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【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その3

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25/93

25話 彼等の終わりはこのように進んでいった

「なんだ?」

 前方に出て来た複数の人間を見て身構える。

 人数は軽く十人を超える。

 確実に自分達より多いのが分かる。

 それらが街道を遮るように立ちふさがって。

「追い剥ぎか?」

「馬鹿だな」

「やっちまいましょうぜ」

 配下の者達が口々に言う。

 彼等を率いる男もそのつもりになっていた。

 腕におぼえはある。

 伊達にモンスターを相手にしてるわけではない。

 だが、すぐに考えを変えた。

「待て、武器をしまえ」

 あともう少しで襲いかかるよう命令しそうになっていた男は、寸手のところで止まった。

「あいつら…………鋼鉄だ」

 彼等が身につけてる印でそれが分かった。

 盾に、鎧に、外套に。

 自分がどこに所属してるのかを示す為に、冒険者の一団は自分達の紋章を身につける。

 鍛冶に使う金床をあしらった紋章。

 それを印とする一団は鋼鉄支隊に他ならない。

 それらが自分達の前にあらわれた事に、彼等は驚いた。

「なんでこんな所に……」

 理由は分からない。

 自分達が他の連中から煙たがられてるのは知っていたが、表だって対立してくる者はいなかった。

 それは鋼鉄とて同じである。

 にも関わらず、彼等は目の前にいる。

 しかも道を塞ぐように。

(何があった?)

 誰もが同じ事を考えた。

 道を塞がれた方からすれば疑問しか出てこない。

 特にこの一統を率いる男は、考えすぎて頭が真っ白になる。

(何か話しがあるのか?

 だが、どうしてここで)

 答えは出ないが、決してよい方向に想像は働かない。

 わざわざ外で待ち受けてたのだ。

 決して良い話しとは思えない。

 彼の勘がそう言っている。

(逃げるか?)

 それが最善だろうと思えた。

 癪に障るし、今後の活動に響くとは思う。

 しかし、今後を得るためにもまずは安全を確保せねばならない。

 恥も外聞もなく、撤退を命じようとした。

 しかし、後ろを振り返って愕然とする。

 同じように後ろも塞がれている。

 こちらは十人余りであろうか。

(はめられた……)

 思ったよりも自分達がまずい状況にいる事をようやく悟る。

 赤布旅団の頭領は、これから先の自分達の事に全くよい未来を思い描けなかった。



「先に言っておく」

 鋼鉄支隊の方から大きな声が届く。

「抜け出したい奴はこっちに来い。

 今すぐだ」

 その声に赤布旅団の中に動揺が走った。

 だが、中心となってる者達と、下っ端としてこき使われてる者では質が違った。

「行くよ!」

 元気な声と共に十人程の下っ端が走りだす。

 いずれもまだ十代半ばを超えたくらいの者達だ。

 間違って赤布旅団に入ってしまい、苦汁をなめてきた者達である。

 動きは素早く、躊躇いがなかった。

 それらを、

「おい、待て!」

と赤布旅団の頭目やその取り巻きが止めようとするが、足下に突き刺さった矢を見て動きを止める。

 何事かと周囲を見れば、前後だけでなく、左右にも冒険者が展開してるのが見えた。

 矢は、そこから飛んできたものだった。

 何人かが弓やクロスボウを構えて赤布旅団を狙っている。

 迂闊に動けない、動いたら更に酷い事になるのは明らかだった。

 立ち止まってその場に留まるしかなかった。

 その間に彼等の手下として使われていた者達は鋼鉄支隊の方に到着する。

 これで赤布旅団は五人ほどになってしまった。

 数の差は更に大きくなっている。

 形成の不利は明らかだった。

「待て、待ってくれ!」

 頭目は大声を張り上げる。

「分かった、分かったから見逃してくれ。

 頼む!」

 何が分かってるのか頭目自身も分かってない。

 相手の意向や考え、願望など全く分からない。 

 ただ、自分が酷くまずい状況にいる事を。

 このままでは悲惨な事になるのだけを理解していた。

 だからこの場から逃げる事を考えた。

 一目散に。

 脇目もふらず。

 その為だったらどんな醜態も恥ずかしくはなかった。

 罵倒や侮蔑などとるにたらぬ事である。

 彼にとって生き残る事だけが最重要課題だった。

 生きていれば次がある。

 次があれば再起の可能性もある。

 可能性があるなら、いずれ再びのし上がる事も出来る。

 その果てには、今回の失態を覆し、この場にいる者達への報復を成し遂げる事も含まれている。

 その為にも生き延びねばならない。

 命乞いをし、哀れみを誘い、反省を(した振りを)しておかねばならない。

 それでたいていの人間は信じて(騙されて)くれる。

 だが、しかし。



 鋼鉄支隊を率いるハルオミは手を上げた。

 それに応じて盾を構えた者達が前に出る。

 同時に、ハルオミの背後にいた者達が弓を構える。

 それは、何よりもはっきりと彼等の、周囲を取り巻く者達の意志をあらわしていた。

「撃て!」

 矢が飛ぶ。

 それらが赤布旅団の者達に当たった。

 全部はさすがに無理だったし、急所に当たったものもない。

 しかし、確実に傷を負わせる事は出来た。

 動きを阻害し、血液を流出させる。

 手当をしなければ、いずれ命にかかわる可能性もある。

 続けて二射、三射と矢が飛ぶ。

 その都度赤布旅団の者達の傷は増える。

 さすがに逃げだそうと思うも、その方向が見えない。

 鋼鉄支隊の方向は論外だった。

 近づけば弓に狙われるし、接近出来たとしても盾を構えた連中が待ってる。

 戦えば確実に叩きのめされる。

 かといって左右も同じく難しい。

 そちらも、撃ってはいないが弓やクロスボウを構えてる。

 近づけばそれらが放たれるだろう。

 それに、鋼鉄支隊と同じように武器を構えて少しずつ近づいてくる。

 人数も鋼鉄支隊ほどではないが結構いる。

 そちらを突破するのは難しい。

 残る方向は後ろしかない。

「逃げろ!」

 頭目の声に従って赤布旅団の者達が一斉に走りだす。

 矢に当たらないように左右に動きながら走り、後方にひろがってる者達へと向かっていく。

 走りながら剣や槍を抜き、雄叫びを上げていく。

 数の上では劣勢だが、勢いのまま突っ込んでいけば突破は出来る。

 それを狙っていた。

 人数が多いとはいえ、左右に拡がっていれば一カ所あたりの密度は薄くなる。

 そこを突破出来れば後はひたすら逃げればいい。



(まあ、そうなるよな)

 ヨシフミの予想通りになった。

 前方に強力な鋼鉄支隊。

 左右には多めの人数を配置している。

 備えが比較的薄いのはヨシフミ達の方向しかない。

 相手の動きを誘導するために、あえてそうした。

 だから、それなりに備えてはいる。

 それを高槻と萩浦の仲間が実行していく。

 五人ほど、重石を両端に縛りつけた縄を持って振り回している。

 それを、遠心力をつけて走ってくる赤布旅団に投げつける。

 回転しながらとぶ重石つきの縄は、相手の体や足に絡み着いて動きを阻害した。

 既に矢によって傷を受けてた彼等はひとたまりもない。

 二人が転び、一人がよろめいた。

 そこに、左右からゆっくりと接近していた者達が襲いかかる。

 悲鳴がすぐに上がった。

 残った二人は、それには目もくれない。

 耳に仲間の最後の声が届いてるはずだが、全く意に介そうともしない。

 目下、自分達の命すらも危ないのだから当然ではある。

 ある意味、まっとうな判断だとは言えた。

 助けられない、助に行けば自分達も巻き込まれるのは必定。

 そうなれば部隊は壊滅になる。

 少しでも生還率をあげるには、非情な判断も必要だ。

 だが、残り二人にそんな考えがあるわけもない。

 ただ自分が生き残りたいがために走ってるにすぎない。

 幸いにも、動きを封じる縄は彼等を妨げる事にはならなかった。

 体に巻き付いたが、動きを止めるほどには至らない。

 走り続ける事は出来る。

 その前に、高槻と萩浦を含めた彼らの仲間が立ちふさがる。

 全員、手に長い棒を持っている。

 槍もいくらか含まれてるが、ほとんどが何の変哲もない棒だ。

 長さが三メートル以上あるだけの。

 それが、斜め上から一斉に振り下ろされ、地面すれすれを横薙ぎに振るわれる。

 足を狙ったそれに、残り二人もさすがにバランスを崩す。

 その瞬間に棒や槍は一度引き戻される。

 それから、彼等の足の間を狙って突き出された。

 足の間に入ったそれらが、一斉に別々の方向に拡がる。

 足が浮いた。

 体が浮いた。

 地面から離れ、転んでいく。

 先ほど三人を取り囲んだ者達が、今度は残った二人を取り囲む。

「う、うひぃあああああ!」

 悲鳴と絶命の叫びがあがり、赤布旅団の終焉を告げた。

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