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【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その8

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75話 どっちが偉いとかそういう事ではないのだが

「ご存じかもしれませんが、私の下にいる兵士の皆さん、まだ経験が足りなくて」

「はあ……」

「出来れば、これを機会にして経験を積ませてあげて欲しいんです」

「はあ……でも、兵士の人達ですよね?」

「ええ、そうです」

「良いんですか、俺達と一緒に行動して」

 ハルオミが念のために尋ねていく。

「構いません。

 モンスターを知る良い機会ですし、腕も上がるなら一石二鳥ですから」

「はあ、そりゃそうかもしれませんが」

 想定外の提案にハルオミは驚くしかない。

 本気で言ってるのかと疑ってしまうくらいに。

 とはいえ冒険者と軍が共に行動する事は珍しくもない。

 あまりにも酷いモンスターによる損害がある場合、軍が派遣される。

 その際に人手不足を補うために冒険者が雇われる事もある。

 なので、カナエの言ってる事は特別珍しいものとは言えなかった。

「なので、それもお願いしたいと思います」

 訓練というか、モンスター退治に付き合わせて経験値を稼がせる、というのはちょっと珍しくはあったが。

 それとて全く無いとは言い難い。

 即席で兵士を鍛える場合、あえてモンスターを退治しにいって経験値を稼ぐという事はある。

「ヨシフミさん達に」

「はい?」

 まさかの指名に、当てられた本人は間抜けな声をあげる。

 さすがにこれは意外というか異例ととられた。

 最大多数である鋼鉄支隊ではなく、圧倒的少数派になるであろうヨシフミにお鉢がまわったのだから。



「なんで俺なんですか」

 会議が終わったあと、目通りを願ってかなったヨシフミは、カナエに真意を問うた。

「他にいなかったのよ」

 答えは簡潔だった。

「冒険者は貴方たち以外は鋼鉄支隊なのよ。

 バランスを取る必要があるのよ」

「バランスって……」

 何を考えてるんだと思った。

「そんなに信用出来ないのか?」

「そういう事じゃないのです。

 先ほども見たでしょう。

 話の主導権を完全にあの方達が握っていました」

「当たり前だ。

 安全優先にするなら護衛の意見を優先しないとまずいだろ」

 ヨシフミとしてはそう言うしかない。

 というかそれ以外に何を考える必要があるのかと思った。

 しかしカナエはそういう考えではないようだった。 



「あれだけ大多数の集団が主導権を握ったらどうなるか。

 この村のこれからがあの方々の意志に沿って動いてく可能性があります」

 カナエが自分の考えを口にしていく。

「確かにあの方々がいてくれる事でモンスター対策ははかどるでしょう。

 ですが、今後もこのような調子では困ります。

 モンスター退治は今後も続くし、冒険者の方々に頼らなくてはならいのも分かってます。

 ですが、思い通りにさせるわけにもいきません」

 おいおい……と思った。

 いったい何の話をしてるのだと。

「ですから、あなた方にはこちら側に居てもらいたいのです。

 それでも数では不利ですが、同じ冒険者同士で掣肘してくれればと」

 聞いてて頭が痛くなりそうだった。



 まず、今の話にあった、「しかし」「ですが」「けれど」の前の文書を無視する。

 それらはこれらの言葉で否定されてるのだから。

 本音はそこから続く言葉である。

 つまり、言いたいのは『思い通りにさせない』という事である。

 何でそんな発想になるのか分からなかった。

 これが盗賊団や山賊団、あるいは海賊でも良いが、町や村を制圧して支配下に置くというなら当然の警戒だ。

 前世の記憶からすれば、テロリストやゲリラなどと置き換えてもよい。

 もっと大げさにいえば軍閥や閨閥などにもなるだろうか。

 全て統治者とは別の支配者である。

 独立勢力と見なしてよいだろう。

 カナエの発言は、これらを警戒してるようなものである。

 冒険者というのを全く分かっていない。



(そんな面倒な事考えるなら冒険者なんてやってないぞ)

 ヨシフミからすればそうなっていく。

 まず、言葉は悪いが冒険者には学がない。

 読み書きに計算程度は出来ても、学問的な素養、そして教養と呼ばれるものはない。

 そんなの身につけてる暇が無いからだ。

 無くても生きていける。

 冒険者に限った話ではないが、一般的な庶民や平民に必要なのは、野良仕事や肉体労働などの技術や知識である。

 仕事に直結する、それで稼げるものしか求めないし、それ以外を求める事など滅多にない。

 仕事の智慧はあるが、言ってしまえばそれだけである。

 主導権とかそういった事を考えるような者は滅多にいない。



 次に、そういった事を考える者についてであるが。

 これも大半は主導権などに全く興味がない。

 技術で言えば一般教養などになるが、これらを身につけ、世の中の事が分かってくるとそうなっていく。

 確かに中には立身出世を求める者もいるし、成り上がった者もいる。

 だが、冒険者による成り上がりとは、今ある世の中で自分の居場所を作っていく事になる。

 例外もいるだろうが、既存の権力や支配者や有力者を押しのけるという考えはほとんどない。

 皆無とは言わないが、それを目的としてる者はおそらくいないだろう。

 もちろんそういった者達への愚痴はある。

『あそこは払いが悪い』だの『偉そうな態度で腹が立つ』などという文句はある。

 だが、それは態度をあらためて欲しいのであって、反逆を意図してるわけではない。

 あまりにも目に余る場合は、レベルの高い冒険者が主導者になって反旗を翻す事もある。

 小さな所では一揆、大きくなれば反乱となる事もある。

 なのだがそんな事をする者などほとんどいないと言って良い。

 多少なりとも智慧が回ってくると、そんな事をするのが無駄といか労力がかかりすぎるのが分かってしまう。

 支配者となって統治する事の難しさを考えるようになるのだ。



 冒険者の一団を率いてる者達に顕著であるが、大所帯になればなるほど統治する側になるのを嫌う傾向がある。

 ヨシフミが知ってるそういった者はハルオミくらいしかいないが、そんな彼が常に言っている。

『まとめるのも楽じゃない』

『命令すればいいってもんじゃないしな』

 そう言うほど人を統率する事が難しいのだ。

 これは数人程度の集まりでも、ハルオミのような数十人を従える者でも概ね一致している。

 これが更に上に行くとなると手間と面倒は更に跳ね上がる。

『俺はこれくらいの所が丁度いいさ』

 冗談めかしてそんな事を言っていたハルオミの言葉が頭をよぎる。

 そんな連中が、どうして上に立とうなどと思うのか。



 ヨシフミ自身も同意見である。

 今現在は仲間に恵まれてるが、それでもまとめていく事の難しさは感じている。

 アヤとハルは奴隷だから否応なしに従うとしても、サキ・シイナ・ナギはそうではない。

 今は協力的だが、これからはどうなるか分からない。

 もし、何かしらの理由で袂を分かつ事になったら押しとどめられるかどうか。

 分かれる事が無いにしても、騒動が起こった時に治められるかどうか。

 そんな心配もある。

 平穏にやっていられるのは、彼女らが余計な問題を起こさないからである。

 そうでなかったら収拾が付かなくなっていただろう。

 人をまとめるというのは、まとめる人間の努力もあるが、一緒にいる者達の協力も必要になる。

 その協力を取り付けるためにどれだけ気を張らねばならないのか。

 そう考えると色々と面倒になる。

(そんな事するくらいなら、自分の出来る事だけやってた方がいいわな)

 そこに落ち着く。

 主導権を握るのではなく、自分が活躍できる場所で活躍し、他の部分は他の者に任せておきたい。

 分業──そう言って良いだろうか。



 周旋屋における仕事の割り振りが全てを物語っている。

 確かに鋼鉄支隊が主導権を握りはしたが、その分責任も負っている。

 旨みもあるが義務や義理も発生する。

 それでも、手間より利点があるからハルオミなどはそれをやっている。

 他の冒険者達も、その方が便利なのでそれで良いと思っている。

 周旋屋も、面倒な差配をしなくて済むので、ハルオミ達に任せてしまっている。

 主導権という言い方を使うなら、ハルオミが主導権を握っている。

 しかし、それでいて各自の領分を侵さないようにしている。

 自然とそういう形になっている。

 それ以上を求めたり望んだりはしていない。

 それまでのやり方や形態とは違っているが、仕事の割り振りをより効率の良い形で動かしてるだけである。

 もしその気があるなら、周旋屋を乗っ取ってるだろう。

 主導権を握るだ何だと言うならばである。

 だが、実際にはそうなってない。

 やるべき役割が、分業のやり方が変わっただけである。

 誰が主導するかなどと争ってるわけではない。

 そんな面倒な事をするより、仕事を分け合って負担していた方が楽であるし利益も大きい。

 結局そこに落ち着く。



 なので、カナエのいう主導権やなにやらというのがどうにも理解しがたいものがあった。

 こちらの話もよろしく


「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」

http://ncode.syosetu.com/n7411dr//



「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」

http://ncode.syosetu.com/n7595dj//

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