60話 今ある問題の解決と先々の目的の達成と
「でも、そういう事ならわざわざここに集める必要もないんじゃないのか?
もっと稼げる所もあるだろ」
そこが疑問ではある。
確かにこの辺りもモンスターは多いが、同じような場所は他にもある。
より便利な場所も。
何も無いこんな山奥より、少しは開けた町や村で作業をした方が良いと思える。
「それもそうなのかもしれません。
ですが、ここでモンスターを倒していく事には多少は意味があるんです」
「何があるんだ?」
「この山の向こうです」
「…………?」
「ご存じかもしれませんが、ここは山が連なってます。
それが天然の要塞になっていて、モンスターの侵入を防いでると言われてます」
「まあ、そうだな」
実際にはそれなりにモンスターが出回っており、侵入を防いでるわけではない。
しかし、軍隊などで前線にいた者によると、モンスターが蔓延ってる地域はこんなものではないという。
ヨシフミはそれを見た事はないから何とも言えないが、相当悲惨な光景なのだろう。
「でも、山を越えてモンスターはやってきます。
それらはもっと別の道を辿ってこちら側に来てるようですが、この村からならそこを押さえ込む事が出来ます」
思ってもみなかった言葉だった。
「昔はこの近隣にも村があったらしいのですが、モンスターの通り道になってしまった為に壊滅しました。
どこも山と山の間の比較的低い地域だったらしく、侵攻から逃れる事は出来なかったようです。
ですが、ここは比較的高い位置にあったのでそれを免れたと聞いてます」
「これだけモンスターがいてもか?」
「はい。
私も詳しくはないで断言は出来ませんが。
でも、聞いたところだとそのようになってるそうです」
「ほう……」
初耳だった。
そもそもこの辺りの地理が分からないので何とも言えない。
測量技術やその規模の問題もあるので、正確な地図がない事も原因である。
地図がそれほど一般的に出回ってないのもある。
行商人などは自分の活動範囲の地図を持ってるというが、それも正確なものではない。
あくまで大雑把な位置を記しただけのもののようだった。
ただ、測量をしようにもモンスターが出回っていてはそれも難しい。
正確な地形が伝わってないのも、そういった事が原因かもしれない。
「そういった場所への対処として、ここを中心にしたいとも考えてるのです」
「そりゃまた、たいそうな話だな」
規模が大きすぎて上手く想像ができない。
「その為の兵隊を育てると?」
「最終的にはそうしたい所です。
ですが、とりあえずはこの村を守れるように。
それに、暴れてる冒険者を取り押さえられるように。
それを目的にしています」
なるほどと納得した。
「だけど、それなら最初から兵隊を集めてくればいいんじゃないのか?」
「そうしたいらしいのですが、残念ながらそこまで手が回りません。
その、言いにくいのですが予算が無いのです」
「ああ、なるほど」
世知辛い事情はどこにもあるようだった。
「ですので、今は冒険者を集めて急場を凌ぎたい。
そうしていく中で、軍勢をととのえ、モンスターの通り道を制圧していきたいと考えてます。
それに」
「まだ何かあるのか?」
「ええ。
言いにくい事ですが、失業者対策も。
その、行き場もない、働く場所もない方が世の中には大勢います。
そういった方々にも仕事として参加してもらえればと」
「冒険者に?
そりゃ、兵隊で最前線に行くよりはマシだって言うが」
モンスター相手の仕事である。
そうそうなり手がいるわけもない。
だが、そんなものにすがるしかないのだろう。
統計情報が簡単に閲覧できるわけではないから詳細は分からない。
しかし、失業問題も深刻なのかもしれなかった。
そういった情報に接する事が出来る貴族などは頭を痛めてるのかもしれない。
「そう上手くいくのか?」
「分かりません。
私もどうすれば良いのか見当もついてません。
ですが、我が十条家はここをその拠点にしたいと考えてます。
モンスター対策も、人々の生活の為にも」
「冒険者にして稼がせようと?」
「それもありますが、モンスターが減った場合の事を考えてもいます。
そうなれば、放棄するしかなかった土地を回復出来る可能性が出てきます。
失った田畑などを取り戻せるかもしれません」
そうなれば確かに大きいとは思う。
簡単にはいかないだろうが、可能性があるならやりたいと思うだろう。
正直、上手くいくのかという疑問や懸念しか浮かんでこない。
それでも、やらないよりはマシなのかもとも思った。
どのみち、やってみなければ分からない事である。
「まあ、そういう事なら協力したいとは思うけどさ」
「ありがとうございます」
「けど、こっちも色々都合があってね。
そっちを解決しないと身動きがとれん」
「何かあるんですか?」
「ああ、実はな……」
そういってヨシフミは、アヤとハルの事を伝えていった。
奴隷を買った事と、その片割れを購入しようとしてる事を。
聞き終えたカナエは、「それでしたら」と一つの提案をしてきた。
そんなこんながあって、ヨシフミは一旦村を離れる事となった。
アヤとサキも一緒である。
(まあ、それはいいんだけど)
問題なのはそれ以外である。
なぜかシイナとナギも一緒だった。
どうせなら、二人も冒険者として登録したいと言い出した。
それで良いのかと思ったが、恐ろしい事に薬草師も村長も特に反対はしなかった。
ヨシフミよろしく頼むと言う始末である。
(それでいいのか?
奴隷をつれてるような奴に頼んで……)
彼等がどういう考えで、どんな基準で二人をヨシフミに託したのかと考えてしまう。
だが、どうしてもというなら断るわけにもいかない。
二人の意志も尊重したい。
それに、薬草師や村長からも言われている。
この機会に、二人には外の世界を見せてやりたいと。
村と麓の町だけでは世間が狭くなるというのだろう。
若いうちに広い世界を見て回れ、というのも分かる。
冒険者になるかどうかはともかくとして、そんな親心には納得はした。
(ま、ついでだし)
どうせ村に戻るのだ。
それなら旅行気分で町に連れていっても良いとは思った。
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「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
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「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
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