表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その5

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/93

34話 仕事の派遣先の状況を色々と考えてしまう

「じゃあ、行ってくるからね」

「うん」

 ハルの返事を聞いてアヤが少しだけ笑みを浮かべる。

 無理をしてるのがはっきりと分かる。

 それでも二人はしばしの別れを受け入れていこうとしていた。

 その近くでヨシフミも奴隷商人と話をつけている。

 二ヶ月ほどは帰ってこれなくなるので、その前にハルの売却停止期間延長を認めさせねばならない。

 幸いにも奴隷商人は、

「金を払えばそりゃあ応じるさ」

と柔軟なところを見せた。

 条件は前回と同じ。

 三ヶ月、銀貨二十五枚。

 ギリギリであるが払えない金額ではない。

 これでハルが売り飛ばされる日が三ヶ月延びた。

 前回の分が残ってるから、大分先まで売り飛ばされる危険はなくなる。

 あとは奴隷商人がどれだけ律儀であるかにかかってくる。

 それについては、「約束を違えたら商売なんて成り立たねえ」と言ってる彼を信じるしかなかった。

 ヨシフミ達に出来るのは、その間に金を稼いで、少しでもハルを買い取る可能性を高める事だけだった。

 その為にもこの仕事を成功させねばならない。

 奴隷商の所を後にしたヨシフミ達は、町にある宿へと向かう。

 そこに村の者が案内としてやってきている。

 その者と合流して村へと向かう事になる。



 村の者とともに駅馬車に乗り込む。

 町を出発して最寄りの駅まで数日。

 そこからは村からの馬車で移動となる。

 快適な旅というわけではない。

 駅馬車の乗り心地はさほど良いわけ出はない。

 地面の凹凸がかなりはっきりと伝わってくる。

 人数も限界ギリギリまで入ってるのですし詰め状態。

 おまけに、屋根にのせた荷物が度々落ちるので、その都度止まってあげなおさねばならない。

 一応網をかけているのだが、気休めにしかなってない。

 値段をかければもう少し質の良い馬車にも乗れるが、そんな贅沢が出来るほどの余裕はない。

 宿泊も同様で、駅に併設されてる宿に泊まるが、周旋屋の宿泊所と同じ大部屋となる。

 こういった所はどこもたいてい同じような造りをしてるようで、二段や三段のベッドがぎっしりと詰め込まれている。

 食事も似たり寄ったりで、食えない事は無いという味が大量に出て来るものばかり。

 全てを最低限の出費で済ませているのだからこれも仕方が無い。

 分かってはいたが、楽しい旅にはほど遠い。



 楽しみのために、観光としての旅行が出来るのは貴族や裕福な者達に限られる。

 景勝地といった場所への、娯楽としての旅行など一般的な平民庶民が楽しめるものではない。

 全くしないわけではないが、それも一生に一度の機会があるかどうか、というものだ。

 それにしたって、旅の間はほぼ同様の状態になる。

 ただ、住み慣れた町と違った風景を楽しむのがせいぜい、といったところだ。

 それでも多くの者にとって、生まれてからずっと生活していた町や村から外に出るのは望外の幸運となる。

 行商人や荷物の運搬を仕事としてるような者達でないかぎり、一生を生まれた場所で過ごす事の方が多いのだ。

 多くの者達にとって、旅は仕事の為のものでしかない。

 今のヨシフミ達はまさにそれだった。

 それでもアヤとサキは割合に楽しんでいる。

 彼女達からすれば、滅多に行く事が出来ない町の外に出られるのだから少しは楽しみもあるのだろう。

 決して快適と言えない移動や宿泊も気にはならないようだった。

 その点、前世の記憶があるヨシフミは損をしてるかもしれない。

(こんなんで町の外に出てもなあ……)

 何一つ面白いとは思わない。

 まして仕事で向かう先である。

 どちらかというと、出張に近い感覚だった。

 もっとも、そういった事を経験する事は前世でも無かったが。

 そういう事をさせられるのはたいてい社員のような正規の立場のものの役目である。

 また、出張先があるほどの規模をもってる会社の話である。

 そういった立場にいなかった、いても小規模なブラック企業だったヨシフミに縁のないものである。

 ただ、行った先で仕事が待ってるという事では大差はないと思っていた。

 これを楽しいと思う事はかなり難しい。

 それだけではない。

 そもそも、この旅も案内人によってまかなわれている。

 最低限の出費で済ませてるあたり、村の状態が伺えようというもの。

 少しでも節約せねばならないくらい、村は困窮してるのかもしれない。

 もとより、それほど裕福ではないと聞いている。

 国の中心地から離れてる所はどこでも似たようなものであろうが。

(こいつは、本当にまずいかもしれないな)

 何が待ってるのか分からないが、先行きは暗いかもしれなかった)



 国の外縁部は、そのまま人の住まい場所との接点である事もある。

 特にこの世界は国の接点がモンスターによって分断されてる所もある。

 国内ですらそんな所がある。

 その為、モンスターの出没地域から最も遠い、人の勢力圏の中心に近い所が栄える傾向がある。

 国全体の中心となる位置がそれにあたる。

 モンスター出没の頃からこの傾向は始まっている。

 首都の遷都すら行った国もある。

 そこまでいかなくても、人が安全な所にある町に移っていくのは自然な成り行きであった。

 かつて大都市だったところが没落し、小さな村が都市にまで発展した所もある。

 首都が移転しなくても、商人の大量移動によって経済の中心地が変わったところもある。

 それほどモンスターというのは世界に影響を与えていた。

 恒常的に国境の向こう側から軍勢が、侵略者が押し寄せてくるようなものである。

 少しでも安全な所に逃げ込もうとするのは、当然の帰結である。

 今回向かってる村も、そういった所にあると聞いている。

 裕福とは言い難いのは察しがつく。

 そんな所で期待してるのはただ一つ。

(少しでも核が多く稼げればいいけど)

 最終的にはこれであった。

 もちろん、滞在中の生活費が浮くというのも大きな利点である。

 しかし、この滞在先については大して期待は出来ないのも確かだった。

 困窮してる村なら、食事もままなるまい。

 宿泊する場所すら確保出来てるかあやしい。

(どうなってんだろ、その辺り)

 不安は果てしなくふくらんでいった。

明日の17:00に続きを公開予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ