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無自覚な悪役令息は無双する  作者: ひよっと丸


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第34話 決戦は今夜?僕も頑張ります!


「レイミー様?」


 いつもと様子の違うレイミーに、女官のセシリアは戸惑った。普段は起き抜けから元気いっぱいのレイミーなのだが、今日はなんだか様子がおかしい。


「僕、お腹がすいているかもしれません」


 朝だから、お腹がすいているのなら健康の証だ。だが、朝食は先程食べた。これから制服に着替えてレイミーは学園に行かなくてはならないのだ。


「先程食べられましたよね?」


 セシリアが尋ねれば、レイミーは頷いた。それはもう、沢山食べた。いつも通り国王陛下アルベルトの膝に座って焼きたてフワフワのパンにたっぷりとジャムを塗り、チーズのたっぷり入ったオムレツを2つも食べた。サラダは大好きな人参のドレッシングをたっぷりとかけた。牛乳はよく冷えていてのどごしが大変良かった。食後にアルベルトが最近飲み始めたコーヒーを一口飲ませてもらった。苦かった。


「でも、僕のお腹なんだかきゅうきゅうしてるんです」


 制服のシャツだけを着た状態で、レイミーはへその辺りをじっと見つめた。どうもこの辺りがきゅうきゅうしているのだ。あんなに食べたのに、おなかが鳴っている。しかもいつもと鳴り方が違う。


「いったいどうしたと言うのでしょう?」


 セシリアが首を傾げながらレイミーの前に膝を着いた。とりあえずレイミーのお腹の具合を確認しなくてはならない。トイレに行きたいと言わないのだから、くだしているのでは無さそうだ。食べ過ぎの様子もない。


「え?」


 セシリアは、ここまで近づいてようやくレイミーの様子がおかしい理由がわかった。これは確かにレイミーのお腹がなるわけだ。いや、実際は鳴っているのはお腹では無いが、お腹と言っても差支えは無くもない。


「僕、変な病気になっちゃいましたか?」


 レイミーのへそを見つめてセシリアが驚きの声を上げたものだから、不安にもなるというものだ。


「いえ、いいえ、違います。違いますけど、そうでは無いのです」


 途端に顔を輝かせ、後宮の女官セシリアはスっと立ち上がった。そうして手を叩いて辺りに控えている侍女たちを呼びつける。


「皆さん!ついにこの日がやって来ましたよ!すぐさま支度をしてください。寝所の整えを早急に!陛下をお迎えする準備を急いで頂戴」


 セシリアの鶴の一声とでも言えばいいのだろうか、あちらこちらに控えていたらしい侍女たちが歓喜の声を上げて動き出した。


「床一面に敷物を」

「絹の敷布はどこ?」

「羽枕をありったけよ」

「水差しとグラスを銀のトレイに乗せて」

「天井から紗を垂らさなくては」

「果物の準備を」

「砂糖菓子の用意はあって?」


 突然湧き出てきた侍女たちにレイミーはただ驚くことしか出来なかった。何が起きているのか全く見当がつかないどころか、何をすればいいのかさえ分からない。


「レイミー様はこちらのお召し物を」


 セシリアに制服のシャツを脱がされ、柔らかな絹の羽織ものを着せられた。


「え?僕学校行かないの?」

「もちろんです。レイミー様はこれから陛下をこちらのお部屋でお待ちいただかなくてはなりません」


 セシリアに手を引かれ、連れてこられたのは後宮に来てから一度も使ったことの無い寝室だ。もちろん入ったことがないから中がどうなっているのかなんて、レイミーは知らない。


「ふぁ」


 侍女たちが電光石火のごとく整えた寝所は、床一面に敷物が敷かれ、色とりどりの羽枕が並べられ、天井からは幾重もの紗が垂れ下がっていた。布団はまるで雲のようにフワフワと部屋の中央に置かれていた。


「さぁ、レイミー様。こちらで陛下をお待ちくださいませ」


 セシリアに促され、フワフワの雲のような布団の上に座るレイミーは、まだ状況が理解出来てはいなかった。


「では、わたくしは陛下の元へ参ります。しばしお待ちを」


 セシリアがレイミーの前からいなくなると、どこからともなくジルがやってきた。本来なら後宮の側室もとい寵姫、いや、国王陛下アルベルトの大切な番(まだ番っていない)のレイミーの寝所に男が侵入するなんて許されないことなのだが、ジルはレイミーが来るまでアルベルトの閨の相手をしていた元男娼だ。あれから四年ほどたったけれと、淡い金髪に青い目をして相変わらず綺麗な顔立ちの青年だ。


「ついにこの日がやってきたね。レイミー」

「この日?」

「相変わらずのカマトトぶりでお兄さん困っちゃよ」

「困っちゃうんですか?でも、困ってるのは僕です。僕のお腹変なんです。きゅうきゅうしてるんです。お腹がすいてるみたいなんです。でも、今朝も沢山ご飯を食べたんです。僕は病気ではないのですか?」

「本当可愛いなぁ、もう」


 ジルはそう言って、そっとレイミーのへその辺りに手を置いた。


「最初に言ったこと覚えてるか?」

「最初?」

「そう。レイミーがここに来た日、俺が教えたレイミーのお仕事さ」

「え、ええっと、確か、僕のおへその辺りに陛下の何かを入れるんです」

「そう、正解」

「え?じゃあ、僕、ついにお仕事するんですか?」

「そうだよ。レイミー、ついにこの日が来たんだ。喜んでいいよ。レイミーのお腹がきゅうきゅう言ってるのは、早く陛下のモノが欲しいよーって言う合図なんだから」

「合図、ですか」

「そう、合図だよ。レイミーのお腹が陛下のモノが欲しくて鳴いちゃってるんだよ。だから、陛下にいーっぱいオネダリしてお腹をいっぱいにしてもらうんだぞ」

「わかりました。僕陛下にオネダリしてお腹をいっぱいにしてもらいます」

「よし、その意気だ!頑張れレイミー」

「はい。僕のお仕事がんばります」


 レイミーはふんすっと鼻を鳴らしたのであった。


 

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