87話 上手いことやってる方だろう
薬草採取も滞りなく終わり、村へと帰還する。
荷物運び役とロバに積み込まれた成果に薬草師の爺さんも喜んでくれた。
これで町におろす分を用意する事が出来ると。
冒険者が金を落とすようになってそうでもなくなったが、薬草も村にとっては資金源の一つである。
単価も高く馬鹿に出来ない儲けになる。
その分採取の手間もかかるのだが、今はそうでもなくなっている。
採取しにいくヨシフミ達に報酬は支払わねばならないが、それも今は村で幾らかを負担をしてくれる。
怪我や病気になった時に治療手段がないと困るから、という名目で。
それも確かにそうなのだが、資金援助というのが理由の大半になりつつある。
村長もそのあたりは考えており、いっそ村の仕事として依頼していこうかと考えている。
薬草採取に必要な手間は一個人で支払いきれるものではない。
人手が多くなってる今の状況では特に。
それならば村が支出して依頼を出す方向で行こうかと考えてもいた。
薬草の管理などは薬草師の爺さんに任せる事にして。
ヨシフミとは関係のない事ではあるが、そんな動きも出てきていた。
「おつかれさん」
帰ってきたヨシフミ達をハルオミ達が出迎える。
拡張された酒場の一角で、鋼鉄支隊の面々と向かい合うヨシフミは、「どうも」と返す。
「毎度大変だな」
「いつもの事ですよ」
そう言いながら並んだ食事に手を伸ばしていく。
モンスターから切り離された事を実感するせいか、村に入ると食欲がわいてくる。
保存食だけでまともな食事が出来ない反動もあるのかもしれない。
味がまともな食事がとにかくありがたく感じられた。
とにかく今は腹が減っていた。
「しかし、上手くやってるよな」
食事が一段落したところでハルオミが口を開く。
「この三ヶ月で稼ぎはかなり増えた。
レベルも早く上がってるし。
何もない辺鄙な村だと思ってたけど、こうなると宝の山だな」
「文字通りにですか?」
「ああ。
この山には宝がある。
モンスターっていうな」
「物騒な話ですね。
襲いかかってくる財宝なんて」
「違いない」
ヨシフミの言葉にハルオミが笑う。
「けど、おかげでこっちは助かってるよ。
兵隊を養っていけるし」
「いやいや。
鋼鉄支隊ならどんな所でも食って行けるでしょ」
「だといいんだがな。
これが結構難しいんだよ。
人数が増えればそれだけ稼ぎを確保しなくちゃならんし」
人を抱える苦悩というものだろう。
数十人を抱えるとなると、それを食わしていくだけの努力が必要になる。
せいぜい五人六人程度の仲間を抱えるヨシフミには分からない事だった。
「出来ればこのままここで稼いでいたいもんだ」
「まったくですね」
少なくとも今後の稼ぎについて悩む事は無い。
もっとも、ヨシフミとその仲間だけであれば、ここでなくても構わない。
モンスターを相手にするにしても、もっと楽なところでやってれば良い。
ここで鋼鉄支隊と一緒にやっていた方が簡単に稼げるが。
(少しでも長く一緒にやっていけたらいいんだけど)
虫の良いことを考えてしまう。
ハルオミの方はそんな考えには当然気づいてるわけもなく、
「これからもこうしていきたいなあ」
と言う。
調子良さそうな口ぶりに、
「俺もですよ」
と合わせる。
嘘はない。
実際、この調子で稼いでいけたらありがたい。
「そうだな。
これからも頼むぞ」
「ええ、これからも」
あらためて二人は乾杯をする。
酒を控えてるヨシフミは、コップに水を注いでいたが。
それから中身を煽る。
(これからか……)
ハルオミの言葉を頭の中で繰り返しながら。
あらためて考えると、かなり上手くやってると思えた。
なかなか成り上がれないという冒険者でここまで長くやり、それなりに上手くいっている。
一団と呼ぶのは躊躇われるが、それなりの人数を抱えている。
稼ぎも、とりあえず安定してきている。
この先何があるかは分からないが、今の調子が続くならそれほど問題はないだろう。
先行きの見通しがきかない商売だが、それでも不安要素はない。
その不安もレベルが上がれば大概消えてなくなる。
ようは、モンスターより自分が強くなれば良いのだから。
(それも上手くいってるしな)
大量のお引寄せを始めてから三ヶ月。
レベルは現在3つも上がっている。
この調子でいくなら、そう遠くないうちに、モンスターで問題なく稼げるようになる。
可能性の段階ではあるが、未来は明るく感じられた。
ちょっと考えてる事を活動報告に書いてます。
こちらの話もよろしく
「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
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「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
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