51話 規模が大きくなっていくだけで、やってる事は変わらないかもしれない
村に接してる所で伐採作業が進められていく。
おびき寄せの罠はそこから三百メートルほど離れた所に設置した。
モンスターを集め、なおかつ作業の邪魔にならないように足止めするとなると、これが妥当な距離になる。
作業中はこれらを交代で巡り、そうでない時は伐採作業の近くで待機する。
おっかない思いをしながらだった伐採作業だったが、ようやく安全性が手に入った。
特に作業の進みに差が出るわけではないが、気持ちの余裕が違ってくる。
何となく活気が高まってるように感じられた。
村の近くから始まっていく伐採は、滞る事無く進んで行く。
この辺りにある木は材木になるようなまっすぐなものはほとんど無いが、木炭にするには十分だった。
何より、村の安全性確保の為にも可能な限り切り倒しておきたかった。
木々を伝ってくる猿と言われるモンスターへの対策のために。
いまだにヨシフミ達は姿を見たことはないが、木の間を動き回るそれは大きな脅威だという。
その行動を妨げるためにも、飛び移ることが出来る木々を減らしておかねばならなかった。
少しでも安全圏を広げる為にも伐採を進めていかねばならなかった。
伐採の横で、ヨシフミ達も行動をしている。
ヨシフミ・高槻・萩浦の三組に分かれてそれぞれ罠を見回っていく。
一回の巡回およそ一時間はかかる。
三百メートル離れた所に、いつもより多くの罠を設置してるのでそれくらいの時間が必要になる。
罠の間隔もそれなりに広げてあるので、全部を見回るとなると結構な手間になる。
一回で全部は周りきれない事もあるので、途中で引き返してくる事もある。
その都度、どの罠まで回ったのかが分かるように、それぞれの場所に番号をふっていた。
途中で戻る時も、「六番までまわった」「九番に行く途中だった」と言えば続きがどこからなのかが分かる。
地図と言う程正確ではないが、設置場所をしるした図も作ってあるので、ある程度は位置も分かる。
時間を考えると一組が一日に回るのは二回になる。
それでも三組が回る事で合計六回。
モンスターへの警戒としては十分だった。
また、手に入れる収益もそれなりになる。
全ての罠にモンスターがいるわけではないが、だいたいの場合半分以上の場所に群がっている。
それらを倒していけば、一日の収穫としては十分な数になる。
最後に巡回する時には罠から餌を外し、モンスターが群がらないようにしていく。
その間に伐採作業の方も終了させ、村人達は帰宅してもらう。
所々やり方を調節しつつ、この方式での作業が進められていった。
おかげで村の周囲は大分綺麗になっていった。
まだ切り株は残ってるものの見晴らしは良くなっている。
余裕がある時にそれらを掘り起こして処分しようという意見も出ている。
放置しても良いが、あればあったで邪魔になる。
その為の余裕が無いので、それらは当分後回しにされるだろう。
それでも余裕は幾らか生まれていく。
切り倒した木々で作った木炭は今まで以上の数になり、売れば結構な金になるのが見越せた。
また、ヨシフミの提案通りに酒を買い込み、つまみの材料を手に入れてくる事で、冒険者相手の商売も出来る。
寝食はともかく、嗜好や娯楽部分まで報酬には入ってない。
そこは冒険者側に負担させて村の収益の足しにした方が良いだろうと思えた。
そうやって資金を回さないと、村に金が残らない。
残らなければ先々の展望も出来なくなる。
小さな村だからこそ、少しでも稼ぎをあげておかねばならなかった。
その為にも、二十人近くいる冒険者相手の商売を考えねばならなかった。
木炭の売却は、その為の第一歩である。
麓の町まで木炭を売却しにいき、帰りは酒やら食材やらをいつもより買い込んで帰ってくる。
空き家の一つを使ってささやかな食堂かつ酒場が作られ、そこで酒やら小料理やらが出されるようになった。
客は少ないが他に店もないだけに、そこそこ商売になっていく。
一週間と経たずに食材が底をつき、買い足す為にまた麓の町へと向かう。
馬車を使ってはいるが町までは片道で一日かかる。
どうしても往復二日はかかってしまう。
食堂はその間休業せざるえなくなる。
もっとも、冒険者としてもその方が都合が良かった。
木炭の売却や食材の買い出しにいくために、どうしても護衛が必要になる。
それに同行する事で冒険者も町に向かう事が出来る。
貯まった核を売却する良い機会になった。
村にいても核は金にならない。
商人は町までいかないといないので、こういった時を利用したほうが都合が良かった。
町へ向かうのは持ち回りにして、それぞれ順番に向かう事にした。
その組分けはモンスター退治での巡回の時と同じものとなる。
新たに仕切り直す必要もなかったし、一緒に行動してる者達で行動した方が統率がとりやすい。
モンスター除けをもっていくとはいえ、道中で遭遇戦が発生する可能性もある。
なので、息のあった者達での行動が求められた。
そこで二日という日数と、それが一週間一回というのがきいてくる。
ヨシフミがそうしてるだけではあるが、前世の影響でだいたい五日働いて二日休むというのを基本にしている。
定休という考えのないこの世界においては珍しいパターンだった。
この世界にも休みはあるが、それは祝日や祭日など特別な日に限られていた。
また、喪中といったものもこれに含まれる。
そう言ってよければ、年中無休が基本である。
特に農家などは、休日など存在しないようなものだった。
何十年も週一回か二回の休日に慣れ親しんでいたヨシフミにはきついものがある。
なので、冒険者として活動を始めた頃から、可能な限り前世における週休二日に近い行動を心がけていた。
そこからすると、町に買い出しにいく間隔は都合が良かった。
休みをまるまる潰す事になるが、遊びに出かけると思えばそれほど苦にはならない。
どのみち、一組が町に出かけてる間は、他の組も休んでるしかない。
モンスター退治が出来ないわけではないが、危険が大きくなってしまう。
作業をしてる村の者達の安全を確保する事も難しくなるので、この二日は全員が休む事になっていった。
意図したわけではないが、自然と一週間に一日の休みを自然ととるようになった。
そうやって仕事の手を止める事で疲れも回復する。
やってみると、この方が体と気持ちが楽になる事を皆も感じるようになった。
食堂兼酒場も、食材がないので休むしかない。
なので買い出しに出かける二日間は、村全体の休息日になっていった。
「んじゃ、行ってくる」
自分達の番になったヨシフミ達も町へと向かう。
なんだかんだで一ヶ月余り村でがんばっていた。
そのせいか、町に行くのが楽しみになる。
村で育ったシイナとナギは特に喜んでいる。
「何年ぶりか分からないですねー」
「ああ」
シイナは分かりやすいくらいに笑顔を浮かべている。
ナギはいつもどおりの表情だが、何となく楽しみにしてるような雰囲気がある。
アヤとサキもそれは同じなのだが、こちらはもうちょっと目的意識がはっきりしている。
「武器の手入れが出来ればいいんだけど」
「道具の補充もしたいですね。
そんな時間があればいいんですが。
そもそも、在庫があるかがあやしいところです」
こちらはもう少し切実というか、生活や業務に密着した事を考えていた。
買い出しという目的を考えればそちらの方が正しいのだろう。
しかし、年頃の娘としてはいかがなものだろうかというところでもある。
「もうちょっと気楽になってもいいんじゃないのか?」
余計な事ながらそんな事をヨシフミは言ってしまう。
「でもご主人様。
こういう時に買い足しておかないと、あとで苦労しますよ」
「村だと修繕も難しいし。
鍛冶屋もろくにいないんだぜ」
そんな生活感にあふれた言葉に、ヨシフミは言い返す言葉をなくす。
「まあ、そうなんだけどさ」
そう言いつつも、適切な言葉を見つける事ができず、苦笑するしかなかった。
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