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7.疑いをかけられる俺と怒れてるあいつ

「昨日のあれってなんのこと?なんかしたっけ?」

俺は、なんのことか訳もわからず返答したが、鈴華(あいつ)がかなりイライラしている感じが周囲に漂っていて、人々が俺たちの周りを避けている。

「なんのこと?じゃない!清水さんと昨日帰ってたじゃん!しかも、ちょーくっついて!何?見せつけてるの?」

「あー、そのことか。昨日香奈美に誘われたから一緒に帰っただけ。なんか気に障ったか?」

「もーいいもん。巡なんか嫌い!」

「おい、ちょい待てって!」

俺の言葉も虚しく、鈴華(あいつ)は学校に走って行ってしまった。

事実を言っただけなんだけどな、嘘ついたらどうせ怒るだろうし。

俺も急いで学校に向かった。


とりあえず、授業の準備をする。

すると、そこに香奈美がやってきた。

その後ろには、空楓と愛巴がいた。

二人は互いに目を合わせてクスクスと笑っているが、香奈美は俺の前に立つなり緊張した面持ちで話しかけようとする。

「お、おはよ、巡くん!昨日はありがとね!今日も頑張ろ!」

「おはよう。頑張ろうな。」

「うん!また来る!」

長い髪を走らせながら去っていく姿は中々様になる。

ホームルームの時間、俺は朝鈴華(あいつ)があんなに怒っていた理由を考えた。

そして、理由がわかった。

鈴華(あいつ)は自分もまぜて欲しかったんだろう。

言えば一緒に帰ってやったのにな。


今日も一日が終わり下校時刻になった。

休み時間になるたび、香奈美が話しかけてきて結構大変だった。

そして、今、また話しかけられている。

「今日も一緒に帰ろ?傘ないんだよね、だめかな?」

「別にいいけど、鈴華も誘ってみてもいい?あいつなんか昨日一緒に帰りたかったみたいなんだけど、言えなかったらしくて今日すごく怒ってたんだよね。」

「うーん、うんいいよ!あんまり喋ったことないし!色々聞きたいことあるし。」

「じゃあ四組いくか。」


四組に着いて、鈴華(あいつ)を探すが見当たらない。

「赤城鈴華ってどこにいるか知ってる?」

「早退したよー。」

「なんか具合悪いらしいね。」

クラスの人に聞くと、鈴華(あいつ)は帰ってもう学校にはいないらしい。

困ったな、謝り損ねたし香奈美も一緒に帰りたがってたのにな。

「香奈美、いないみたいだわ。ごめんな。」

「ううん!全然大丈夫だよ!(よし!これでまた二人っきり!)」

「香奈美?おーい。大丈夫か?」

「うんうん!帰ろっか!」

香奈美がさっきよりウキウキした顔をしている。

変なやつだな。


玄関まで来て、傘を開き二人で入った。

俺は、香奈美が濡れないように右側に傘を傾けた。

急に香奈美が腕を組んで体を寄せてきた。

昨日とは違い、傘の中だからだいぶ近い。

「巡くんが濡れちゃうからこーしよ!ね?」

目を見て言われるとなんも言えない。

傍から見るとカップルのような形で帰ることになった。


翌朝、教室に入るとクラスメイトから囲まれた。

なんだこの感じ、小学校の時のような感じがするけどそうじゃないな。

「昨日清水さんと一緒に帰ったんだってな!()()()()で!」

「ずりーよ!巡!そーゆー関係なら先に言えって〜!」

「え?なに?どういうこと?」

「とぼけんなって!昨日二人が帰ってるところ見たやつがいたんだよ!」

そういわれ、周りを見ると奥の方で空楓と愛巴がクスクスしている。

そうか、あの二人が後ろつけてたのか。

なかなかすごいことをするな、と感心しているとそこに香奈美が登校してきた。

紛らわしいことになるのは容易に想像ができた。

「お、カップル成立〜!」

「なんか意外かも!」

また、囃し立てられる。

香奈美は、困り顔をしながらもなぜか少し嬉しそうな顔をしていた。

廊下からコツコツと足音が聞こえたので、クラスメイトたちは席に着いた。

急いで俺も座る。

また、一日が始まり休み時間には香奈美が来る。

このままでは、みんなの注目の的になってしまう。

俺は香奈美を連れ出して、人目が少ない場所に行った。


俺は問いただす。

「あの状況、なんか知ってるか?」

「し、しらなーい!びっくりだよね、カップルだなんて!そー見えちゃったかな?」

笑って誤魔化そうとする香奈美。

「誤解を解きに行こう。流石にあのままじゃ普通に学校生活送れないだろ。」

「いいんじゃない?あのままで。悪い気しないし〜?」

「俺が困るんだよ!」

そう言って、教室に戻り俺が全て話した。

クラスメイトたちは案外素直に納得してくれ、かなり助かった。

だが、香奈美と俺がかなり仲がいいと思われているのは変わらないままだ。


放課後、香奈美は流石に今日のことがあったからなのか、三日連続で一緒に帰ろうとは誘ってこなかった。

そろそろ帰ろうかと時間を確認した時、一通のL⚫︎NEが来ていた。

鈴華(あいつ)からだった。

トークを開くと、「そっち行ってもいい?」とあった。

俺は、「いいよ。」と返す。

そろそろ謝らないとな、と思っていたからちょうどいい機会だ。

廊下からバタバタと音がする。

来たか、と思い振り向くと鈴華(あいつ)が飛びついてきた。

多少なりとも人がいるにも関わらず、こんなことをしてくるとは。

さらに、堂々と抱きついて胸元で

「ばか。」

なにこいつ、ほんとに鈴華(あいつ)なのか?

イカれてやがる。

明日も大変なことになりそうだ。

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