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P41

 冬の夕暮れの空は重く澄んでいて、急速に夜になっていくところだった。

 いろいろ考え過ぎて、逆に真っ白になった頭で、ぼんやりと駅へ向かい、改札を抜け、ふと我に返ると、車窓越しに過ぎゆく景色を見ていた。

 何かが終わって、何かが始まる。いっちと修は、修の父さんから何を聞くのだろう。それをどう受け入れていくのだろう。俺は?

 小さく息を吐いて視線を動かすと、黒い影になっている街並みの向こうの稜線の上に、ぎくりとするくらい大きな、オレンジ色の満月が昇っていた。


 いっちが五組になった三学期、俺は、空いた副委員長のポストに立候補した。

 元々、ガキの頃から委員長を押し付けられる事はよくあったが、自分から名乗りをあげたのは、さすがに初めてだ。なんにしても、長が付く役職なんて、面倒ってだけで、やりたいわけじゃないし、目立つのも好きじゃないし。けど、修は、放っておくと、どんどん仕事を抱え込んで、一人で何とかしようとしてしまう。それは誰にとってもよくないと思うし、いっちの後に副を押し付けられたヤツが、「神崎のせいで」と逆恨みをしないとも限らない。だったら、俺がやるからいい。三学期は短いし。


 正月には、いっち、修、早瀬と俺の四人で初詣に行った。

 いっちは、二年生は修学旅行もあるし、勉強頑張ってまた成績を戻して、修と同じクラスになる、と、今年の抱負を述べた。

 二年に進級すると、文系、理系に特化したクラスに別れる。俺といっちは文系、修と早瀬は理系特進希望だから、二人ずつ別クラスになる事が、ほぼ確定。それを指摘すると、うっかり忘れていた自分が悪いクセに、


「なんだよそれ、ひでえ、最悪だ」


 と、ぶーぶー文句を垂れていた。新年早々、なんなんだよ。いっちは、たまにこういう、妙に残念な時がある。

 修学旅行は、俺がいるだろというと、あーあ、みーとかよ、と、ムカつく事を言う。

 いっちや修を蔭ながら助けようと思って、進んで面倒事を引き受けている健気な俺だっていうのに、報われ無さ過ぎだろ。元気になったようで、なによりだけど。

 

 三学期になると、二学期末までなんとなく不和だった戸川と修がなぜか仲良くなり、席の近かった早瀬も、戸川とよく話すようになっていた。相手の全てを赦し、受け入れてしまう、修の不思議な力。

 あっという間に時は過ぎて、新入生が入学し、俺たちは二年生になった。

 一学期末の実力テスト直前、いっちが盲腸炎で入院した。まあ、それはしょうがないとして、何がどうなったのか、退院するのと同時に北澤って女と付き合い始めた。修もいるっていうのに。

 詳しく説明するのは省くけれど、いっちvs俺、修、早瀬の三人みたいな構図になり、それが、一年生時代の元一組対元二組という対立にまで発展してしまった。修は、いっちの彼女になった北澤に対する嫌がらせストーカーの汚名を着せられ、本当にしんどい思いをしていた。

 俺たち男四人、実質修以外の三人では解決の糸口さえもつかめず、いっちと仲の良かった岡田早彩にずい分と助けられたが、そのゴタゴタが解決するまでに、二学期いっぱいかかった。

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