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思い切り狼狽えて視線を彷徨わせる俺に、岡田は小さく噴き出した。
「そんなに驚かなくても」
「おど、ろくよ、そりゃ。えっと、ごめん、全然気づかなかった」
「そりゃ、気付かれないようにしていたし」
やばい、どうリアクションすればいいんだ。
「俺の、どこが」
「そうだなあ、最初に、お、って思ったのは、一年生の最初のクラスマッチの時かな。
高城君、佐倉君の具合があんまり良くなさそうだから、残って片付け手伝おうって言ったの、覚えている? ちゃんと気付けて、適切な判断をして、行動できる人なんだなって思った。
本当に、いいなって思ったのは、その後の学園祭の時。
神崎君も佐倉君も、私たちも、言いたい放題で、高城君がいなかったら絶対まとまらなかった。すごくうまく、調整してくれていたよね」
「あれは、俺は執り成しただけだろ? いっちの発想は凄く良かったし、修の意見もさすがって感じだったし」
「うん、でも、高城君、すごいなって思ったんだ」
一方的に褒められて、ますます居心地が悪い。困って、苦笑を浮かべた俺を見て、岡田はわずかな笑いを湛えたまま、続けた。
「さっき、好きだったって言ったけれど、訂正する。
次にもし会えたら、絶対言おうって決めていたの。
過去形じゃない。高校の時から、今でも、ずっと好き」
潤んだ目で、真っ直ぐに俺を見る。少しずつ落ち着いてきて、岡田の告白を、うれしいと思い始めていた。見上げると、桜の枝が風にゆれていた。
「もしかして、彼女とか、好きな人とか、いる?」
「いや、そういうのは。
ずっと、勘違いしていた。岡田は、いっちの事が好きなのかと。いっちが北澤ともめた時、かなり親身になっていたし」
いっちは、基本的に誰とでも仲が良かったが、特に女子では、岡田と気が合うようだった。岡田も、いっちをかなり気にかけているのに気付いていた。それが、俺を?
「神崎君、ねえ。おもしろいし、私と感覚が似ているなって部分は多いよ。
けど、正直、尊敬とか、うーん、そういうのとは違うかな。あの時、親身になっていたのは」
ふいに止まった話の続きを促そうとしたけれど、岡田は、言葉を探して、探して、結局諦めたらしかった。なんだ? いっちに親身になっていた理由? 不審に思って表情を読んで、岡田の言い淀んだ胸の内に思い付く事があった。
まさか。でも。




