79話 やりたい事が目標でよろしいかと
「どうしたの?」
急に前のめり……なほどにやる気を見せてきたハルにアヤが尋ねる。
聞かれた方は素直に、
「ロバとかさわれるんでしょ?」
と答えた。
「じゃあ、いいかなって」
「ああ……」
それで理解したのかアヤは納得して頷く。
「どういう事?」
ヨシフミの方は全く理解出来ないので二人に聞くしかない。
「好きなのよね動物が」
短い答えがアヤから出る。
隣のハルも、「うん」と笑顔で頷いた。
理由らしい理由ではない。
得意だからとかそういう事では無い。
それだけで何かが出来るというわけではない、
ただただ、やる気があるというだけである。
だが、それで十分でもあった。
「やりたいのか?」
尋ねるヨシフミにハルは「うん!」と再び頷く。
「じゃあ、レベルアップ出来るようになったら、動物の世話とかの技術をおぼえろ」
「うん!」
これで育成方針が決まった。
(アヤは料理で、ハルが動物か)
動物の扱いは自動車などの運転に近いものがある。
移動手段として、荷物の運搬手段として、田畑の開墾手段として動物は重要になってくる。
それを担う者が出来れば、これからの仕事で役立つはずだった。
維持費も高くつくが。
それ以上に便利ならば、維持費以上の利益が出るなら問題は無い。
(稼がないとなあ)
いつも考える事がまたも頭をもたげてくる。
その稼ぎの手段であるモンスター退治。
離れた所にある窪地に餌を設置し、半日ほどおびき寄せるために放置した。
数多くのモンスターをおびき寄せるためだが、その成果は恐ろしいほど大きなものになっていた。
「たまげたな」
ハルオミが皆の心中を代弁するかのように言う。
それもそうだろう。
窪地になってる場所には、数多くのモンスターが揃っていた。
その全てが犬頭である。
ここにいる者達からすれば大した脅威ではない。
ないのだが、いかんせん数が多い。
「どんだけいるんだ?」
「一百は超えてるだろ」
口々にあがっていく目算も正確さはない。
ただ、かなりの数がそこにいるという事実だけがはっきりしている。
「ま、そんなもんは後で分かる」
ハルオミは従ってる仲間にそう告げた。
「倒して核を手に入れりゃあな」
それで十分だった。
「やるだけやって元気に帰ろう」
手順は変わらない。
魔術でモンスターの動きを止める。
弓で数を減らす。
向こうが接近してきたら応戦。
してこなかったら突撃。
いつもと何も変わらない。
ただ、窪地に入り込んでるモンスターを倒すのはそれほど難しくないはずだった。
窪地から上がるのは難しい。
入り込んだら逃げ出すのは困難である。
逃げ道はあるのだが、そちらにモンスターが向かう可能性も低い。
人を見たら襲いかかってくるのがモンスターの習性である。
それだけに、安全圏から攻撃を仕掛ける事が出来れば取り逃しはない。
確実に倒せるなら、これほど良い稼ぎもなかった。
モンスターの数が落ち着いてくれば、剣などを抜いて接近戦を仕掛けていく。
木陰などに隠れる智慧の回るものもいる。
それらは近づいて始末していくしかない。
数が五十体程度に減れば、それほど危険視しなくても良い。
「行くぞ」
サキに声をかける。
「ミノリ、お前もだ」
「う、うむ」
頷くミノリだが、さすがに声が震える。
怖じ気づくとまではいかないが、緊張はしている。
「いけるか?」
「案ずるな。
これも覚悟の上だ」
とは言うものの声はかすれてる。
「初めてか、戦闘」
「何度かある」
「何を相手にどんな事をしてた、参考までに聞くが」
「……堀に嵌ってるネズミを何匹か」
「他には?」
「堀からすくい上げたネズミを相手に何度か……」
「なるほど、よく分かった」
全くモンスターを相手にしてなかったわけではないようではある。
無いというだけで、十分な訓練と言えるかは悩ましいが────かなり控えめに言って。
「ちなみに、実際にモンスターの退治なんかに出向いた事は?」
「……はなはだ遺憾ながら、無い」
「なるほど」
これは仕方が無い。
「じゃあ、今回が初めての戦闘だな。
無理しなくていいから、俺のあとについてこい。
まずは、慣れろ」
「うむ、了承した」
武家や武士の意地で前に出る、と言わないのはヨシフミにとってありがたかった。
とにかく、モンスターに接近する事、接触して衝突する距離にまで近づく事になれてもらえれば良いのだから。
戦果などそれからである。
「じゃあ、ついてこい」
そう行ってヨシフミは突入していく。
その後ろにサキが。
そしてミノリが続いた。
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