2.頑張る俺と答えるあいつ
俺は鈴華が隣になって嬉しい気持ちを抑えつつ少し会話をしてみる。
「久しぶり、俺と何回か話したことあるよね?」
「多分ないと思う。」
「いや、そーだよね。ないか、ごめんごめん!」
・・・
「今日って宿題あったよね?俺やってきてなくて、、、」
「あったよ。」
「もしよかったら、宿題見せてくんない?」
「どうぞ。」
・・・
「赤城さんって好きな人とかいないの?たとえばこのクラスとか。」
「いないよ。」
なんだこいつ。
会話する気ないんか。
俺は半ばキレそうになりながら、まず友好関係を築いていこうとしていた。
こうして、会話をしようと試みて気づけば夏休み前まできていた。
時が流れるのは早いものだ。
俺は、夏休みに何をしようか授業中でもお構いなしに考え続けていた。
今日は七月二十五日、明日から夏休みだ。
夏休み前とだけあって長期休みで会えなくなる分、女子たちがいつもに増して群がってくる。
悪い気はしない。
「巡くんは、夏休み何するのー?」
「巡っち、暇な日あそぼー!暇じゃなくてもあそぼー!」
「めぐるん、うち来てー!」
「巡!BBQしよー!」
「二人で水族館でも行く、?」
「「「「絶対ダメーーーー!!」」」」
とまあ、こんな感じで引っ張りだこだ。
夏休みが休みではなくなってしまう。
ここで、俺はクラス中に聞こえる声で言った。
「皆ごめん!俺、夏休み赤城さんと過ごしたい!」
クラスは静まり返った後、ザワザワし始めた。
なぜなら、鈴華は地味でメガネをかけた絵に描いたような陰キャ女子だったからだ。
「めぐるん、それ、ほんと、?」
「うん、ほんとだ。」
「えー、なんかショックー。」
これは、鈴華を落とすためなんだ。
なんだか皆に申し訳ない気持ちが心の中を駆け巡った。
その気持ちを抑え込んで、鈴華に聞いた。
「夏休み二人で過ごさない?」
とても小五とは思えない発言だと思う。
俺は確信していた。
クラスの皆に聞こえるように言ったんだ。
さらに、俺はイケメンである。
断られるはずがない。
だが思わぬ返答をされた。
「ごめん、夏休みはおじいちゃんの家行くんだよね。」
その一言で俺は人生初の挫折を味わった。
この俺が断られるわけないとたかを括っていたから尚更だ。
俺は、食い下がった。
「どこか一日だけでも空いてない?一日でもいいから!お願い!」
みんなには聞こえないように言った。
鈴華は答える。
「八月三十一日、夏休み最終日ならいいよ。その日に帰ってくる予定だから。」
俺は心の中でガッツポーズをしたと同時に平静を装ってそのまま帰った。
翌日
今日から夏休みである。
だが、俺は気づいてしまった。
鈴華との約束のためにいつも群がってくる女子たちの約束を全て断ってしまったではないか。
通りで暇なわけだ。
俺は、この日を少しでも興味を持ってもらうために自分磨きをする時間にあてた。
毎日五キロ走り、筋トレをし、髪も切って今流行りのセンター分けとやらにして鈴華を落とすための努力を怠らなかった。
俺は、鈴華とL⚫︎NEを交換していたため、八月三十一日の待ち合わせ場所と時間を指定して送った。
「八月三十一日午後五時、学校の裏門待ち合わせで。」
この日、学校の裏門近くの神社では祭りをやっている。
多分だが、言わなくともこれに行くことになるだろうと、察してもらえるはずだ。
そして、八月三十一日を迎えた。