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高校一年の秋だった。
大型の台風が直撃するとかで、明日は休みって日の午後、予報より早く、いきなり天候が悪化した。ひどい雷が鳴って、授業中に停電して、川が氾濫寸前になっているとか、電車が止まるとか大騒ぎになって、急遽、授業を切り上げて一斉下校になった。
その頃の俺たちの状況は、というと。二学期から、一組のメンバーが二人入れ替えになった。一人は女子で、もう一人が、早瀬。人と関わるのが面倒そうな、シニカルな感じのヤツだった。いっちは早瀬の事が気に入ったらしく、夏休み中からやたらと声を掛けて関わろうとしていた。
俺は、正直、なんとなく気が合わなそうで、進んで関わる事を避けていた。多分、向こうも同じに思っていただろう。修は、早瀬を、おとなしくて引っ込み思案なヤツだと思っていたらしく、
「新しいクラスに馴染めるまで、淋しいかもしれない。
伊月は、ちゃんと気遣いができて偉いねえ。僕も伊月を見習って、早瀬君が早く一組に馴染めるように助けてあげないと」
なんて、いかにも委員長らしい責任感のある意見を述べた。
いっちは、そこまで殊勝なヤツじゃねえよ、と言ってやりたかったが、人の善意を疑う事をしない修には、そんな事を言いだすのも気が引けて、使命感に燃えるキラキラした目をまぶしく、どこかモヤモヤした気分で見ていた。
二学期になって、いっちは、修への気持ちを持て余しがちになっていた。
文化祭準備の間は、忙しかったせいか、愛だの恋だのは後回しになっていたが、文化祭後、いっちは急に荒れだした。
最初の爆発は、修に彼女がいるっていう話になった時。修は、その子をとても大事にしているらしく、俺たちと遊ぶのをパスして優先した。まあ、それはしょうがない。
ある日、真面目な修には珍しく、授業中に居眠りをした。その理由が、彼女に一晩中泣かれて付き合っていて、一睡もしていないから、というもので、帰りのホームルームが終わった直後、今週末に遊ばないかという修に対して、いっちがクラスのヤツラが残っている教室でブチ切れた。
「彼女にまた、さみしいって泣かれるかも」
「彼女って、唯の事? だったら大丈夫だよ。すごくいい子で」
「いい子? すごく邪魔な子じゃなく? 一晩中泣かれて付き合うなんてまともじゃないだろ。今日だって学校なのに」
「昨日はたまたまだよ。
確かに、唯が寂しかったり不安だったりしたら、放っておけない。
でもそうやって僕に甘えてくれたり、なにか手がかかったりしても、唯を邪魔だなんて思ったことないよ」
修はいっちを宥めようとしていたのだろうけれど、全くの逆効果だ。彼女を庇うごとに、いっちのイライラは増していった。
「そんな面倒くさいやつじゃなくてさ、修だったら、もっといい子いるでしょ。そんなのとっとと捨てて、新しいの探せば」
吐き捨てるようにいういっちに、修は珍しく怒っていっちに掴みかかった。
「いま、何ていった? 捨てろとか新しいのとか。唯の代わりなんていない。唯より、大事なやつなんて。あいつの事何も知らないくせに」
怒鳴られて、いっちは愕然として、そのまま荷物を掴んで教室を飛び出した。
クラスのヤツラの前でいっちを怒鳴ってしまった修も、心底傷ついた顔をしていたいっちも、放っておけなかった。
修に、いっちの事は任せてくれと声を掛け、俺は一人、いっちのマンションへ行った。




