
問われてカナエは少し考えた。
ほんの少しの沈黙。
それから口を開き、
「なんとなく、でしょうか」
あいまいきわまる返事だった。
「でも、村の方ではこういった事は話せませんし。
冒険者の方でも、他のかたがたでは自分達の都合を優先するだけに終わりそうだったので」
「そうか?
俺だってまともに答えられるかどうかわからんぞ」
「でも、ちゃんと考えてくれました」
言いながら笑みを浮かべる。
「おかげさまで助かります」
「はあ……」
なんとも釈然としない。
「答えになってないぞ」
「そうですね」
自覚はあるようだ。
だが、それ以上の返事は聞けそうに無い。
(やれやれ……)
面倒な相手だとつくづく思った。
ちょっと考えてる事を活動報告に書いてます。
こちらの話もよろしく
「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
http://ncode.syosetu.com/n7411dr//
「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
http://ncode.syosetu.com/n7595dj//




