82話 言いたい事と伝えねばならない事は出したはず
「それにおびき寄せる事で他の方面にモンスターが出向くのを防ぐ事にもなる。
倒しても倒しても出て来るモンスターだけど、そこかしこからわいて出て来るわけじゃない。
一カ所に集めておけば、他の場所に出て来る可能性は下がる」
ヨシフミの説明は続く。
「本当なのか?」
「でなけりゃモンスターを退治する意味がないだろ。
あいつらも町や村の中に突然あらわれるわけじゃない。
どこで生まれるのかはわからんけど、どこかから流れ着いてるのは確かなんだから」
解明されてないモンスターの生態であるが、これははっきりしている。
どうやって生まれるのかは分かっていないが、どこかで生まれて人の勢力圏まで押し寄せてるのは。
だからこそ、根絶やしにすればその地域から消える。
すぐに新たなものがやってきて、再びその場に居座ろうとするのだが。
だから、おびき寄せる事で周辺からモンスターの脅威を取り除く事は可能だ。
ただ、すぐに駆除しないと大量に集まりすぎて手がつけられなくなるという危険もある。
分散したモンスターとの遭遇と、集まって集団化した連中との戦闘。
そのどちらかになるだけである。
「おびき寄せる事である程度モンスターの動きとか、移動の流れを操る事が出来る。
その事も考えてほしい」
それによる利点も踏まえてもらいたかった。
「どこにいるか分からないモンスターを相手にする事は出来ん。
出来るだけ引きつけた方が効果的にやれる」
ハルオミがヨシフミの言葉を継いで、あらためて強調した。
「だとして──」
説明を聞いたカナエが口を開く。
「おびき寄せる事でモンスターが集中する。
それらを確実に排除すると言えますか?
それらがこちらに向かって来る可能性は?
もともとこちらに来るはずの無かったものも呼び寄せてしまう危険は?」
「その危険は全部ありえる」
否定する事無くヨシフミは答えた。
「確実に倒す保障はない。
村にやってくるかもしれない。
こっちに来る予定のなかった連中も、やってくるだろうな。
今言った事は全部ありえる」
「じゃあ、そんな危険は……」
「危険の無いやり方なんて無い」
はっきりと言い切る。
「何をやっても失敗の可能性はある。
予想外の事が起こる可能性だってある。
一番危険の少ない方法でやりたいけどな」
「じゃあ、その方法でやってみては?」
「何が安全か分からん」
「え?」
「どの方法が一番安全かなんて、誰にも分からんよ。
俺だって、もっと楽にやれる方法があるなら、とっくにやってる」
嘘ではない。
実際、何が安全かなんて分からない。
「ただ、おびき寄せて餌に集中させてるのが一番安全だ。
モンスターを探して追いかけて倒すよりもな。
正面切って戦う必要がないから、それだけ安全にやれる。
少なくとも、最初の一撃はこっちから入れられる。
その分だけ安全だ」
「遭遇戦だとそうはいかないからな」
ハルオミが補足した。
「どこにあらわれるか分からん。
向こうが先に見つけるかもしれん。
奇襲される事もある。
そうなったら無傷ではすまん。
勝つにしても損害が出る。
それよりは、素直にやって来てくれた連中を歓待してやった方がマシだ」
嘘でも何でもない、実体験に基づく経験則である。
「多少はこのあたりまで出てくるのもいるだろうが、それは何もしないでいても変わらん。
こっちに流れてくる奴は、どうしたって出て来る。
それまで遮れっていうなら、このあたり一帯を壁で覆うしかないぞ」
事実上不可能という事である。
将来はともかく現時点においては。
それが分からない者はこの場にいない。
「やらないでも構わないってのは確かだよ」
ハルオミが口を閉じたの見計らって、ヨシフミが再び喋り始める。
「けど、その場合の危険性とかも考えてもらいたい。
やればやったで何かしら問題が出るけど、やらなければやらないで問題が出る。
様子見や放置が最善の時もあるけど、いつもそうだってわけじゃない。
俺らはモンスター退治をやる上で最善なのがお引寄せだと思ってる。
出来るだけ村から離れた所で、一気に集めて叩く。
その方がまだマシだと思ってる」
「マシ……ですか?」
「そうだ。
他よりは幾らか良いかもしれない、ってだけだ。
でも、他の手段が良いと思えない以上はこれしかない」
「どうしてもですか」
「俺らが前みたいに人数が少なければ、ここまで考えなかったよ。
でも、今はこれだけの人数がいる。
レベルの高い人間も多い。
だったら、集めて一気に叩いた方が楽だ」
「核も稼げる。
レベルも上がるし、金も増える。
危険をおかしてやるだけの理由はこのあたりになる」
ハルオミと二人、畳みかけるように利点をあげていく。
問題点は既に他の者が述べてるので口にしない。
「それを踏まえて考えてもらいたい。
今まで通りでいくか、無理してでも挑戦するか」
「……随分と無謀に思えますが」
「無謀は承知だ」
カナエの言葉には素直に答えるしかなかった。
「無謀ついでに言っておくが、おびき寄せは一カ所だけじゃない。
他にも何カ所か設置する。
それでモンスターを分散させる」
「出来るんですか?」
「やれる」
「危険は跳ね上がりますよね?」
「村から離れた所でやるのと相殺だ」
「確実に仕留められるんですか?」
「確実性が欲しいなら、もっとレベルの高い連中を雇った方がいい」
最終的にはそこなのだろう。
安全性が欲しいという一点がカナエや村の者達の要望である。
そこだけはどうにもならない部分である。
何をしても危険は残るのだから。
それを踏まえてどう判断し、どんな決断を出すかになる。
(さて、どうなるか)
カナエの答えが待たれた。
この場における最高責任者は村長でもなく彼女なのだから。
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