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【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その3

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27話 隠すこともないので、聞かれた事に正直にこたえていく。

「忙しそうですね」

「まあな」

 そう言いつつも笑顔を浮かべている。

「おかげさんで大変だ。

 人数が増えて喜んでばかりもいられないよ」

「でも、最近かなり頑張ってるようじゃないですか。

 あちこちで鋼鉄の紋章を見るようになりましたよ」

「まあな」

 人数が増えたせいもあるだろう。

 鋼鉄支隊の人員をあちこちで見かける事が多くなった。

 実際には、町の入り口から周旋屋までの間で見かける頻度が高まっただけである。

 町全体から見れば、それ程目立つわけでも無い。

 だが、頻繁に赴く場所で遭遇する事が多くなれば増えたと思うものだ。

 まして冒険者は彼等を頻繁に見る。

 多くなったという感想も間違いではない。

「お前のおかげだよ」

 皮肉でもなんでもなく、心底そう思ってるようだった。

「おかげで、鋼鉄の中での俺の立場も上がってるようだ」

 この町における鋼鉄支隊の統率者である建部ハルオミは嬉しそうにそう言った。

「おめでとうございます」

 これも素直な感想としてヨシフミはそう伝えた。

 ハルオミはそれにただ笑みを浮かべるしかなかった。



「お前の言う通りになったな」

 ハルオミの声は苦笑とも感嘆とも驚愕ともとれるものだった。

「この一ヶ月、かなり忙しかったけど、振り返ってみればそうなってた」

「たまたまですよ」

「偶然だとでも?」

「こんなに上手くいくとは思いませんでしたから。

 最終的にはこうなったかもしれませんけど。

 時間ももっとかかると思ってたし」

 そのあたりは鋼鉄支隊の力なのだろう。

 予想よりも早く新人を吸収し、仕事の受注などもこなすようになった。

 大手はやはり違うと思わせる。

「こっちなんか、食ってくだけでやっとですよ。

 毎週モンスター退治に出かけてようやく生活が成り立ってる感じです」

 言葉通りで、ヨシフミの方はそれほど余裕があるわけではない。

 相変わらず少人数の零細で、モンスターとギリギリのところでやりあってる。

 生活の方も同じで、カツカツとまでいかないまでも、財布と相談しながらの毎日が続いてる。

「今日と明日は休みにしましたけど、明後日はまた出発しないと」

「モンスター退治か?」

「ええ、もちろん」

「大変だな」

 上辺だけの言葉ではない。

 苦労が分かるだけにハルオミも我が身のように思うのだろう。

「仕事、そっちにも回そうか?」

 気遣ってそういう提案もする。

 が、ヨシフミは首を横に振った。

「気持ちはありがたいですけど、俺らの人数じゃ無理ですよ」

「まあ、それはそうかもしれんが」

「適材適所ですよ。

 俺らじゃ依頼を引き受ける事は出来ない。

 だから鋼鉄や他の一団に任せておく。

 代わりにこっちは、外でモンスターを倒しにいく。

 上手く手分けが出来るようになってるじゃないですか」

 実際、鋼鉄支隊は周旋屋からの依頼を引き受けてるので、モンスターの方は手がだせなくなってる。

 依頼としてモンスター退治は行ってるが、自主的な活動としては難しくなっていた。

 その分、依頼を受けられなかった者達がモンスター退治に出かけるようになっている。

 誰がどんな仕事をするのかという調整は自然に為されていった。

 これが返ってモンスター退治に勤しむ者を出してもいた。

 そちらを専門にしていく者達だ。

 今までは依頼を受けたりモンスターを倒しにいったり、とその都度やっていたが、それが固定化してきている。

 これが良い事なのかどうかは分からないが、そういう流れも生まれていた。



「でま、こっちはこんな調子でいくんだろうな」

「そうなんでしょうね」

 こればかりは何とも言えなかった。

 先々の事など全く予想が出来ない。

 鋼鉄支隊がこの先どうなっていくか、町がどうなっていくか、冒険者がどうなっていくか。

 それはさすがに分からなかった。

 ただ、生まれた変化や新たな流れは、決して悪いものではない。

 そう思いたかった。

「何とかやっていくしかないけどな」

「まったくです」

 先々どうなるにせよ、今はやる事をやっていくしかない。

 他に道が見いだせるわけでもないのだから。

「でも、お前はこれでいいのか?」

「はい?」

「今回、こんな状態を作ったのはお前だ。

 そのお前が……言っちゃなんだが、零細のままでいいのかって思ってな」

「ああ、そういう事ですか」

 その声からいたわりのようなものが感じられた。

 もっと良い立場や処遇を求めても良いのでは、といった。

 だが、その事についてはさして高望みはしてなかった。

「俺には今くらいが丁度良いと思ってます。

 そりゃ出世したいとは思いますけど。

 でも、俺の力量じゃこのあたりがせいぜいだなと」

「そっか」

 それ以上特に言葉はなかった。

 ハルオミは何か言いたそうではあったが、下手に声をあげたりしない。

 迂闊な言葉が余計な問題を発生させる事もある。

 それを危惧してる。

 その気遣いがヨシフミにはありがたかった。

「そちらが引き受けきれない小さな依頼をこっちに紹介してください。

 他の所にもですけど。

 そうしてくれたらありがたいです」

「分かった。

 お前さんに任せたい仕事があれば伝える」

 それで十分だった。



 大手に入りたいという思いはあった。

 だが、入ってやっていけるかどうかは分からない。

 やはり、他の者達との兼ね合いがある。

 今回、高槻と萩浦達が鋼鉄支隊に入った。

 赤布連隊の下っ端達も入った。

 そんな所にヨシフミまで入っていけるとは思っていなかった。

 他の者達との兼ね合いがある。

 それに、鋼鉄支隊の中での立場も微妙なものになりそうだった。

 高槻と萩浦は元々の仲間がいる。

 鋼鉄支隊に合流しても、それなりの立ち位置は保てるだろう。

 別に地位や階級という話しではない。

 居心地の良さというか、居場所というか。

 そういうのを鋼鉄支隊の中に作れそうだという事である。

 赤布旅団の者達も人数は多い。

 鋼鉄支隊の中で各所に分散する事になるだろうが、それでも顔を合わせる機会は多いはずだ。

 鋼鉄に馴染みながらも、元々の仲間との繋がりがあれば孤立する事はあるまい。

 だが、ヨシフミは違う。

 一緒にいる者と言えばアヤ一人。

 それも奴隷である。

 それを連れて鋼鉄の中に入ったらどうなるか。

 自分の居場所を見つける事も作る事も出来ない気がした。

 考え過ぎかもしれないが、そう思うからこそ鋼鉄支隊に入る事を躊躇っていた。

 馬鹿げた考えかもしれないが、無理して入ってさんざんな思いをした事もある。

 人間関係が拗れて面倒が生まれてしまった事も。

 そんなの願い下げだった。

 相手がこちらに好意を抱いてるならなおさらである。

 それを壊すような事は極力避けたかった。



 そんなわけで、ヨシフミは相変わらずだった。

 モンスター退治に出かけて、核を集めてきて、町で売るというのを繰り返していた。

 おかしな事でも何でもない、これが本来のあり方である。

 赤布旅団の一件の方が別格なのだ。

 そんな日常的な状態に戻り、ヨシフミはいつも通りの悩みといつも通りの成果をあげていた。

 ほんの少しの変化を伴って。



「それじゃ、行こうか」

 ヨシフミを引っ張っていきそうな勢いで声があがる。

 アヤがそれに「おー」と応えている。

 見ていてヨシフミはため息を吐いた。

「今更だけど、なんでお前が仕切るんだ?」

「いや、なんとなく」

 言いながらサキは笑みを浮かべていく。

「まあ、そんな事はいいからさっさと行こう。

 急いでいかないと日が暮れるよ」

「はいはい」

 返事をするが何故か憂鬱になる。

(なんでこいつはここにいるんだ?)

 他の者達と同じく鋼鉄支隊に入る事も出来たのだ。

 なのに、どういうわけかヨシフミの所に押しかけて居座っている。

 あろう事か、主導権を握りつつある。

 少なくともアヤはサキに引っ張られている気配がある。

 というより、進んでサキについていってる気がする。

(俺の奴隷のはずなんだけどな)

 最近、アヤの左手の甲にある魔術紋様が仕事をしてるのか疑問を抱くようになった。

 それでも、仕事は二人ともしっかりしてくれる。

 サキはレベルはそれ程でも無いが一応戦闘が出来る。

 その為、モンスターとの戦いではアヤよりも頼りになる戦力になっていた。

 アヤもアヤで、細々とした作業をやってくれている。

 仕事自体は格段に楽になっていた。

 にも関わらず気苦労が絶えない。

「今日も頑張っていこうね」

「うん、いっぱい倒せるといいですね」

「そこは我らの大将のがんばり次第だね」

「そうですね」

「…………」

 二人のやりとりを耳にしながら、ヨシフミはため息を吐く。

 一人分だけ若干重量が増えた荷車を引きながら。

 明日の17:00に続きを投稿予定

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