86話 大変なのも今だけと思えば
モンスター退治は順調に進んでいった。
おびき寄せる事でモンスターを誘導し、村から逸らす事も出来ていた。
一度に二百以上を相手にせねばならないので負担は大きかったが。
それでも一回につき二十人から三十人が出向いてるので損害もほとんどない。
五カ所ほどに設置されたおびき寄せ地点を巡る事で、一日に一千から一千五百ほどのモンスターを倒していく。
金銭も経験値も通常以上に稼げるようになった。
レベルアップは一ヶ月に一回まで跳ね上がる。
通常ならこの二倍三倍の時間がかかるのに。
その成果が、冒険者達に常より厳しい作業に没頭させた。
厳しいといっても実力の範疇でこなせるくらいである。
であるなら、稼げるだけ稼ぎたいと誰もが思っていた。
この商売、余裕というのはどれだけあっても足りない。
活動する為にはレベルが、生きていくためには金銭が必要になる。
そのどちらをも手に入れる事が出来るなら、これにつとめるのは自然な事であった。
恩恵は村にももたらされる。
寝食を提供するだけでも金になる。
多少なりとも嗜好品を提供すれば、それが全て儲けになる。
『飲む・打つ・買う』のうち、二つはさすがに提供出来なかったが、飲むについてはかなり融通が利く。
他に消費場所がないだけに、村の収益はかなり上がっていった。
また、冒険者が使ってる装備の修繕なども収益になっていく。
専門的な設備はさすがにないので簡単な手直し程度であったが、それでも十分に需要があった。
村で日用品の修繕を行っていた者は、そのまま鍛冶専門となっていくくらいである。
どうしようもない場合は麓の町にて修繕、あるいは買い直しとなるが。
それでもかなりの儲けにはなった。
五十人近くの客がいて、それらがほぼ毎日何らかの注文を持ってくるのである。
継続的な利益は約束されてるようなものだった。
村も宿泊場所や飲食店を優先して整備していった。
こうなると人手が足りなくなる。
そのため、村から出稼ぎに行っていた者達が帰還する事にもなった。
食っていく手段がなかったから村を出たのであって、そうでなくなれば出稼ぎしてる理由は無い。
あちこちに奉公に出ていた者達に村の現状を伝え、どうせなら帰ってくるかという事にもなる。
ならばと奉公を切り上げて帰郷する者達も出てくる。
それらが村における新しい仕事に従事し、村に定着していく。
その延長で縁談も出てきて、村の娘と所帯を持つようになっていった。
小さな村に少しずつ活気が出てきていた。
一ヶ月が経ち、二ヶ月三ヶ月と過ぎていく。
その間に村を囲む壁が出来上がり、新しい小屋も建っていく。
無人だった家も取り壊され、新たな家に再生されていく。
上がってくる税収をもとに、村は拡充していく。
建築ラッシュは一旦落ち着いてきたものの、村の整備は終わる事がない。
冒険者が寝泊まりする小屋もまだ数が足りない。
領主代理であるカナエの館も、最低限の部分しか出来あがってない。
寝泊まりは出来ても領主としての業務を行うとなると、まだまだ設備が必要だった。
今後もモンスター退治を続けていくなら、これらも拡大せねばならない。
そしてカナエの方には、今後もこの近隣でモンスター退治を続ける意志がある。
カナエだけではない、領主を始めとした統治者達の考えでもある。
なので村の拡大はまだ続く事になる。
このまま何事もなければ。
「おかげって言えばそうなのかもしれんが……」
山道を歩きながらヨシフミは呟く。
荷物をもって進む一行は総勢十人。
ヨシフミだけでなく、鋼鉄支隊の者も一部ついてきている。
その他に、ロバが二頭。
この全てが薬草採取に赴いていた。
モンスター退治と村の防衛に割く事が出来る人間が増えた結果である。
村としては、栽培が出来ない自生してる薬草の採取もおざなりに出来ない。
その為に定期的にあちこちにある薬草を採取しにいかねばならない。
その為に人手をどうしても確保出来ていなかったのだが。
この数ヶ月はその心配がなくなっていた。
おかげで一ヶ月に一回は薬草採取に出かける事となる。
(しかし、一気に楽になったな)
人手が多いとこうも違うのかと思った。
以前は薬草をどうやって採取しにいこうか悩む事もあったのに。
今ではそんな事が全くない。
鋼鉄支隊から人が出せるかどうかの調整が必要なだけである。
それも特に問題なくすんなりと出来る。
余裕があるというのは大変ありがたいと思った。
こちらの話もよろしく
「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
http://ncode.syosetu.com/n7411dr//
「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
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