81話 何でそこまでするのかって、そこまでしなくちゃならんからでしょうが
「レベルアップしたい」
率直に自分の考えを伝えた。
「金も欲しいが、こっちの方がよっぽど大事だ」
その場に居た者達は、ヨシフミのその意見に様々な顔をした。
冒険者であるハルオミは、その言葉に素直に納得していた。
実力がなければどうにもならない世界にいるだけに、共感するのだろう。
だが、他の者達はさすがに渋い顔をする。
良くて困惑であり、戸惑った顔をする。
しかし、大半は怪訝そうな、はっきり言えば否定的な気持ちをあらわにしていた。
「そこまでやらねばならんのか?」
そんな気持ちを代表するかのように、一人が口を開いた。
村に戻ってきたヨシフミとハルオミ達は、村の主な者達の会議で発言をしていた。
モンスター退治に関わる事であり、危険が大きいとされた長時間のおびき寄せについてである。
大量のモンスターを呼び込む事になるので、どうしても村の者達から否定的な意見が多く出る。
これは村の元々の住民だけでなく、仕事のために来てる職人達も含まれている。
彼等にしても、安全に作業をしたいのだから当然だろう。
わざわざ必要以上にモンスターを呼び込んでどうするのか、と考えるのは当然である。
だからこそ出て来るのが、「そこまでやらねばならんのか?」という言葉になる。
実際、それは冒険者としての理屈であり、一般的に見れば危険をおしてまでおびき寄せる必要性がない。
なのだが、それでもヨシフミやハルオミはこれを押し切りたかった。
「確かに皆さんの言う通りです」
ハルオミではなくヨシフミが発言をしていく。
「危険なのは確かです。
それでもやるのは、俺達が稼ぎたいから──これが第一の理由であるのは確かです」
「話にならんじゃないか」
先ほどとは別の者が異を唱えた。
確かにその通りである。
「ですが、このままではこちらもじり貧。
稼ぎが今少し上がらないなら、ここに居座る理由もありません。
同等以上に稼げる場所は他にもありますし」
実際その通りである。
大量におびき寄せるなら他の場所でも十分である。
わざわざ山奥まで来なくて良い。
同等に、というのはさすがに難しいが、安全性を確保し、なおかつ稼ぐというならもっと適した場所はある。
それこそ幾らでも。
「なので、ここで駄目だというなら、もっと良い場所に移るだけです」
その言葉に居合わせた誰もが青ざめる。
現在、この村において戦力になるのはヨシフミ達冒険者しかいない。
それらが立ち去るとなると危険が跳ね上がる。
実質、脅迫ともとれる言葉である。
カナエなどはこの中で最も顔を引きつらせているくらいだ。
(まあ、そうなるわな)
彼女の立場ならそうなるだろうとは思った。
「だからと言って無理強いするつもりもないですが。
でも、ここでモンスターを大量に引き寄せるのは理由があります」
「それは、なんですか?」
引きつりながらもカナエが尋ねてくる。
彼女からすればその真意を問いたださねばならないだろう。
賛成するにしても反対するにしても、とにかく情報がなければ意味が無い。
「わざわざ危険をおかす理由は?
あなた達もそうですが、村にも被害が出るかもしれないんですよ。
なのにどうして?」
「レベルアップの為です」
はっきりとヨシフミは言った。
「でなければ、ここも最終的には危険になると思うからです」
わざわざモンスターを大量に呼び込む危険をおかすのはそれが一番の理由だった。
「今は良いですけど、この先もっと面倒なモンスターが出て来たら対応出来ません。
猿はこの前見かけましたけど、あれだけでも手こずります。
まだ出会ってませんが、熊が出て来たらどうなるか。
正直、今のレベルで対応出来るか不安です」
その言葉に居合わせた者達は先ほどとは別の理由で動揺していく。
「なあ……」
カナエ以外の者が声をあげた。
「それじゃあ、あんたらはモンスターに負けるって事なのか?」
「今は問題ありません。
あくまでこの先の事です」
そこははっきりと言い切った。
実際、犬頭くらいならどうという事は無い。
猿も、一体や二体ならどうとでもなると思えた。
「今のレベルでも、とりあえずどうにかなります。
でも、今のままだとどうなるか分かりません。
今後の事を考えれば、多少の無理をしてでも経験値を稼いでおきたい。
だから、モンスターを呼び込んで倒したい。
それが俺達の狙いです」
そう言ったヨシフミの隣でハルオミが頷く。
この集まりが始まる前に話し会っていたので、ある程度は意見が統一されている。
ハルオミにしても、今後の事を考えればそうしておきたいと考えていた。
「加えて、俺達のレベルもまだまだ高いとは言えない」
ヨシフミに代わってハルオミが話しはじめる。
「確かにそこそこのレベルにはなってるとは思うが、出来ればもっと上げていきたい。
それに、なんだかんだ言ってレベルの低いのもいる。
そいつらの底上げもしたい」
赤布の連中から引き取った新人達のレベルはまだ高いとは言えなかった。
経験値を稼いで、もっと上げねばならない。
この村に来たのは、その為の武者修行という意味もあった。
「なので、理解してもらえると助かる」
無理強いは出来ないが、それでもそこを押し通したかった。
(それになあ……)
ちらっ、とカナエの方に目を向け、ヨシフミは考える。
(本当にこの先の事を考えるなら、少しでも早くレベルの高いのを育てないといけないし)
以前聞いた事、モンスターへの対処などの話を考えると、レベルの高い人間は必要なはずだ。
その為にも、無茶を押し通さないといけないと思えた。
今のままでは、レベルを一つあげるのに二ヶ月三ヶ月かかってしまう。
そんな悠長な事をしてる暇は無いはずだった。
(そのあたり、どう考えてんだろ?)
聞けるならそのあたりの考えを聞いておきたいと思った。
こちらの話もよろしく
「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
http://ncode.syosetu.com/n7411dr//
「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
http://ncode.syosetu.com/n7595dj//




