表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SOLDAT-ソルダ-  作者:
5/6

黒ニ染マル。

君が欲しくて欲しくてたまらない。


誰ニモ渡サナイ。

「碧壱さん・・・ここにいらしたんですね」


少し前に突如姿を消した碧壱を探して森を探し回っていると、洞窟の目の前に大きな湖がある開けた場所に見覚えのある姿を見つける。


「いきなり居なくなったので本部に連絡しちゃったんですよ…。早く任務を…」


話しかけながら近づくがこちらに気付いていないのか振り向く気配が無い。


「・・・碧壱・・・さん?」


少し違和感を覚えて手をゆっくり伸ばす。


「!!?」


物凄く強い力で手首を捕まれ反射的に腕を引く。

しかし、びくともしない。


「あ、あの???」


切羽詰った綾梅の呼びかけにゆっくりと顔がこちらを向く。


「綾梅・・・誰にも渡したくない」

「何を・・・・・・」


碧壱が振り向くと力強く綾梅を抱きしめる。

同時に何かが2人を包み湖の中へと消えた。





事件が起きる数時間前。


「え?私が碧壱さんと任務に?」


聞き間違いかと思い碧壱の方を見る。


「そうですよ。あ・・・私とだと不安ですか?」

「え!?そ、そうじゃなくて・・・。私なんかと任務なんて・・・」


危険視されている自分と組むなんて何かの手違いではないのかと言いそうになって急いで口を閉じる。


「大丈夫ですよ。今回の任務はかなり危険みたいですので、幹部である私が付き添うことになりました」

「そ・・・そうなんですか?でも私は小隊ですから凌太と圭助と一緒に・・・」

「彼らは別の任務に行ってしまっているので穴埋めに私が…」


言葉を遮るかのように笑顔で話しかけてくる。

そんな碧壱を不思議に思いながらも任務へと出かけた。


「今回の任務って・・・?」

「人喰い悪魔」

「ひ、人喰いですか」


前回の任務が頭を過ぎる。

もちろん、自分が圭助にした事も。


(わ、私ってば・・・!)


邪念を振り払うかのように首を横に振る。


「綾梅?」

「へ?あ、ごめんなさい。なんでもないです…」


碧壱に顔を覗かれて我に返る。


「と言っても悪魔なんて誰も見ていないみたいなんですよ。人を喰らった者を捕らえた際に、悪魔に囁かれたんだと言い張るそうです」

「捕らえた…ってそんな簡単に捕まえれたんですか」

「えぇ・・・。なんでも、満足したら悪魔は乗り移っていた体を捨てるそうですよ」


ファンタジー小説とかにありそうな話に目が点になる。


「でも、実害が出ている以上私達が行かないといけないって訳ですか?」

「そうですね。くだらないと思っていても上からの命令ですからね…出ないわけにはいきません」


2人が話し込んでいるうちにヘリは目的地に着く。


「お2人ともお気をつけて!」

「ありがとうございます!」


2人は敬礼しながら見送る。


「悪魔はこの先の洞窟に住んでるそうですよ」

「ストレートに行くんですね?」

「住民達はすっかり怯えきっていて家から出てこないので時間の無駄になるだけみたいです」


2人は薄暗い森へと進んでいく。


「なんていうか…いかにもって感じはしますけど・・・」

「特に変わった事はなさそうですね?」


辺りを見渡しながら進んでいると1つ気配が消えたことに気が付く。


「・・・碧壱さん?」


碧壱が突如消えたのだ。


「うそ・・・」


自分達以外特に気配なんて感じなかった。

端末機を使って居場所を探るが自分以外いない。


「…っ」


焦る気持ちを抑えながら本部へと連絡する。

状況を伝えると任務を終えた凌太と圭助をこちらへ向かわせるという事だった。


「待ってる間にも・・・探さなきゃ」


この先は洞窟がある。

もしかしたら、そこからだったら端末機からも探れるかもしれない。


「急ごう」


綾梅は端末機を仕舞うと走る。


<あの娘はこの先の洞窟に向かったみたいだな??>

「どうするつもりですか・・・?」

<お前の欲望を叶えてやる>

「!?」


悪魔が囁くと同時に碧壱の美しい青色の瞳は赤色に染まっていく。


碧壱に憑依した悪魔はニタリと微笑むとその場から消えた。



「もう少しで・・・あれ?あれは・・・」


だいぶ走った先には洞窟と湖が見える。

湖の前に見知った姿が立っていた。


「碧壱さん・・・ここにいらしたんですね」


碧壱を見つけたが、碧壱の皮を被った悪魔だった。


(悪魔って本当にいるんだ)


ひんやりとした空気に目が覚める。


「ここ・・・」


小さく呟いた言葉は反響する。


『目が覚めたみたいだね』

「・・・碧壱、さん?」


目覚めたベッドから少し離れた所に座っている碧壱を睨む。


「碧壱さんはどこ?」

『何を言っている?俺はここにいるだろう?』

「あんたが碧壱さんのわけない」


武器を構えようと腰に手をかけるが、武器が無い事に気付く。


「あ・・・れ?」

『そんなもので邪魔されたくはないからね・・・全部はずしておいたよ』


ニコリといつもの優しい笑みを浮かべたままゆっくりと音も立てずに近寄ってくる。


「っ」


ベッドに思い切り押し倒されて目を瞑る。


「・・・何をするつもりなの」

『綾梅は俺を受け入れてはくれないのか?』

「受け入れる??」

『なら・・・』

「う・・・っ」


碧壱の瞳がギラリと光った瞬間手が首を締め付けてくる。


(く・・・くるし)


どんどん強くなってくる力に気を失いそうになる。


(ここで気を失ってしまってはダメ・・・!)


碧壱の細い手首を掴むと首から離そうと押し上げる。


「あんたの思い通りになってたまるか・・・!碧壱さんは、返してもらう!」


少し驚いた碧壱を押しのける。


(ごめんなさい!)


心の中で謝りながら回し蹴りを食らわす。

よろけたうちに部屋から出る。


部屋から出たものの建物はどういった構造で出来ているのか分かっていない。

無謀とも言える行動にため息が出る。


「でも、あの空間で戦うよりかはマシ…だよね」


薄暗い廊下を足音を消し、気配を消して進んでいく。


「…?」


微かにだが誰かが啜り泣く声が聞こえる。


(誰かいる?)


綾梅が捕まる前からいる人かも知れない。

もしかしたら悪魔の味方かも知れない。


啜り泣く声が聞こえる部屋の前で立ち止まる。


「…」


静かに伸ばす腕に緊張が走る。


「誰かいるの…?」

「!?」


部屋の中からか細い声が聞こえる。

声からして年端のいかぬ少女だろう。


気配を消していたはずなのに何故気付いたのか気になる所ではあるが自分以外にも被害者がいるのであれば一緒に助けてあげたい。

そんな気持ちが綾梅の腕を動かす。


静かにドアノブを回し音が立たぬよう扉を開く。


「あなたは…ACの方?」

「え?」


部屋の真ん中で床に座っている少女を見て綾梅は動きを止める。


毛全てが白く、涙で潤んだ瞳は赤い。

劣性遺伝子…アルビノの少女に見覚えがあった。


(確か…でもあの人は男性だったはず…)


ACのサポート部隊にアルビノの少年がいたのを思い出す。

顔がとても似ているが性別や声が全く違う。


「…綾梅ちゃん?」

「…麗白(ましろ)?」


綾梅は自分が置かれいている状況など忘れ放心する。


「えっと…その…」

「あ、あのな?これは任務で…」


綾梅が何か勘違いをしている事に気付き麗白は慌てふためく。


「…女装?」

「そう。俺って男にしては華奢だし背も低いだろう?だから、手が足りないからって駆り出されたんだ」

「悪魔って女性ばかり狙ってるの?そんな情報は…」

「極秘って奴だな。それに確証はなかったから俺で試したかったんだろう」


麗白は納得が言っていない顔でため息をつく。


「綾梅ちゃんがここにいるって事は…」

「任務で来てたんだけど捕まっちゃったの」

「捕まった?」

「うん。なんて言うか…その…碧壱さんと来てたんだけど悪魔が憑依しちゃって」


麗白が固まる。


「憑依って事は…アイツに隙が出来ていたって事だ…」


理由がなんとなく分かったのか綾梅の肩に手を置く。


「君も罪な女だなぁ」

「…は?」

「そんな事よりも…だ」


麗白は改めて真剣な顔付きになる。


「ここから脱出及び碧壱の奪還だな」

「うん。碧壱さんがいなくなった時に本部に連絡してるからそろそろ圭助と凌太が来るはずなんだ」


運良く没収されていなかった端末機を開く。


《侵入者アリ。直チニ、排除セヨ。繰リ返ス…》


「侵入者…」


綾梅が地図を開くと赤い点が二つ点滅していた。


「麗白、二人と合流しよう」

「武器は?」

「私は武器なくてもぶっちゃけ戦えるんだよね」

「は?」

「私が力を使わない為に持たされてるだけだから」


過去に暴走した力。

力を持つ者として体も心も何もかも未熟だった。

だから強くなるまでは、制御できるようになるまでは使えないように別の戦い方を教わっていた。


「アイツの配下を操れれば逃げれる、合流できる」


綾梅は慌ただしくこちらに向かう足音に気付き身を潜める。


麗白を連れて行こうと背を向けた瞬間背後に近付き首を掴む。

配下であろう者は人形のような瞳を綾梅に向けながら膝をつき、忠誠を誓うようなポーズを取る。


「道を作ってきてくれる?」


操り人形はコクリと頷くと味方を殺していく。


「こんな力だから皆私の事嫌うの」


薄暗い廊下が赤黒く染まっていくのを悲しそうな目で見つめている。


「麗白は二人と合流して」

「綾梅ちゃんは…?」

「私は…」

『ここにいたのか』


二人は勢い良く振り向くと碧壱がいた。


「碧壱!!!!!!!!」


怒声と共に圭助が視界に飛び込んでくる。


軽々と飛ぶと頭目掛けて回し蹴りをする。


『…!?』


間一髪の所で碧壱は避ける。


「け…圭助」


後から凌太も走ってくる。


「綾、怪我は?」

「な…ないけど。麗白が驚いてるから…」


幹部の一人である碧壱に躊躇いもなく攻撃をした圭助を呆然として見ている。


「ん?チビ助じゃん」

「!?ち、チビ助言うな!」


凌太の一言に我に戻る。


『誰だろうと俺の邪魔をする事は許さない』


碧壱の瞳が赤く輝くと影が四人に襲いかかる。


「綾!」

「圭助!!?」


綾梅の腕を掴むと圭助は走り出す。


「あ、ちょっと待てって」

「待って~」


少し遅れて凌太と麗白も走り出す。



「あと少しで出口…」

『行かせない』

「だ」

「!!!!!」


綾梅の腕を引いて先頭を走っていた圭助の胸を黒い何かが貫く。


「きゃ…っ」


倒れた圭助に抗えぬまま一緒に倒れる。


「け…圭助!」

「二人共!」


凌太達が追いつく。


「凌太、麗白危ない!」


綾梅の言葉は遅く、二人共薙ぎ払われそれぞれ壁に叩きつけられる。


『やっと追いついた』


ただ一人無傷の綾梅を見下ろす。


「碧壱さん…」


今までに感じた事のない恐怖が綾梅を襲う。


『何故、皆俺に喰われたか知っているか?』

「…」

『憑依した奴の願いが叶わなかったから代償に相手を喰ってやったんだ』

「…代償ならば、相手ではなくて…憑依した人間を喰らえば良かったでしょう」

『憑依した奴は男ばっかで美味くないんだよ』

「っ」

『だから相手…女を喰らう』


ニタリと笑いながら再び綾梅の首を絞める。


(ダメ…)


味方が皆やられてしまい絶望した綾梅は意識を少しずつ手放して行く。


―――死にたくないのなら私が授けた力を使いなさい


(誰?)


全く聞き覚えのない声が頭に響く。

でも、なんとなく懐かしい。


『これは…この娘は…』


綾梅の口が微かに動く。

どこかの国の言葉。聞き取れる事なく辺は光りで満たされていく。



気付けば本部の医務室のベッドの上だった。


聞いた話によると、碧壱の溜め込んでいた想いに気付いた悪魔が甘い言葉を囁き憑依し、綾梅や皆を襲ったそうだ。


「暫く、碧壱ちゃんは再起不可能かしらねぇ…?」


検査データを眺めながらカルテに書き込む。


「あの…先生」

「あら?調子はどうかしら」

「だいぶ…良いんですけど…その…」

「…あ~、碧壱ちゃんの事かしらぁ?」


医師兼救護班隊長の(かなし)は視線を綾梅に向ける。


「…はい」


コクリと静かに頷く。


「大丈夫よ。ただ…なんて言うのかしらねぇ?碧壱ちゃんはもっと男らしく一発かませば良かったのよねぇ…溜め込むなんて毒だもの」

「えっと…?」


なんの事を言っているのかイマイチ把握出来ていない綾梅にニコリと微笑む。


「まぁ、貴女は罪な女って事よ」

「…はい?」


麗白にも言われた「罪な女」とは一体なんの事なのか気付くのは当分先の事になりそうだ。






「そうか…作戦は失敗、か」


靴音と話し声が響く。


研究員らしき者達の中にスーツを着た長身の男が一人。

ACの会長の息子だ。


「なんの用ですか」

「そんな目で見ないで下さいよ…碧壱さん」


男達が立ち止まった場所は監獄の一番奥。

中には身動きが取れぬように拘束された碧壱。


「黒に堕ちるまでは作戦通りだったんですけどねぇ?」

「…私を使ってあの子に何をするつもりですか」

「おお怖い怖い。そう殺意を向けないで下さい。何もしませんよ?」


強いて言うなら…。

少し考えるよな素振りを見せ下衆い表情を浮かべる。


「あの娘にあの時よりも酷い絶望を味わわせるんですよ」

「…!?」

「いい表情しますね、貴方も。あの娘には今してる事だけじゃ絶望なんてしませんからねぇ…」

「今している事…?」

「貴方が聞いたら羨ましがるでしょねぇ?一言でいうならば…アイツはもう乙女ではないですよ」

「!!!!」

「あははははは。これを知ってしまった以上、貴方にはもっと協力してもらわないと、ですねぇ」

「何をするつもりですか!?」


部下に鍵を開けさせ、中に入り髪の毛を引っ張って顔を上に向けさせる。


「いつまで優男を演じるつもりだ?さっさと本性現してしまえ。そしてアンタの手でアイツをめちゃくちゃにしてしまえ」

「…っ」


真っ白だった心は黒に染まっていく。

いや、元々黒かったのかもしれない。あの子にあってから染まってしまっていたのかもしれない。


独占欲は「良い兄」を演じる男の心を蝕んでいった。

「兄」としてではなく「男」として見て欲しい。


「クク…。志貴綾梅…沢山の絶望をプレゼントしてやろう」


信頼している者から酷い扱いされる絶望感など忘れていた。

ずっと忘れていたかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ