57話 聞かれて答えるし、思った事も口にしていく
カナエが来たとて日々の仕事が変わるわけではない。
伐採もモンスター退治も続いていく。
その中でカナエは何人かの者達から村の事を聞き出していく。
当初は緊張していた者達も、話の内容が村の今までと変化などに終止してる事で安心をしていく。
決して彼等を咎めるような事はなかったし、ただひたすらに質問をして聞き役に徹していた。
それと対象的に徴税官の方は村での仕事や稼ぎについて突っ込んだ事を聞いていく。
冒険者相手の酒場などについては特に厳しく帳簿などを見ていった。
ただ、あら探しなどをしてるわけではなく、細かな計算ミスなどが無いかを確かめてるだけだった。
職務熱心という事なのだろう。
あまりありがたくない仕事ではあるのだが、そういった態度に感心する者もいた。
そんな彼等は冒険者にも接触をしてきた。
「皆様から聞いたところ、やはり皆さんが来てから一番変わったという事ですから」
なんで俺に、と尋ねたヨシフミへの答えである。
「モンスターを退治し始めた頃から色々回りだしたと言いますし。
そうであるなら皆さんにもお話しを聞かないわけにいきません」
「そんなもんですかね」
大した事はしてないつもりなので、そう言われても困ってしまう。
「話すような事もないと思うんですが」
「そういう方こそ色々なお話しを聞かせてくれるものです」
「そうですか?」
「今まではそうでした。
多分これからもそうではないかと」
「はあ……」
あまり納得は出来ないが、それでも聞かれた事には答えていこうと思った。
話の内容というか、質問事項はさして多くはなかった。
村に来た経緯と、ここでしている仕事について。
それらをどのように進めているのか。
概ねそのようなものだった。
特に変化球やひっかけのようなものもなく、あたりさわりの無い事を聞いてくる。
そう思わせてるだけで、実際には色々と考えてるのではないかと警戒してしまう。
相手が貴族と思うと、妙に警戒心を抱いてしまう。
十重二十重と陰謀を張り巡らせ、あの手この手で追い落としにかかる……といった陰謀劇を想像してしまう。
そんな噂をされるのが貴族である。
それが根も葉もない噂であっても、どうしても身構える。
統治者である以上、それなりの厳しさも多少の冷酷さも備えているだろう。
領地のため、そして己の保身のためにあれこれと考えて行動してるという印象がある。
偏見かもしれないが、上に立つ者はそういった者だと思ってしまう。
(陰謀論だな、これだと)
前世での記憶と、この世界における様々な噂話がそういった考えを抱かせる。
実際にどうなってるのかなど全く分からないのだが。
ただ、目の前の娘からはそういったドロドロとした駆け引きを感じさせる所はない。
相手を警戒させないのが詐欺師の特徴だというから迂闊に気を許せないが。
それでも、今回の事が良からぬ考えに基づいたものでないと思いたかった。
また、特に隠すような事もないので、知ってることについては正直に答えていく。
話して困るような事はなかったし、知ったところで彼女がそれを利用する事もないだろうと思っていた。
実際、モンスターを倒したりするやり方などどこでも大差ない。
それを知られたところで困るような事は無かった。
ただ、そんな話をしていく中で、一つだけ気になる事を聞いてきた。
「それなら、皆さんのような方が増えてくれれば、この村ももっと豊かで安全になりますね」
確かに表面だけ見ればそうだろう。
だが、そう簡単にはいかない。
「そうなれば良いのだけど……」
余計な事と思いつつ、ヨシフミは出て来るであろう問題点を口にしていった。
村という小さな集団では、えてして新たな住民への反発や警戒があるものだ。
それはどこに行ってもたいてい存在する。
一時的な滞在ならともかく、恒久的な定住となるとそれは大きくなる。
仮にこの村に冒険者が増えたとしたら、そういった問題が確実に発生する事になる。
確かにモンスターへの対抗手段として、周囲の安全確保について考えるならその方が良いかもしれない。
だが、それだったら兵士か何かが駐屯した方がはるかに良い。
そもそも冒険者とはあちこちに出向いていくものだ。
そういった者は定着した場所への愛着を持ちにくい。
また、定住するという発想がない場合も多い。
その為、どうしても問題を起こしやすくなる。
地元に存在するしきたりやルールを無視するからだ。
遵法意識が無い、というわけではない。
犯罪行為や迷惑行為は当然ながら慎む。
そうでなければどこに行っても爪弾きになるからだ。
しかし人の集まりとはそういったものだけで成り立ってるわけではない。
なんでやってるのか分からないようなルールや行動などが何かしらある。
それを守らなければ、それだけで毛嫌いされかねない。
そして、そういうルールはえてして余所者にはわかりにくいものだ。
特に冒険者はそれらにあまり頓着したりしない。
どんな所でも長期に渡って定住する事が少ないためだろう。
そうやってあちこち巡るから冒険者と呼ばれるのであろうし。
だからこそ、冒険者に全てを頼らない方がよいと思える。
こういった問題は兵士であっても発生するだろう。
しかし、領主の権威があれば、不満も我慢も出来る場合もある。
それのない冒険者は、ちょっとした事で不満をぶつける事になる。
それが無駄な衝突を生みかねなかった。
また、人数が増えると地元の人間の方が少数派になりかねない。
そうなった場合、数の少ない方が圧迫される可能性がある。
元々そこに住んでいた者達が除け者にされてしまう。
それも良い事ではないだろう。
まずは村そのものの人口を増やさない事にはどうしようもない。
何より、稼ぎを冒険者が持ってくるとなると、どうしても主導権を奪いがちになる。
そうならないように何かしらの対策がないとまずい。
そうした事を伝えていった。
話を終えた時、カナエは目を丸くした。
「色々とご存じなのですね」
感心しているようだった。
無駄に喋りすぎたかと思い、
「いや、あちこち見て回って思っただけだから」
と言っておいた。
前世における様々も考慮しての事だとは絶対に言えなかった。
言っても信じてもらえるか分からない。
だから、もっとも納得がいきそうな事を口にして誤魔化した。
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「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
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