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三題噺もどき3

日曜、独

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくななじゅうなな。

 


 久しぶりに晴れ間が覗いた。


 窓の外に広がる空は、気持ちがいいほどに晴れ渡っている。

 この陽気が続けばいいが、天気予報だと夜にはまた曇り始めるらしい。

 明日は雨だろうか。

「……」

 外が晴れていても、あまりこの部屋は暖かくならないな。

 夏場なんか、陽が入れば暑いくらいだったのに、今日は全く温かくない。おかげで指先も足先も冷え切っている。暖房はあるけど、仕事をしないので使っていない。コイツ全く部屋を暖める気がないんだが。

「……」

 そろそろ湯たんぽでもすべきか……とぼうっと考えながら、パソコンをいじっている。

 今日は日曜日だが、両親は地域のなにかで家を出ている。帰ってきてから昼食を食べに行くのと買い物をしに行くらしい。妹は、午前中部活らしい。もう1人は友達と遊びに行くと言っていた。この寒い中元気だな。

「……」

 というわけなので、日曜だが、家に1人でいる。

 もう、仕事をしなくなってそれなりに経ってしまったので(気づけばもう12月だ)、曜日感覚というものがなくなりつつあるが……今日のこれでさらになくなりそうだ。別に困りはしないのでいいのだけど。天才でも何でもない私は、才能もないので、すぐに出来る事なんて何もない。

「……」

 しかしなぁ、最近になってようやく気付いたが。

 私は1人でいるとよくない気がするんだよなぁ。

 いやまぁ、1人でいる方が好きだし楽だから良いのだけど……家にいると尚更ダメな気がする。音が聞こえない、というか声が聞こえないからかな。

「……」

 外出先では1人で居ても、周りに音があるから、不思議と孤独感という物はない。

 しかし家の中にいると、人が居ない限り話し声は聞こえないし、物音も聞こえない。

 そうなってくると、落ち込み始めてしまうらしくて。

「……」

 今もそれを紛らわしてみようかと、パソコンで動画を探しているんだけど。

 どーにも、その作業にも集中ができずにいて。

 頭の中では、全く別のことを考え始めている。

「……」

 考えても仕方ないことばかりを考えている。

 過去の後悔ばかりをしている。

「……」

 こんなことをしたところで、贖罪になんてならないし、自己満でしかないのに。意味はないと分かっているのに、過去の失敗や後悔を引きずり回しては、自己嫌悪に陥ってみたり、嫌な気分になってみたり。

「……」

 何も楽しくてそんなことをしているんじゃなくて。

 ぼうっとしているわけでもないのに、ぶくぶくと泡立つように。ふつふつと、次から次へと。

 あれやこれやと、思いだしては後悔して、こうすればよかったああすればよかった、ホントに申し訳なかったと。

「……」

 あの時は、この時は。

 あの日は。この日は。

「……」

 どうにか切り替えようと意識を別に向けても、すぐに浮かんでくる。

 どれだけ、やり直したい過去ばかりなんだと言う感じだが。

 大抵そんなもんじゃないのかと思っていたい。

「……」

 そう思っていたところで、お構いなしに過去の記憶は思いだされて。過去の傷はひっかきまわされて、かさぶたははがされて。その上に塩をぬったくって。

 なんで、自分を傷つけるようなことをしているんだろうかという感じだが。

 そんなものこっちが聞きたい。

 歯止めが利かないのだから、どうしようもない。

「……」

 いつの間にかマウスを握っていた手は止まって。

 視界はパソコン画面ではなくて机を見ていて。

 首は重たい頭を支えるのに精いっぱいになっていて。

「……」

 指先と足先の感覚はなくなって。

 頭がズキズキと痛み出して。

 呼吸が上手くいかなくなって。

「……」

 そのくせ頭の中ではぐるぐると思考が回って。

 ぐつぐつと記憶が浮かんできて。

 苦しいと言えればいいだろうけど。

 助けてと言えばいいだろうけど。

「……」

 助けてくれる人なんて。

「……」

 いない。

「    」
















 ガチャ。


「   ―」

 玄関の開く音で我に返る。

 危ない、ヒートアップしすぎた。

 1人でいると、余計な思考に拍車がかかっていけない。

「ふぅ……」

 息を吐く。

 そして、深呼吸をする。

 意識的に。それだけに意識が向くように。

「―――はぁ」

 誰かが帰ってきたようだ。

 話し声からして両親かな。

 ……出かける準備をしなくては。









 お題:天才・贖罪・深呼吸

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