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隣の席のギャルっぽい子が私のことしゅきらしいので付き合ってみることにした  作者: にゃー
8月前半

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第35話 何でだと思う?


 調子に乗った私は、そのあとも幾度となくウォータースライダーを楽しんだ。最初に滑ったやつ、高さはないけど長くゆるやかに下っていくやつ、マット型の浮き輪に乗って滑るやつ。もちろん全部、羽須美さんと一緒に。体をギューッとくっつけて、真っ赤な顔をすぐ近くで見ながら、何度も何度も。


 そうやって、どれくらいはしゃいでいただろうか。私はもともとあまり体力はない方だし、羽須美さんはちょっともう、いっぱいいっぱいになっちゃった。小腹も空いてきたし、ここらで小休憩ってな話になりまして。


「ふぅ」


「ほぁぁ……」


 私たちは今、なんとビーチ……に見立てたフロアを訪れています。砂浜、穏やかな白波、ビーチパラソルに少しの潮の香りまで再現された、屋内エリアの一つ。海の家……風の売店もあって、いかにもな焼きそばを二人分買ってから、私と羽須美さんは空いているパラソルの下に潜り込んだ。並んで置かれたデッキチェアに腰掛けて、手を合わせる。


「「いただきます」」


 眺める限りでは、思いっきり泳いでいる人よりも砂浜でちゃぷちゃぷきゃっきゃうふふしてるカップルだとか、私たちと同じくパラソルの下でくつろいでる人の方が多く感じた。半ば休憩所も兼ねているような場所みたい。その雰囲気もあってか、焼きそばをずるずる啜っているうちに、上がっていたテンションがゆっくりと落ち着いてくる。


「……」


 …………私、ちょっとはしゃぎ過ぎでは??

 いや遊びに来たんだからそりゃ、楽しむのは良いことだと思うけれども。あんなにむぎゅむぎゅからだ押し付ける必要あったか? なんか、急に距離感バグっちゃった人みたいになってなかった??? 落ち着いたせいで、さっきまでの自分が少しおかしかったことを強く自覚してしまう。


「凄いねこの焼きそば、めっちゃ海の家って感じする」


「……」


「黒居さん?」


「……あ、ごめん。そうだね」


 隣に座る羽須美さんの顔は、なんならまだ少し赤い。平静を取り戻したようでいて、こちらへ向けられる視線はずっと揺れ動いたまま。そうさせているのは他ならぬ私、調子に乗りまくっていた私。


「……」


「……」


「く、黒居さん。その……」


「うん」


「今日はー、ぁー……すっごく、だ、大胆だね?」


 まあ当然、そんな指摘も飛んでくるわけで。お互い一度、やきそば一口分の沈黙をあいだに挟む。咀嚼しながらそれっぽい理由を探してみたけれども、びっくりするほど何も思い浮かばなかった。


「……何でだと思う?」


「えっ」


 これはいわゆる“何でだと思う?(意味深で妖艶な微笑み)”とかではなくって、ほんとに自分でも分からなくて出てきた言葉なんだけど。私の表情からそれを読み取ったのか、羽須美さんも首を傾げながら考え出した。こんな意味不明な無茶振りにも付き合ってくれる、そういうところも好きだ。


「な、夏の魔力?」


 やがて出てきたのは、口にした本人もよく分かっていないような声音。続くように私も言ってみる。


「プールの雰囲気に当てられて?」


「課題が進んでて上機嫌」


「補習を回避できて嬉しい」


 交互に言うごとに、頓珍漢になっていく。それが面白くて、焼きそばを啜る口角も上がってしまう。また一口分だけ静かになって、かと思えばパックを置いた羽須美さんが、勢い込んで口を開いた。


「わっ、あ、あー……あ、わっ……!」


「あわあわ?」


「っ!あーしっ、のっ。水着姿が、か、か、か……可愛かったからっ!」


 座ったまましなを作り、腰と後頭部に手を当てる定番のグラビアポーズ。やってる本人がものすんごく恥ずかしそうにしているけれども、それはそれで味わい深さが生まれている。たぶん。半分冗談、半分アピールってな雰囲気で、もしかしたらそれは、さっきまでの積極的過ぎる私に当てられてのことなのかもしれない。根拠はないけれど、そんな気がした。


「なるほどー、それは一理ある」


 折角なので乗っかって、じっくりと羽須美さんを眺めてみる。あらためて見てもよく似合っているし、しっかり引き締まった体型に水で濡れた水着の質感が合わさって、ある種の艶かしさがあった。しっかりとくびれのある、その腰に手を回していたときの感触が思い出される。お腹周りもスリムだったなぁ。胸の起伏は私よりもなだらかだけど、体全体とのバランスがすごく良い。


「……」


「じー……」


「……」


「じーー……」


「…………ごめんやっぱ恥ずかしいっ……!」


 おわ、丸くなった。見られるのがっていうより、自分から見せびらかすのが……って感じかな。私よりも猫背なまま、誤魔化すように勢い良く焼きそばを食べ始める羽須美さん。顔どころか首元まで赤くなってる。1.0……いや、1.1告白時に匹敵するレベルだ。ハイスコア。奇行と言えば奇行だけど、まあでもかわゆい。


「……」


 告白もそうだし、デートのお誘いもそうだし、羽須美さん、積極性自体はけっこうあるんだよね。恥じらいながらでもテンパりながらでも、きっと本人がここぞと思ったであろうタイミングでは、ちゃんと踏み込んでくる。んで顔が真っ赤になる。でもやらないよりは、ってことだろう。そのお陰で私たちは今こうして楽しい時間を過ごせているわけなのだから……要するにまあ、そういうところも。

 

「そういうところも、好きだよ」


「っんぶぉっ!?」


 

 ……あ、そうか。分かった。


 好きだからか。


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