64話 町を歩きつつ聞いてみる
「大きな町なんですねー」
「麓より、でかい」
シイナとナギの感想はお上りさんそのものだった。
だが、山の中も村、麓の町しか見てない彼女らからすれば驚くほどの大きさではあるだろう。
主要な幹線道路に接してるだけに通行も多く、必然的に人口も多くなる。
麓にある町の二倍三倍くらいの大きさはあるはずだった。
(日本に比べたらなあ……)
前世の記憶のあるヨシフミにはそう思えるが、この世界では違う。
大体が人口一百人にも満たない村が多数の世界である。
一千人を超えれば大きい。
五千人にもなれば都市。
一万人を超えるとなれば有数の大都市である。
県や地方の首都(県庁所在地くらいの意味)でそれくらいになる。
国家の首都や主要都市などは十万人を超えるが、そんなのは国内では数カ所である。
元々の人口がそもそも違うのだから当然である。
一億二千万の人口を抱えた日本と、それより遙かに少ないこの世界のこの国ではそもそもの土台が違う。
詳しい数字はヨシフミとて知らないが、様々な所から漏れ聞く所によると、どう多めに見積もっても日本の十分の一もない。
そんな世界でも辺境の小さな村にいたシイナとナギである。
こんな反応の方が当たり前である。
そんな二人が町を歩き回り、店をのぞき込み、といった事をしている。
町を見てみたいというのでそうさせている。
また、アヤとハルもろくろく町を見てないのでついでにつれてきている。
そうなるとサキも当然ながらついてくる。
おかげで全員で町に繰り出す事となった。
といってもそれほど見て回る所があるわけではない。
町にそもそも存在してる商店というのもそれほど多くはない。
幹線道路に接してるからそれなりにあるが、何十軒とあるわけではない。
店を構えてる所は十軒くらいだろうか。
それに加えて数多くの露店が出ている。
それでも品揃えは大したものではない────ヨシフミの感覚からすると。
実用品に日用雑貨、様々な道具に工具、八百屋や肉屋などの食品販売に装飾品など。
そういったものが売られてる事は珍しい方なのだが、どうしても前世の記憶と比べてしまう。
それらに比べればどれほど賑わっていても、この世界の品揃えはそれ程楽しめるものではない。
そもそも賑わいというほど人がいるとは思えない。
ヨシフミにとっては。
「あ、これ」
「いいですねー」
「ほう」
「ねえ、ハル。
これとかどう?」
「え、でも」
そんな会話とも言えない言葉が耳に入ってくる。
町に居を構える店、通りに並ぶ露店、行商人や近隣の村からやってくる荷馬車。
それらに並べられる品々に目を向けている。
行き交う人々に気を取られる。
興味を持つ物はそれぞれ違うが、町の様子に興味を持ってるのは伝わってくる。
サキはさすがに町に慣れてるようで、さほど騒いではいない。
だが、他の四人はとにかく驚きの連続のようだった。
一足早くヨシフミに買われて町に出て来ていたアヤも、こうして町を巡る機会は少なかったから驚きは大きい。
それでもハルを連れてるあたりはしっかりしてると言えるだろうか。
さほど遠く離れないように言ってはいるが、どこまで聞いてるか分からない。
一応、全員ヨシフミから見える位置にはいる。
しかし、まとまってるかというと悩ましい。
(まったく……)
少々呆れつつも呼び集めるつもりはない。
日頃殺伐とした事をしてるのだ。
楽しいものがある時にそれを邪魔したくはなかった。
そうやって町をぶらつきながらもこれからを考える。
村に戻ってモンスター退治に勤しむとしても、いつまで続けるのか。
今は一緒にやってるが、いつまでやっていけるのか。
それが問題だった。
サキはともかく、シイナとナギは村の人間である。
そこから離れる事は出来ないだろう。
本人達の意志もあるし、村の都合もある。
村からすれば、貴重な戦力である。
貴重な魔術の使い手と、かなりの弓引きである。
どちらも手放そうとは思うまい。
単純な戦力なら冒険者がいるから当分は大丈夫だろうが、それはそれである。
流れ者の渡り鳥はいつ別の場所に行くか変わらない。
しかも余所者だ。
それよりは同じ村の出身者がいてくれた方が心強いものである。
そんな二人が村から離れていく事を受け入れる者がいるとは思えない。
彼女らと一緒に行動出来るのは、村にいる間だけだろう。
それは当分続くだろうが、いつまでもというわけにもいくまい。
(それまでだな、本当に)
ただ、それはそれとしてヨシフミとやっていく意志があるかを確認しておきたかった。
「問題ありませんー」
「同じく」
二人の返事はあっさりしたものだった。
「ヨシフミさんは頼りになりますからー」
「共に、戦う」
「そんな簡単に答えていいのか?」
「問題ない」
「むしろ、何がいけないのかわかりませんー」
「いや、いけないって事はないけど」
「じゃあ、これからも一緒ですねー」
「帰ってもだ」
それを聞いて安心する。
とりあえずすぐに仲が決裂するという事は無さそうだった。
「それに冒険者になったばかりですしー」
「先達、手引き、求む」
何にせよ、業界の人間としては求められている。
そうやって必要とされてる間は離れていく事もないだろう。
その辺りをまずは納得しておこうと思った。
なのだがすぐに予想外の言葉を聞くことになる。
「それに、お爺さんも好きにしろって言ってくれましたしー」
「ボクも」
「は?」
「村の事は気にせず、外を見てこいとー」
「止める者、いない」
「へ?」
まさかの発言である。
言ってる意味をすぐには理解出来なかった。
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