魔獣、『バルナバグ』
鳴り響く地響き。立ちこめる土煙。
それを引き裂き、大地を踏み砕きながら姿を現したのは、数体の巨大な怪物――『魔獣』、『バルナバグ』。
まるで亀のような頭部を持ちながらも、甲羅を持たぬ異形。異様に長い首をしならせ、口を大きく開けると、乱杭歯が夜の闇に不気味に浮かび上がった。
ズーン――ズーン――……
短いが太く力強い四肢が、大地を揺るがす。背をのばせば、竜の二、三倍はあろうかという巨体。長い尻尾が大地をなぎ払いながら唸りを上げる。
人やオーク、エルフといった小さき生き物は一様に怯えた表情を浮かべた。戦いの経験がある戦士達でさえ、この偉容には恐怖を隠せない。であれば
「……これが……『魔獣』……!」
戦いの経験もなく、『魔獣』と相対したことすらない鎧が凍り付くのも、無理からぬことだった。
足が竦み、身体の震えは止まらなくなる。『魔獣』が雄叫びを上げれば、それだけで涙が溢れてきた。
逃げ出したい――今すぐにでも、逃げ出したい。そんな思いが鎧を支配する。
しかしその思いを打ち破ったのは、他でもない。
<――怯えるな、戦士達!!>
再度の鼓舞をした、リアーネだった。
<貴方達の背負ったモノを思い出しなさい――貴方達の背にあるのは何ですか!?>
「『キシュケント』!」
<そこにいるのは、誰ですか!>
「家族(友人)達です!」
<ならば、戦うのです! 奴らに蹂躙させたくなければ、戦うしかないのです!! 砲兵隊!>
「はっ!」
<――撃て!!>
彼女の号令一下。壁上に展開していた大砲群が、一斉に火を噴いた。
風切り音――着弾。無数の爆発に、巨体を誇る『バルナバグ』も怯む。それを見逃さず、竜たちは翼を広げて一度高く飛翔。すぐさま鋭く翼をたたんで急降下し、『魔獣』たちを急襲した。
怪物の長い首が、鞭のようにしなりながら竜を狙う。
ずばっ!
空気が裂ける音がした。竜たちは寸前でかわし、怪物の背後に回り込む。素早く口を開き、喉の奥から炎や氷、雷のブレスを放つ。
轟然。
様々な属性のエネルギーが迸り、『バルナバグ』たちの体を包む。しかし、
―――――――――――――――!!
数多のブレスを浴びながらも、『バルナバグ』らは止まらなかった。雄叫びを上げながら長い尻尾をしならせ、竜たちを打ち払う。
ドン!
衝撃。一体の竜に当たり、地面に叩きつけられる。次の瞬間、『バルナバグ』は強靭な足で地を蹴り、驚異的な跳躍で落ちた竜に迫った。
その口が大きく開き、噛みつこうと――
<せえい!!>
――したところにリアーネが乱入。鋭い爪で顔を切りつけ、悶絶させた。
<今です! 地上部隊、突撃!!>
「はっ!!」
少女の声に、今まで待機していた部隊が動き出した。




