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【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その3

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24話 出発前の不安はぬぐえないけど、ここまで来たらやるしかない

「…………なるほどな」

 話しを聞き終えたハルオミは薄く笑った。

「まあ、確かにうまい話だな」

「はい」

「上手くいけばな」

「はい」

「そうなる保障は?」

「ありません」

「おいおい……」

「こればかりは保障できません。

 俺が確実に手に入ると言えるのは、さっき言った通りです。

 他の事については可能性でしかありません」

「…………」

「それでも、これが全部です。

 鋼鉄支隊が手に入れると思えるものは。

 あとはそちらがどうするかです」

「嫌だと言ったら?」

「諦めます」

 躊躇いのない声だった。

「無理を言っても仕方ありません。

 出来るかどうか分からないですが、こっちで何とかします」

「ふーん」

 その言葉にハルオミは頷きながらヨシフミを見つめる。

「勝算はあるのか?」

「無いですよ」

「それでもやると」

「ええ。

 上手くいけば、さっき言ったものが全部手に入りますから」

 つまりは、手に入るかもしれない可能性だけ、という事である。

 しかも全ては成功報酬。

 失敗したら何も残らないどころか、死んでるかもしれない。

 危険な賭けであった。

「それでいいのか?」

「嫌ですよ。

 でも、これくらいの博打をうてなくちゃ冒険者なんてやってられませんって」

「まあ、そうだな」

 言われてハルオミは笑うしかなかった。

 危険と隣り合わせの冒険者。

 そんなの当たり前である。

 それでも危険を減らし、生還の可能性を考えるのが当たり前である。

 なのだが、危険を考慮しすぎていたかもしれないと思えてきた。

「分かった、やってみよう」

 ハルオミは決めた。

「こっちも下の連中には話しを通しておく。

 そっちも出来るだけ人を集めておけ」

「分かりました」

 そう言ってハルオミは立ち上がり、頭を下げる。

「じゃあ、いってきます」

「なに?」

「今からなら、まだ起きてる連中に話しを出来ますから。

 それに、オッサンにも声をかけられるんで」

 聞いてるハルオミは呆れた。

「よく動くな、おまえ」

「善は急げっていいますから」

 そう言ってヨシフミは周旋屋の受付の方へと向かっていった。

 その後ろ姿を見送るハルオミは、肩をすくめた。

「ようやるよ……」

 呆れた口調である。

 その一方で、

(ああいうのがいたら楽なんだろうな)

とも思った。



 鋼鉄支隊が動いた。

 その情報は町にいた多くの冒険者を奮い立たせた。

 即座に三つの集団が賛同の声をあげた。

 これで十五人以上の人間が集まる事になる。

 鋼鉄支隊とあわせれば、町にいる冒険者の半分近くを占める事になった。

 また、すぐには決められないと言いつつも、前向きな姿勢を見せる者も増えた。

 町にいない者達もいるので、さすがに全員が参加という事にまではなっていない。

 それでも、町に逗留してる者達のほとんどが参加を決意する、少なくとも前向きになっていった。

 現金なものであるが、その流れをヨシフミは良しとした。

 理由はどうであれ、やる気になってくれたのならそれで良い。

 どのみち短期的な合同作業である。

 一時の勢いにのまれただけでも十分だった。



「上手くいったな」

「ああ」

 受付のオッサンの言葉に頷く。

「これでどうにかなるよ」

「ああ、上手くいってほしい」

 まず間違いはないと思うが、まだ終わったわけではない。

 完全に終結するまで何が起こるかわからない事を二人は熟知している。

 失敗というのは、どんなところからも発生しうる事も。

 それこそ成功に終わり、終幕がおりようという瞬間に逆転、という事だってあるのだ。

 項羽が最後の一戦での敗北で全てを失ったように。

 信長が本能寺で潰えたように。

 終わった、上手くいった、と思った時こそが危険である。

「気を抜かずにいくよ」

 オッサンの言葉にこたえるように、それでいて誰にともなく呟く。

「それで、何時やるんだ?」

「奴らが出発してから」

「そうか」

 それ以上何を聞くでもなく、オッサンは口を閉じた。

 ヨシフミも何も語る事無くその場をあとにした。



 赤布旅団の動きはヨシフミ達に筒抜けであった。

 オッサンがすすんで行動を報告してくるからすぐに分かる。

 そのため、彼等が二日後に出発する事も把握出来ていた。

 それがヨシフミから鋼鉄支隊のハルオミをはじめとした多くの者達に伝えられる。

 全員がそれを聞いて準備を始めていく。

 何人かは先に出発していき、そうでない者もいつでも出られるようにしていく。

 ヨシフミも例外ではない。

 出発にあわせて出ていけるように待機していく。

 高槻と萩浦達と同時に町を出て、赤布を追う形になる。

 上手くいくかどうか不安はまだあるが、ここまで来たら迷ってもしょうがない。

 覚悟を決めてやるしかなかった。

(まあ、どうにかなるさ)

 自分に言い聞かせる。

 それなりの腕は持ってるから大丈夫だと。

 ただ、他の者達が震え上がって直前で逃げやしないかが不安だった。

 鋼鉄支隊は大丈夫だろうが、それ以外は不安が残る。

 高槻や萩浦とて例外ではない。

 真っ先に賛同してくれたが、事が終わるまでその勢いが続くとは限らない。

 他の者ならなおさらである。

(どうなるかな……)

 こればかりは当日になるまで全く分からなかった。



 幸いにして懸念は懸念で終わってくれた。

 赤布旅団の出発のあとで、ヨシフミは高槻と萩浦に合流する。

「来てくれたか」

 その言葉に二人は「当たり前だろ」「ここまで来たんだ」と応える。

「じゃあ、行こう」

 彼等の前に立って歩き出す。

 この話しを持ち込んだ人間として、前に立つくらいの気概は示しておきたかった。

 だが、隣に立ってる者にはさすがに躊躇いをおぼえた。

「なあ、本当についてくるのか」

「うん」

 こくり、とアヤが頷く。

「今回はさすがにどうなるか分からないぞ」

「うん」

 返事は変わらない。

 今回の事を説明したとき、ヨシフミはアヤに残ってろと言った。

 しかし、アヤはついていくと主張した。

『帰ってこなかったら、また行く場所がなくなる』

 それなら、一緒にいても変わらないというのだ。

 例え死んでも、それならそれで良いとすら言って。

 さすがに気負いすぎだろうと思ったが、そう言うならばと連れてきていた。

 モンスターが相手ではない、人間同士のいざこざを見せて良いのかとは思った

 特に今回は、血を見るだけでとどまらないだろう。

 それでも連れていく事にした、最終的に。

(早いか遅いかだしな)

 好んで人とやりあう事はないが、そうなってしまう事もある。

 なら、今ここで見るのも悪い事でない、そう思う事にした。

 それに、宿舎に残すのも心配ではある。

 誰かに絡まれないかと心配してしまう。

 それくらいなら、側に置いておく方が気分が楽だった。

 例え安全ではなくても。

 この判断が正しいかどうかは分からないが、思いつく中では最善の選択だったと思いたかった。

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