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隣の席のギャルっぽい子が私のことしゅきらしいので付き合ってみることにした  作者: にゃー
7月

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23/50

第21話 格好良いところ見せたら

あけましておめでとうございます。

今年もなるべく毎日更新を維持していきたいと思いますので、ぜひぜひよろしくお願いいたします〜


 到着した保健室の戸には“外出中。湿布、テープ、絆創膏、消毒液等はご自由にお使い下さい”との張り紙が。保険医の先生はいないみたいだ。もしかしたら、誰か派手に怪我したとかかもねぇ。お言葉に甘えて部屋に入り、テーブルの前の丸椅子に羽須美さんを座らせる。

 

「……あの、黒居さん。何で分かったの……?」


「うーん……最後のアレ、手首がぐきってなったように見えたから?」


 わたしの動体視力も案外捨てたもんじゃない。そう思いながらテーブルの上を見れば、やっぱり捻っちゃう人が多いのか、何巻ものテープと湿布の山が置かれている。ご丁寧に写真付きのテーピング解説プリントまで貼られていた。至れり尽くせりだ。横の利用者名簿に記名して、まずは湿布を手に取る。右手を差し出すよう目で促せば、ずっと顔を赤くしたままの羽須美さんがおずおずと手を伸ばしてきた。


「……うぅー……恥ずかしい……」


「恥ずかしいの?」


 台紙から剥がしつつ患部──手首を確認。見た感じ、左手と比べたらちょっと腫れてるかな?ってくらい。道中でも申告されたけど、本当に少し捻った程度みたいではある。痛みもそれほど強くはないらしいから、安心っちゃ安心だ。


「だって、その、せっかく頑張れって言ってくれたんだから、格好良いところ見せたかったのに……」


 あれ聞こえてたんだ。

 刺激しないようにそーっとそーっと、湿布を貼り付けていく。そうしながら、かける言葉を探して少し沈黙。巻いていくうちに指先が手首を何度か掠め、その度に熱を感じる。


「……かっこ良かったよ?」


 食らいついて食らいついて、同点に抑えて優勝。もちろん5人全員が頑張った結果だけど、私の目には、最後の瞬間に跳んだ羽須美さんが、ぶわっと浮いて広がるライトブラウンの毛先が、しっかりと焼き付いていた。手首ぐきっの瞬間も。


「ほんとっ……!?」


「でも、無理し過ぎはだーめ」


「はいぃ……」


 ぱぁってなって、しゅーんとしちゃった。怒ってるわけじゃないんだけどね。でもまあ、ちょっと心配はしちゃったよね。


「そもそもー、なんだってそんな本気で?」


 彼女に良いところ見せたいから、っていうのは分からないでもないけど……にしたってレクレーションの一環みたいな球技大会でここまで一生懸命になるとは、正直思ってもみなかった。巻き終えた湿布の香りを鼻に感じつつ、テープを手に取る。今度は羽須美さんの方が少し黙り込んでしまって、だけども私が巻き方を確認し終えた頃には、おずおずとその口が開かれた。


「……その……こ、この前のデートで、キュンと来たって言ってたから……」


「…………」


「格好良いところ見せたら、す、す、ス……スタンプっ、また押してくれるかなぁって……」


「…………」


「…………」


「…………」


「……うぅ……」


「…………」


「うぅぅぅっ……!邪でごめんなさいぃ……っ!」


 めちゃめちゃ恥ずかしそうにしてる。毛色は違うけど、頬の赤さだけで言ったらほぼほぼ1.0告白時に匹敵するくらい。私は何も言ってないんだけども。かわゆいなぁって気持ちが視線に漏れてる可能性は大いにあるかも。


「ふーん?へぇー?」


「んにぃっ……」


 真っ赤な顔を逸らして、こちらを見ようともしない羽須美さん。ニマニマしそうになるのを我慢しながら(一応は治療中なのでね?)、差し出されたままの手首にテープを巻いていく。湿布の上から、私でもできる簡単な巻き方で一周、二周。


「確かにすっごくかっこ良かったよ?すっごく、すごーく」


「っ!」


 ぼちぼち適当にやってればいいやーと思ってた私が、拳を握って本気で応援してしまうくらいには。同率優勝で、クラスの女子みんなが歓声をあげるくらいには。ただ、それはそれとして。


「でもねぇー、怪我して心配させられたってのもあるからねぇー」


「っ……」


 ころころと変わる横顔が可愛らしい。

 気持ちは嬉しいけど、気持ちが急いてもっと大きな怪我でもしちゃってたら、こんなやり取りをする余裕もなかったかもしれないわけで。なので、今回は。


「カードには、押せないかなぁ〜」


「ぅ、うん、だよね……ごめんね、心配かけて」


「ううん。私もなんか、ちょっと面倒くさいこと言っちゃってるかも」


「っ!そ、そんなことないよっ。心配してくれてすっごく嬉し──」


 バッとこちらを見た、羽須美さんの言葉が止まる。たぶん私のせいだろう。彼女の目に映った私の手に、スタンプが握られてたから。


「カードには押せないけど、こっちに押したげる」


 肌色のテーピングの上に、羽須美さんの右手首に、痛くないようにそっと当てる。


「っっ」

 

 赤い唇模様が一つ咲いて。そして私は、それを覆い隠すようにもう一周テープを巻いた。


「早く良くなるように、おまじない。的な?」


「…………万病に効きますぅ……」


 ハサミで切って、処置完了。

 右手を大事そうに抱え込んでしまった羽須美さんを横目に、私はせっせとあと片付けに勤しんだ。

 


「──ところで羽須美さん」


「な、なんでしょうか?」

 

「いっぱい頑張った匂いがするね」


「……っ!?!??!??〜〜〜〜ッッッ!!!!」


 やな匂いじゃないと思うけど、羽須美さん的には、瞬間湯沸かし器になっちゃうくらいには恥ずかしかったらしい。


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