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隣のダンジョン  作者: 軌条
第一部 地上へ
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〇解説〇 初心者の為の霊力講座

琴歌チャンネル1、初心者の為の霊力講座



 

 はい、相沢琴歌です。こんにちは。ええと、ダンジョン鑑定士の資格を持つれっきとしたダンジョン探索のプロである私が、初心者の為に霊力をどのように活用すればいいのか、きっちりかっちり解説していきたいと思います。


 ええと、どのようなテンションで喋ればいいのか、まだまだ手探り中です。なのでちょこちょこ口調が変わるかもしれませんけど、温かく見守ってくださいね。


 さて、皆さんも霊力に関してはそこそこ知識があると思いますけど、今回は基礎の基礎から解説していきたいなって思います。ここでフリップですね。手書きなんですよ、これ。見れば分かりますけどね。



『そもそも霊力って何?』



 はい。出ました。そもそも論って回りくどい言い方で当たり前の事実を指摘することが多いので、辟易してしまう人もいると思いますけど、まあお付き合いください。


 霊力というのは私たち人間全てに備わっている、霊的なパワーですね。そのままですね。言い換えると、精霊たちが可能としている超常的な秘術を模する為のパワーです。精霊というのは古くから人類の文化と交わってきました。ここまで密接的に人類と関わっている時代も稀有らしいですが、精霊との交流自体は三〇〇〇年は続いていると言われています。


 人類は自らに備わっている不思議なパワーに古代から気付いていました。しかしその活用法については明確なアンサーがなかった。せいぜい占いとか、マジックに利用するとか、その程度だった。精霊から貰える特殊な武器や防具と霊力を重ね合わせるという発想が定着したのはここ一〇〇年くらいのことらしいです。


 そしてここ一〇〇年で、地上に発現したダンジョンの数も激増し、ここには明らかな関連が存在すると見られています。精霊がダンジョンの入口で、実績値と引き換えにアイテムを配る。ダンジョン探索によって未知の利器を得られることを知った人類は、ダンジョンを効率的に探索する為に社会組織を変容させていきました。


 たとえば、テレビってありますよね。あれも元々は精霊が発明したものです。いえ、原理だけで言えば、人類の科学者もけして理解できないものではなかったのです。既存の知識で十分開発できるものだった。実際、そういう構想も存在していた。しかしそれに一歩先んずる形で、精霊たちは実績値とテレビの交換を開始しました。政府向けに、テレビ視聴に関するインフラ整備と実績値の交換も行いました。日本政府の場合、一〇年間かけて実績値を支払うことを条件に、テレビ放送にまつわるあらゆるインフラを精霊たちに整備してもらいました。

 テレビに関して言えば、電波で信号の発着を行う電波式も構想としてあったようですが、精霊が最初に開発した霊力式が主流となっています。テレビに限らず、文明の発達には精霊たちのこうした行いが様々な分野で見られます。


 私なんかは思うんですけど、精霊は人類に霊力に熟達して欲しいという意図を持っていますよね。そしてその目的は、ダンジョン探索を強力に推進すること。精霊たちがダンジョンの奥地に何を求めているのか、説は様々ありますが、今回それに言及しておくのはやめておきましょう。


 さて、ちょっと回りくどくなりましたが、つまり私が言いたいのは、ダンジョン探索に霊力のコントロールは必須であるということです。生まれつき持っている霊力のキャパシティには個人差があり、私の場合、常人の七倍のキャパがあるとか言われました。自慢じゃないですよ? でも、キャパの大小は実はそれほど問題ではなくて、要は使い方です。では次の話題。ででん!



『霊力の活用方法』



 はい。ダンジョンにおける霊力の利用方法は大別して三つあります。学校で習いましたよね。


 一つは、精霊謹製の武具に霊力を傾注し、その性能を引き出すこと。精霊と交換できる武器には、初心者用の武器を除いて、特殊な能力が備わっています。一定量の霊力を注ぎ込むことでトリガーとなりますが、その一定量というのが曲者で、注ぎ込む量が過小であればそもそも特殊な効果が発動しないし、過大であれば、霊力を無駄に消費することになります。

 武器それぞれに設定された「閾値」を把握し、精確に霊力を配分する技術。冒険者に求められる初歩的な能力と言えます。


 霊力の利用方法二つ目。肉体の強化です。

 と言っても、馬鹿げた強化は無理です。達人の中には、拳で土壁を砕いたり、水の上を走ったりする人がいますけど、あんなことしてたら躰が幾つあっても足りません。完全に趣味の領域と言えます。皆さんはそんな無駄なことの習得に貴重な青春時代を費やさないように!

 基本的に、肉体の強化は武器や防具の特殊効果と併用します。精霊謹製のアイテムの中には、凄まじい威力を発揮する代わり人体を傷つけるものがあります。そうした反動から身を守る為に霊力を利用します。

 また、高度な武器の中には、肉体の強化を前提とした複雑な使用を要求するものがあります。使用制限で青手帳ではまず利用できませんが、緑手帳を交付して貰ったら、まずはこの辺の感覚を養う必要がありますね。


 霊力の利用方法、三つ目。ギフトです。

 ギフトと言えば、霊力を回復する回復薬や、解呪薬、強化薬などが一般的ですが、他にも様々な種類があります。

 ダンジョンから帰還するアイテムや、周辺の状況を探知するレーダー、持ち物を収容したり、見えなくするもの――まあ色々あります。

 そういったものの中には霊力を注ぎ込む必要があったり、あるいは霊力の質を変容させ、その質によって効果を変えるものもあったりします。

 まあ、奥深い領域ではあるのですが、詳しく話すと長くなるので、今回はこれくらいにしておきますが、初心者に把握してもらいたいのは、やはり一つ目の「武器の閾値」に関することですね。


 はい、次です、どどん!



『戦闘中における霊力の配分』



 ちょっと突っ込んだ内容になります。実践編ですね。今回はあなたが近接タイプの装備をして魔物と一対一で対峙しているという状況を想定して、話を進めますよ。


 ええと、こちらのフリップをご覧ください。あなたがこの標準的な装備を身に着けていると仮定します。すなわち、近接用武器の定番である霊剣、物理ダメージを軽減する小盾、精神ダメージを軽減する胸当て、第二世代の機動靴です。

 初心者の内は、装備品は三種か四種、多くとも五種程度に留めておくべきでしょう。上級者の中には同時に二十種もの装備を駆使する化け物がいますけど、真似はしないように。霊力のコントロールが格段に難しく、咄嗟に装備品の能力を引き出せないことがあります。


 さて、魔物と対峙して最初に確保しておくべきことは、防御手段です。この場合、盾と鎧にいつでも霊力を注ぎ込むことができるよう準備しておくこと。もし相手の攻撃が素早かったり、不確定要素が多い場合は、常に防御に霊力を費やしておく必要があります。


 もちろん防御だけでは勝てませんから、攻撃にも霊力を使う必要があります。よく言われるのは、攻撃に三割、防御に五割、二割は遊ばせておく。これが理想的な霊力の配分だと言われます。装備によって必要な霊力は変わりますし、チーム編成によっては多少の無理も利くようになりますが、その辺はダンジョン探索を続けていけば理解が深まっていくでしょう。


 さて、攻撃に三割、防御に五割と言っておいてなんですが、その配分で勝てる魔物は格下に限定されるでしょう。そして初心者の内は格下の魔物なんか存在しません。ですからちょっとした工夫が必要になります。

 チームを組んで実戦経験を重ねていくのが手っ取り早いでしょうが、ここでは一対一。霊力の配分を変えるだけでぐっと勝利を手繰り寄せることができます。


 全ての武具には閾値が設定されており、閾値を超える量の霊力を注ぎ込むと効果を発揮します。過剰に注ぎ込めばその分は無駄に消費されることになります。

 ただ、一部の武具の中には、過剰に注ぎ込んだ分も威力に反映することができるものもあります。燃費はすこぶる悪くなりますが、一瞬だけならそれほど効率が悪いというわけでもありません。


 霊剣と種別されるものの全ては、まさにこの余剰分も威力に換算できる武器となります。格上の魔物相手でも、ダメージを与えることができるというわけですね。


 これを実戦に生かすには、見極めが重要となります。攻撃に三割以上を割くことになると、防御がおろそかになります。攻撃する瞬間は霊剣に、相手の攻撃が襲ってくるときは機動靴を中心に機能させ、回避できそうにないと判断したなら鎧と盾の適したほうに霊力を注ぐ。これが基本戦術となります。


 見極め、と簡単に言っても、実際にやるのは容易ではありません。重要なのは対峙する魔物の特性を理解すること。地形を把握し、利用すること。引き際を弁えることです。


 さて、長々と説明してきましたが、まとめに入りますよ。今回のまとめはこちら。



『習うより慣れろ』



 はい。すみませんでした。皆さんの健康的なダンジョンライフを祈っております。相沢琴歌でした。










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