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【完結】転生したけどウダツの上がらない冒険者は、奴隷を買う事にした  作者: よぎそーと
その2

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15話 モンスター退治の初日はこういう風に進んでいく

「じゃ、行くぞ」

「うん」

 荷車に荷物をのせたヨシフミがアヤを促す。

 野外生活に必要な道具をいくつかと、保存食などを引っ張り町の外へと向かう。

 これから先、一週間は町から離れてモンスター退治となる。

 ヨシフミからすればいつものことだが、アヤは緊張を隠せない。

 街道ならばモンスターを遠ざける措置がされてるが、これから向かうのはそこから外れた場所だ。

 いつ、どこからモンスターが襲ってくるか分からない。

(大丈夫なのかな)

 クロスボウを抱えたアヤは、つきまとう不安をはらうことが出来なかった。

 それに、気がかりはもう一つある。

(ハル、心配してたな……)

 食べきれなかった分を渡しに行った時に、出発の事を伝えておいた。

 予想通り、年下の女の子は顔をゆがめて泣き出しそうになった。

 大丈夫だよ、と根拠のない事を言ってなだめたが、それで納得したわけでもない。

 涙がにじんだ声で、「絶対に帰ってきてね」と言われてしまった。

 その言葉にこたえるためにも、生きて帰ってきたかった。

 出来るかどうか全く分からなかったが。



(まあ、心配だわな)

 アヤの様子を見てヨシフミはそんな風に考えていた。

 二日ほど練習を兼ねてネズミ捕りを行い、アヤに最低限のやり方を教えた。

 不安は当然ながらあるが、何も出来ないというわけではないのも確認できた。

 レベルに反映されてなくても、知ってることはある程度こなすだけの頭と器用さはもっているように見えた。

 だからこそ、無理は承知で予定を前倒しした。

 二日であっても時間を短縮できたのはありがたかった。

 それでも、あと二日ほど町の外めぐりをしてやり方を徹底的に教えたほうが良かったかも、とも考える。

 どちらが良かったのかは分からない。

 たった二日のために貴重な練習時間を潰すのが馬鹿らしいのか。

 二日も無駄な時間を過ごせないと考えるべきか。

 ヨシフミには判断が出来なかった。

 ただ、町の外をめぐってもこれ以上教えられることもないのは確かだった。

 あとは実際に外に行って色々と試すしかない。

(どうにかなればいいけど)

 楽天的になれるほど考えなしにはなれなかった。



 不確定要素はもう一つある。

 アヤがヨシフミへの警戒を何かとしていることだった。

 理由は当然、アヤに手を出すかも、という話をしたからである。

 その前からよそよそしいというか、一線を引いてるところは見えたが、それがはっきりした形になっている。

 だが、これはやむをえないと諦めた。

 何も言わなくても何かしら警戒されていたのだ。

 それをはっきりとさせただけである。

 分からないままでいるよりは良かったのではないかと思うことにしていた。

 そんな事よりもモンスターについて考えるほうが先である。

 どれだけ不安や不満があっても、アヤが逃げ出すことは無い。

 だからこそ人間関係という最も厄介なことに気をとられずに済む。

 奴隷というものの一番の利点であろう。

 やる気が落ちて効率が下がる、手を抜くようになることはあるにしても。

 それが良いわけでないのは分かってるが、とりあえず一緒にやっていく者を確保できることがありがたい。



 モンスター退治の定番……と言ってよいかは分からない。

 だが、ある程度確立されたやり方というものはある。

 モンスター出没以来、様々な試行錯誤と幸運な偶然による発見などによってこれらが確立されていた。

 基本的には出没する地域に出向いて倒すことになる。

 そのために、たいていの場合は複数の人間で行動することになる。

 だいたいの場合、それなりに武装して、なおかつ戦闘技術を保有してる者達が一団を組むことになる。

 その者達で出てくるモンスターを倒し、核を集めていく。

 これらは日帰りで行うことは滅多にない。

 行きと帰りにそれぞれ一日ほどを費やし、それから数日ほど滞在してモンスターを倒していく。

 野外で寝泊りすることは危険であるが、こうしないとまとまった数の素材を手に入れることが出来ない。

 日帰りだと、どうしても活動時間が限られてしまう。

 特にモンスターを数多く倒すには相当な遠出が必要となる。

 人里から離れるほどモンスターも数が多く、その分核を集めやすい。

 危険も跳ね上がるので相当な規模の一団か、かなりの高レベルでもなければ実施できないが。

 それでも、可能な限り遠くに赴くことで、より大きな稼ぎが得られるというのは基本になっている。



 ヨシフミもその例に漏れず、適度に遠くまで出向いてモンスターを倒していくつもりだった。

 町の近くはモンスターが近づかないように措置がされてるし、モンスターも警戒してなかなか近づかない。

 ネズミあたりは例外のようで、田畑などを狙ってくるが、それも本当に人が踏み込まないような野外に比べれば少ない。

 一定以上の稼ぎを得るには、どうしても野外に出なくてはならなかった。

 単に『町の外』というだけではない、人が敬遠する場所としての『野外』に。

 小遣い稼ぎの領域を超えるにはそうするしかない。



 街道を進み、ある程度のところで道から外れる。

 以前から目をつけていたモンスターの出没地点へと向かっていく。

 そこからは舗装されてないので進むのも難しくなるが、かまっていられない。

 荷車を引いてるので進める道も限られるが、迂回をしてでも先へと向かっていく。

 どの道、半日は移動に費やすつもりである。

 多少の遠回りは計算のうちだった。

 それより怖いのはアヤのほうである。

 この時代の一般的な人間として、歩いての移動は基本である。

 その面においては、前世の日本における一般人よりはるかに強靭だ。

 なのだが、それは成人男性であるヨシフミを上回るものではない。

 荷物はヨシフミより少ないが、それでもどれだけ歩けるか疑問である。

 手にクロスボウを持ってることもあり、それが負担になってもいる。

 なんであれ、手に何かを持ちながらの移動はかなりつらいものになる。

 しかも舗装されてない地面の上である。

 生い茂る草が邪魔をする。

(ついてこれるかな)

 心配になってしまう。

 それでも必要以上に足を止めるわけにもいかない。

 進まないことには今後の予定すら狂ってしまう。



 遅れはやはり出てしまい、予定よりやや遅い到着となってしまう。

 街道から何キロか離れ、町に引き返すことも難しい。

 周囲に人はおらず、助けを求めることも出来ない。

 森というか木立の中に二人以外に人間はいない。

 自分達以外に頼れる者がいない事を実感していく。

 これが初めてではないヨシフミもさすがに緊張をする。

「とりあえず、寝床を作るぞ」

 そういってアヤとともに作業を始める。

 そうしてないと気がもちそうもない。

 こういうときは体を動かしてるに限る。



 まずは適当な木に縄梯子をかけていく。

 端っこにロープを結び、その先に錘になるものを結んで適当な木の枝に放り投げる。

 投げた錘が木の枝を飛び越えてたれてくる。

 それを掴んで引っ張り、梯子を上にあげる。

 ロープは木の幹に結び、固定をする。

 それから上っていって、幹からロープを外すようアヤに指示を出す。

 言われたとおりにアヤはロープを外す。

 そのロープをあらためて幹の上のほうに巻きつけ、縄梯子を固定する。

 それから一度下におりて別のロープを用意する。

 今度はそれを近くの木にかけていく。

 先ほど梯子をかけたのと同じ要領で、今度は網を張っていく。

 木の枝の間を渡すように。

 その上に持ってきた荷物をのせていく。

 可能な限りモンスターに奪われないようにするためである。

 地面においておくのは危険極まりない。

 人数が多くて見張りがたてられるなら良いのだが、そうもいかない場合はこうやって少しでも高いところに避難させる。

 また、同様の理由で寝るのも木の上となる。

 さすがに荷車は持ち上げられないのでそのままとなる。

 だが、それ以外の運べる物は可能な限り木の上の網に持ち上げていく。



 それらが終わる頃には夕方近くになっていた。

 さすがにこれからの作業は厳しくなる。

 それでも幾つかの作業を続けていく。

 今のうちにやっておかないと明日以降に響いてしまう。

 人手が増えたので作業自体は結構早く進んでいってるのだが、それでもやはり時間が足りない。

 野営地点から離れた所で適当な場所を見つけて、木の間にロープをはっていく。

 それを更に離れた所にもやっていく。

 そのロープの真ん中あたりには、更に別のロープが垂れ下がる形になっている。

 本来ならここで更に作業を一つ入れていきたいのだが、残念ながら時間切れである。

 数カ所ほどそういった箇所を作ったところで野営地に戻っていく。

 あとは火をおこせるよう、土を掘っていく。

 円形に溝を掘り、周囲への延焼を防いでいく。

 火はその中央で焚いていく。

 あとは薪になる木の枝を集めてくるだけだった。

 持ってきた保存食はそのまま食べれるものばかりであるが、火を通す事で食べやすくなる。

 味の方は期待出来ないので、少しでも食べやすくしておきたかった。

 そのあたりの作業はアヤにまかせ、ヨシフミは周囲の警戒をしていく。

 屋外なので勝手が違うが、料理などについては思った以上に手際よく進めていく。

 ヨシフミも出来ない事は無いが、それほど上手というわけではない。

 こういう部分で分担が出来るのはありがたかった。

 周囲を警戒しながら料理をしなくて済むのは助かる。



 そして辺りが暗くなってきたところで木にのぼる。

 縛り付けておいた縄ばしごをのぼり、木の上に出る。

 太い枝に腰をかけ、縄で体を幹に巻き付ける。

 野営する時は基本的にこういう対処をしておかないと、寝てる時に襲われかねない。

 もちろん、木の上にのぼってくるものや飛行できるものなどには何の意味もない。

 それでも地上をうろつくものから身を守れるのは大きかった。

「こんな事するんですか」

 初めてのアヤは驚いていた。

 無理もないだろう。

 普通はやらないのだから。

 村から町に連れてこられた時は、おそらく護衛付きの馬車で寝泊まりしていたはずだ。

 こんな事までする必要はなかっただろう。

 そんな彼女を木に結びつけて、

「俺がおりたら縄梯子を引き上げておけよ」

と注意しておく。

 器用なモンスターの中には、これを伝ってのぼってくるものもいる。

 気をつけておくにこしたことはない。

 頷いて返事をしてきたのを確かめて下におりる。

 地面におりると同時に梯子が上に巻き上げられていった。

 言いつけを守るのはありがたい。

 これも奴隷としての制約のうちなのかもしれなかったが。

 それからヨシフミは、火の始末を確かめる。

 土をかぶせてあるので大丈夫と思ったが、念のために状態を確かめた。

 それから網を結びつけてるもう一つの木に登り、同じように体を結びつける。

 ろくろく寝られやしないが、安全にはかえがたい。

 明かりを消してるのでアヤがどうしてるかは分からないが、今からどうにか出来る訳もない。

 明日の朝になるまでおあずけである。

 全てが。

(上手くいけばいいけど)

 一人でいる時とは別の不安が生まれていく。

 自分が野垂れ死にするだけではない。

 アヤを死なせてしまうかもしれない可能性が今はある。

 その事が気がかりになっていた。


 明日の17:00に続きを投稿予定

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