表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/93

19話 好んで小さな所に来るような者には何らかの訳があることも

「それで、俺らと一緒にやっていきたいと?」

「ええ、そのつもりですよ。

 今いる所がもう最悪なんで」

 あっけらかんと理由を言ってくれる。

 だが、聞き流すわけにはいかない内容だった。

「ていうと、今は別の所に入ってるってわけだ」

 冒険者の集団は様々だが、そのどれかに入ってるのが普通である。

 ヨシフミのような例外はともかく、そこを辞めるとなるとそれなりに面倒があったりする。

 それなりの理由があれば円満に分かれる事も出来るが、そうでないと様々なしこりが残る事もある。

 これは集団の大小を問わない。

 小さな所では、一人が抜ける事で大きく戦力が落ちる。

 それをよしとする者はまずいない。

 大集団でも、その内部で部署や部隊などに分かれて活動している。

 小さな所に比べれば多少は融通がきくが、それでも少々の混乱は避けられない。

 なので、所属してる集団から抜ける場合は事前の話し合いなどが必要となる。

 可能な限り円滑に事を進める場合ならば特に。

 しかし世の中には、突発的な理由で集団が解散する場合もある。

 それこそ学生バンドのように、結成してほどなく解散なんて事もある。

 さすがにそんな事は無いだろうとは思っているが。

「で、どこに所属してるんだ」

「それが、赤布旅団ってとこなんだけど」

 その名前を言うときだけ、サキの端切れが悪くなった。

 聞いたヨシフミも頭を抱えていく。

「セキフって、おい、それって」

「うん、名前は聞いた事あるんじゃないかなーって思うんだけど」

「知ってるよ、知りたくもなかったよ」

 そう言って大きなため息を吐いた。

 事情が分からないアヤは、疑問符を顔に浮かべて二人を見渡した。



 赤布旅団せきふ・りょだん

 たいそうな名前を名乗っているが、規模や質に沿ってるとはいいがたい。

 人数は十五人前後。

 入れ替わりが激しいので人数が安定してないが、およそそれくらいで推移している。

 レベルの方もそれなりので、一番高いものでレベル5かそのあたりと言われている。

 活動年数は数年を超えるはずなのだが、その割には低い方かもしれない。

 それでもこの町では大きな規模の集団ではある。

 あちこちの町に支部やら出張所のように存在してる大手とは比べるべくもないが。

 それでもその他の一団に比べれば大きいと言えよう。

 ただ、彼等の知名度は有名よりも悪行による所が大きい。

 かなり無茶なモンスター退治に繰り出し、死傷者も厭わず成果をあげるという。

 その為、常に脱落者が出ており、人員の募集が絶えない。

 この場合、脱落というが赤布旅団からの脱退・離脱というわけではない。

 言うならばこの世から脱退してしまう事を指す。

 そして新たに入れた者をレベルや装備を問わず厳しい所に連れていき、文字通り死ぬような目にあわせるという。

 赤布の幹部というか中心を担う構成員達は、それなりのレベルになってるからまだ良い。

 だが、入ったばかりの、それこそレベルもろくについてないような新人はたまったものではない。

 いきなりモンスター退治に連れていかれ、即座に実戦に放り込まれる。

 戦闘もままならない者達が、いきなり犬頭などのモンスターを相手にしていくのだ。

 ヨシフミが倒してきた犬頭のモンスターも、戦闘技術がレベル3くらいになって五分五分で戦えると言われている。

 そんなのと対峙する新人はたまったものではない。

 しかも装備も支給しないという。

 武装などは、基本的には自腹で揃えるものだ。

 だが、完全な新人ならそれなりに用意してやるものでもある。

 でないと連れていく方も無駄な負担を強いられる。

 それすらやらないという事は、死ねと言ってるようなものだ。

 そんな所だから評判は最悪なのだが、それでもそこに身を寄せる者もいる。

 行き場を無くしたような連中か、町に来たばかりで何も知らない者達がほとんどである。

 そういう者達を使い潰して赤布旅団の中心人物達は収益をかすめとっている。



「あそこにいるのかよ。

 つか、今までよく生きてたな」

「運が良かったと思う」

 とてつもなく気持ちのこもった言葉だった。

「最初に連れていかれた時は雑用だったから。

 それで戦闘はしないで済んだけど。

 次は絶対にやらされるなって思って、町に帰ってきてから武器とか防具を集めたんだ」

「なるほどな」

「戦い方とかも他の人に聞いたりしてなんとかおぼえた。

 でも、もう限界。

 さすがに今度は死ぬ」

 余程辛い状況らしいのが想像出来る。

「そこにどれだけいたんだ?」

「半年くらいかな。

 何度か犬頭を相手にさせられたりしてたよ」

「いや、死ぬだろ」

「盾を前に出して、ひたすら耐えてた。

 他の誰かが攻撃してくれるのを待ってね。

 団長とかには、仕事をしろって怒鳴られたよ」

 無茶苦茶である。

 話しに聞いてた通り酷い状況のようだった。

「そっか。

 まあ、それについては同情するけどよ」

 渋い顔をして辛い事を口にしていく。

「お前さんが大変なのは分かるけど、俺も衝突するわけにはいかねえ。

 俺の所は、こいつと俺しかいないんでね。

 睨まれたら面倒どころじゃ済まない」

 アヤの方を指しながら言う。

 赤布旅団の面倒なところは、手に入れた人間を手放さない事にもある。

 入ったが最後、生き残るか死ぬかのどちらかと言われている。

 逃げ出した者もこれまで何人もいたが、いずれも町の外で惨殺されている。

 わざと見えやすい所に放置されているので、見せしめなのは明白だった。

 そんな所と事を構えようなんて物好きはいない。

 引き抜きをかけたとなったら、ヨシフミにまでとばっちりが来る可能性がある。

 そういった目に余る者達は他の者達が黙っていないのがこの業界の通例だが、相手が強力だとそれもままならない。

 また、統治者なども治安を乱さないならば積極的に取り調べをする事も無い。

 殺人は確かに放置しておけないが、それが町の人間で無い限りはほとんど無視される。

 それなりに重宝する存在ではあるが、冒険者は基本的に町から町を渡り歩く存在である。

 故に、統治者からすれば部外者に等しい。

 冒険者同士でもめ事が起こっても、それが冒険者の中だけで留まってるなら介入してくる事は無い。

 それだけにヨシフミも下手に赤布旅団と事を構えようとは思わなかった。



「つか、なんで俺なんだよ」

「いや、募集してたからってのもあるけどさ」

「けど……?」

「オッサンがさ、『それならあいつの所に行ってみたらどうだ』って言うから」

「…………は?」

「いや、今まで結構面倒な事を解決してたって言ってたし。

 なんか色んな智慧があるから、試しに行ってみたらどうだって」

「あのジジイ…………」

 怒りの衝動がこみ上げ、殺意の波動へと進化していく。

 確かにヨシフミは冒険者になって以来、様々な問題を乗り切ってきた。

 それらが前世における経験や知識などによるものなのはヨシフミしか知らない。

 他の者からすれば、よくもそれだけ思いつく、という事もあったのだろう。

 だが、全ての状況において用いる事が出来るわけではない。

 今回のような出来事など、過去においても全く例がない。

 完全にお手上げである。

 しかし。

「頼む、この通り!」

 手を会わせて頭を下げてくるサキをみてると、断るのも躊躇われた。

 一緒にいるアヤも、ヨシフミに懇願の目を向けてくる。

(どうしろってんだよ)

 面倒に巻き込まれた事を実感した。


 明日の12:00に続きを投稿予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ