竜の少女の地球生活 ー朝ー
鎧を見送ったリアーネは、朝食の後片付けを始める。といっても、食器をさっと水洗いしたあとに食洗機に突っ込んでボタンを押すだけだ。しかしその動作はスムーズである。
(多めに洗剤を入れたりとか、何度も失敗しましたけど、大分慣れてきましたね)
そうリアーネは思う。一方で、始めの頃は酷かったなあとも思い返した。
(今でも機械を使う生活には違和感がありますが、今は大分マシになったでしょうね。こっちの生活を始めた頃なんかは、訳が分からなくて壊そうとしたこともありましたし……)
苦笑しつつ、リアーネはその時のことを思い出す。
洗濯機を前にすれば、
「わあああああ!? 勝手に洗濯物が回ってます!! 小人が中にいるんですか!?」
と騒ぎ、電子レンジを前にすれば、
「勝手に食べ物が温かくなる!? 魔道具!? 魔道具なんですか!?」
と騒ぐ。
テレビやパソコンといった見る類の家電などは、一度アニメを見ていたこともあって多少の耐性はあったが、
「好きな時に好きな、あの『グロリアス・カイザー』みたいなものが見れる!? 嘘でしょう!?」
配信サイトや動画サイトを教えられたときは、驚きを隠せずにいた。
他にも食べ物の美味しさやその種類の多さ等など、実際に生活し始めてからは驚きの連続で、目が回るような興奮を覚えたのも、少女の記憶に新しい。
(生活様式から娯楽、本当に、何もかもが『イデアール』とは違う――まざまざと、それを思い知らされた気分です。そして、だからこそ、ここには『イデアール』を救う何かがあるのではと、希望を持てる――)
洗濯物を干し終え、分担となっている家事を終えたリアーネは一つ頷く。
時間は11時近くだ。冷蔵庫から昼食として用意された弁当を取り出し、リュック――財布やスマホ、ハンカチ等が入っている――に入れた彼女は、洗面台の鏡でパパッと身だしなみを整える。そのまま玄関へ向かい、
「さて、今日も頑張りましょう――『イデアール』を、救うために!」
そう独りごちた彼女はリュックを背負い、勢いよくドアを開けて外へ飛び出すのだった。




