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出てきたのは、秋元さん。怒りのにじむ目でその場のみんなをゆっくりを見回した。やべ、探して来いって言われていたの、すっかり忘れていた。
「悪いが、ドア越しに聞かせてもらっていたよ。ばばあは黙ってろ、とか、叫んだ辺りから。
君たち、職務中に無断で売り場を離れて、何をしているんだ?」
最初に俺をちらっと見て、チーフと南塚さんをゆっくり交互に見ながらそういうと、俺を含めたバイト三人は委縮して俯いた。チーフと秋元さんの年は、多分、同じかチーフの方が少し上くらいだろうと思う。けれど、こういう時の秋元さんの毅然とした態度には、逆らえないモノがある。
秋元さんは、俺の背後に立つ妹と岡田に真っ直ぐ向き合って立ち、深々と頭を下げた。
「大変、申し訳ございませんでした」
「や、あの、秋元さん、待ってください」
俺はメチャクチャ驚いて、秋元さんの謝罪を遮ろうとした。バイトの職務中の事とはいえ、相手は俺の妹、秋元さんに謝られる事なんてないし、個人的な揉め事にまで頭を下げさせるのは申し訳なさ過ぎる。秋元さんは焦る俺を無視するように、顔を上げると、妹をまっすぐに見た。
「事務所で、きちんと謝罪させていただけませんか?」
「いえ、私は、もういいんです」
妹は、くすんくすんとしゃくりあげながらやっとそう言った。これ以上、わけのわからない大人に付き合わされるのは嫌だったのだろう。早くこの場を去りたい、帰りたいとカオにかいてある。
「そちらは返却予定のものですか? だったら、ここでお預かりして私が責任を持って返却処理をいたします」
秋元さんが手を出すと、妹はしっかりと抱えていたレンタル品を入れて持ち運ぶバッグをおずおずと差し出した。
「不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
私は、秋元と申します。いつでも結構です、落ち着かれましたら、ご連絡をください。改めて謝罪をさせていただきます」
差し出された名刺をおろおろと受け取って俺を見る妹の姿に、やっと頭が冷えてきて、秋元さんの意図が読めてきた。
秋元さんは、瑞穂が俺の妹だと知っていて、あえて客として扱っているのだ。チーフと南塚さんが暴言を吐いたのは、同じスタッフである俺の妹ではなく、借りていたDVDを返却にきただけの未成年の客だ、と。職場内の個人同士の揉め事にしないつもりなのだろう。
「高城君、私は彼らに話があるから先に失礼するが、こちらのお客様へのフォロー、お願いしてもいいかな」
「や、でも、フロアが。今、残っているの一人なんじゃ」
「次のシフトの担当が二人来てくれたから。高城君、今日はもうあがっていいよ。明日、そちらの方からうかがった話を報告してくれ」
俺もできれば妹のそばにいてやりたい。秋元さんの言葉にほっとして頷いた。
逆に、顔色を変えたのはチーフと南塚さん。ごにょごにょ言い訳めいた事を言おうとして、秋元さんの睨みひとつで黙らされ、促されて通用口から入っていった。




