日曜、独
三題噺もどき―ごひゃくななじゅうなな。
久しぶりに晴れ間が覗いた。
窓の外に広がる空は、気持ちがいいほどに晴れ渡っている。
この陽気が続けばいいが、天気予報だと夜にはまた曇り始めるらしい。
明日は雨だろうか。
「……」
外が晴れていても、あまりこの部屋は暖かくならないな。
夏場なんか、陽が入れば暑いくらいだったのに、今日は全く温かくない。おかげで指先も足先も冷え切っている。暖房はあるけど、仕事をしないので使っていない。コイツ全く部屋を暖める気がないんだが。
「……」
そろそろ湯たんぽでもすべきか……とぼうっと考えながら、パソコンをいじっている。
今日は日曜日だが、両親は地域のなにかで家を出ている。帰ってきてから昼食を食べに行くのと買い物をしに行くらしい。妹は、午前中部活らしい。もう1人は友達と遊びに行くと言っていた。この寒い中元気だな。
「……」
というわけなので、日曜だが、家に1人でいる。
もう、仕事をしなくなってそれなりに経ってしまったので(気づけばもう12月だ)、曜日感覚というものがなくなりつつあるが……今日のこれでさらになくなりそうだ。別に困りはしないのでいいのだけど。天才でも何でもない私は、才能もないので、すぐに出来る事なんて何もない。
「……」
しかしなぁ、最近になってようやく気付いたが。
私は1人でいるとよくない気がするんだよなぁ。
いやまぁ、1人でいる方が好きだし楽だから良いのだけど……家にいると尚更ダメな気がする。音が聞こえない、というか声が聞こえないからかな。
「……」
外出先では1人で居ても、周りに音があるから、不思議と孤独感という物はない。
しかし家の中にいると、人が居ない限り話し声は聞こえないし、物音も聞こえない。
そうなってくると、落ち込み始めてしまうらしくて。
「……」
今もそれを紛らわしてみようかと、パソコンで動画を探しているんだけど。
どーにも、その作業にも集中ができずにいて。
頭の中では、全く別のことを考え始めている。
「……」
考えても仕方ないことばかりを考えている。
過去の後悔ばかりをしている。
「……」
こんなことをしたところで、贖罪になんてならないし、自己満でしかないのに。意味はないと分かっているのに、過去の失敗や後悔を引きずり回しては、自己嫌悪に陥ってみたり、嫌な気分になってみたり。
「……」
何も楽しくてそんなことをしているんじゃなくて。
ぼうっとしているわけでもないのに、ぶくぶくと泡立つように。ふつふつと、次から次へと。
あれやこれやと、思いだしては後悔して、こうすればよかったああすればよかった、ホントに申し訳なかったと。
「……」
あの時は、この時は。
あの日は。この日は。
「……」
どうにか切り替えようと意識を別に向けても、すぐに浮かんでくる。
どれだけ、やり直したい過去ばかりなんだと言う感じだが。
大抵そんなもんじゃないのかと思っていたい。
「……」
そう思っていたところで、お構いなしに過去の記憶は思いだされて。過去の傷はひっかきまわされて、かさぶたははがされて。その上に塩をぬったくって。
なんで、自分を傷つけるようなことをしているんだろうかという感じだが。
そんなものこっちが聞きたい。
歯止めが利かないのだから、どうしようもない。
「……」
いつの間にかマウスを握っていた手は止まって。
視界はパソコン画面ではなくて机を見ていて。
首は重たい頭を支えるのに精いっぱいになっていて。
「……」
指先と足先の感覚はなくなって。
頭がズキズキと痛み出して。
呼吸が上手くいかなくなって。
「……」
そのくせ頭の中ではぐるぐると思考が回って。
ぐつぐつと記憶が浮かんできて。
苦しいと言えればいいだろうけど。
助けてと言えばいいだろうけど。
「……」
助けてくれる人なんて。
「……」
いない。
「 」
ガチャ。
「 ―」
玄関の開く音で我に返る。
危ない、ヒートアップしすぎた。
1人でいると、余計な思考に拍車がかかっていけない。
「ふぅ……」
息を吐く。
そして、深呼吸をする。
意識的に。それだけに意識が向くように。
「―――はぁ」
誰かが帰ってきたようだ。
話し声からして両親かな。
……出かける準備をしなくては。
お題:天才・贖罪・深呼吸