52話 いざ到着してみると思っていたほどでもなかったりする
(まあ、そんなもんだよな)
町に到着してすぐに現実に直面する。
山の村よりは賑わっているが、だからといって楽しみがあるというわけではない。
前世ほど娯楽がないのは分かってるが、麓の町もそこは変わらない。
周辺の村からの伸びる道の合流点にあるからそこそこ大きいが、楽しみといえるようなものはすくない。
人口数百人になるかどうかの規模だから当然ではある。
一応商人もいて店を開いてるが、品揃えはさほどでもない。
店の大きさが、駅の売店の数倍程度なのだから当然だろう。
購買力を考えればこれくらいで丁度良いのだろうが。
もちろん客も数える程度しかいない。
そのすぐ近くにある食堂兼酒場も、同じように何人か客がいるだけだ。
広さも、十人くらいが座れるカウンターと、テーブル席が三つか四つというところ。
この程度の広さだから、その程度の人数しかいない。
そのくらいの人数を相手にしてるのだから、店の大きさも扱ってる商品も大したものではない。
ただ、それでもこの町や周囲の基準からすると『賑わってる』という事になる。
土台となる人口が少ない中で、これだけの客がいるというのは結構なものなのだ。
そのせいか、シイナとナギは店の商品に釘付けになっている。
目が輝いているというのを体現していた。
一方でアヤとナギは商品には目もくれず店主(一人しかいないが)と話しこんでいる。
「だから、こういうのが欲しいんだ」
「うーん、そうは言ってもなあ」
「やはり無理ですか?」
「今度仕入れておくけど、すぐにはな。
済まんが、もう少し待ってくれんか」
求めるものが無くて二人とも落胆している。
そもそも二人が求めてるのは、モンスター退治に関わるような道具である。
一般的な販売店で売ってるようなものではない。
それはヨシフミ達がいた町でもそれほど変わらない。
山の麓にあるこの町の数倍以上の規模をもってるが、専門的な道具を扱ってるような店はほとんどない。
冒険者に必要なものは周旋屋の販売所がほとんど独占的に扱っていた。
そうならざるえないくらい、冒険者と一般人では求めるものに差がある。
重なるものも多いが、そうでない部分もある。
そして、そうでない部分が冒険者としてどうしても必要になるものがかたまる傾向にある。
より小さな規模の町の小さな商店に、そういったものが置いてあるわけがなかった。
それでも、取り寄せるというのだからかなり良心的である。
「じゃあ、また今度か」
「よろしくお願いします」
「ああ、分かったよ。
この前も同じような事を冒険者から聞かれたしな。
お前さん達もそうなんだろ?」
「ええ、まあ」
「まだこっちにいるって聞いてるが。
もしそうなら、幾らかでも入荷しておくよ」
売れる、買う者がいると分かったせいか、店主の顔が商売人のものになる。
現金なものだとヨシフミは思ったが、だからこそ頼りになりそうだとも思った。
求める物を手に入れてくる気概があるなら、ここでの買い物の便利になるだろうから。
それほど商品について期待してなかったヨシフミは、まあこんなものかと思った。
武具の手入れ道具などは欲しかったが、無い物は仕方ない。
手に入るものだけでも補充してよしとする。
店主が本気ならばいずれ入荷されるだろうし、それまで待っても良いと思っていた。
そもそも手入れ道具などで消耗していく物はある程度予備を購入してある。
すぐに手に入らなくてもさほど問題は無かった。
それよりも今大事なのは、核を売却出来る事だった。
持っていればシイナの魔術に用いる事が出来るが、それに全てを使う事もない。
それらを売却して金に換える事の方が大事だった。
何せ大分たまっている。
店主もそれを見てかなり驚いている。
「こりゃまた……。
前に来た連中も大量にもってきたが。
こんなに見るのは初めてだな」
一ヶ月以上ため込んでいたのだから当然ではある。
シイナの魔術に用いた分もあるから、獲得した全てを持ち込んでるわけではない。
それでもかなりの量になっていた。
「しかし、これだけあると買い取れるかどうか」
「駄目なの?」
「ありがたいんだが、俺の資本金がな。
もしこれを全部買い取ったら、運転資金すらなくなっちまうかもしれん」
店の営業にはそれだけで経費がかかる。
その分まで使い込んでしまうわけにはいかない。
その為買い取りに制限がつく事も考えられた。
「まあ、出来るだけ買い取るつもりだ。
こんだけあればこっちの儲けも大きいからな」
「なるべく多く買い取ってください、お願いします」
おどけながら懇願する。
商人も肩をすくめながら笑う。
「まあ、あまり期待せんでくれ」
「こんなもんか」
かなり頑張って買い取ってくれたのだろうが、それでも全部というわけにはいかなかった。
半分くらいがまだ手元に残っている。
それほどかさばるものではないから邪魔にはならないが、換金できなかったのが残念だった。
ただ、モンスターの核は消耗品であり、なおかつ常に求められている。
多少時間はかかる事があっても、捌ききれないという事は無い。
この町や近隣の村でも、それなりに需要がある。
商品の仕入れに行く大きな町でなら、ほぼ間違いなく売れるという。
そこで金を作ってきてから、あらためて買い取ると言っている。
その言葉を信じるしかなかった。
「こうなると、毎回買い取ってくれてた周旋屋って結構すごいんだな」
それだけの資金力があるという事になる。
数多くの登録者を抱えてられるのも、それがあるからだろう。
普段は全然感じてなかったが、こうなると周旋屋のありがたみを感じる。
とはいえ、この町の商人である店主も、いずれこれらを買い取れるようにはなってくれるはずである。
何時になるかは分からないが。
(まあ、すぐに金が必要ってわけでもないし)
生活に必要な最低限の寝食は村が提供してくれている。
その出費がないから、特に急いで金を手に入れる必要はない。
また次の機会に金に換える事が出来ればそれで良かった。
ただ、一つだけやっておきたい事があり、その分の費用だけは賄えるようにしておきたかった。
(さて、足りるかどうか)
十分とは思うが、費用が大丈夫かが悩ましかった。
こちらの話もよろしく
「金持ちに転生したので親のすねをかじって冒険に挑戦します」
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「クラガリのムコウ -当世退魔奇譚-」
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